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3.5トン以上7.5トン未満の新免許区分設け、トラック用いた試験・教習導入

免許制度改正へ、18歳で車両総重量7.5トンまで可能

2014年7月10日 (木)

行政・団体警察庁は10日、貨物自動車の運転免許制度を改正する方針を固めた。新たに車両総重量3.5トン以上7.5トン未満のトラックを運転するのに必要な新免許区分を設ける一方、20歳にならなければ取得できなかった7.5トン未満のトラックを18歳で運転できるようにする。

警察庁運転免許課は同日、昨年9月に設置した「貨物自動車に係る運転免許制度の在り方に関する有識者検討会」から、普通免許で運転できるトラックの車両総重量を5トンから3.5トンへと引き下げる「規制強化」と、7.5トンまでのトラックを18歳から運転できるようにする緩和措置を柱とする報告書が提出されたと発表。これを受けて、2015年の通常国会に道路交通法の改正案が提出される見通しとなった。

トラックの運転免許制度をめぐっては、トラックを中心とする車両総重量がより重い車両の方が、一般的な乗用自動車に比べて死亡事故発生の頻度が未だ高いという厳しい状況がある一方、2年の運転経験を要件とする現行の中型免許制度が高卒者の運送業への就業機会を狭めているという声が上がっていた。

また、コンビニエンスストアの集配などで利用頻度の高い積載量2トンのトラックに保冷設備を搭載することが一般化し、車両総重量が5トンを以上えてしまうため、これらの小型トラックの運転にも中型免許が必要となるにもかかわらず、高卒者がその免許を取得できないという免許制度と物流実態のギャップが生じているとの指摘もあった。

そこで、有識者検討会が全国高等学校長協会や全日本トラック協会から現行制度の問題点を聴きつつ、交通事故被害者遺族にもヒアリングを行うなどして検討を重ね、日本と交通事情が似ているとされるEUの制度を参考に制度改正に向けた報告書をまとめ、警察庁に提出。警察庁は「制度改正も視野に入れ検討を進める」と発表し、規制強化と緩和措置の要素を併せ持つ新制度への移行が確実となった。
 
head1  新免許制度でどう変わる?

現行の免許制度では、18歳から取得可能な普通免許で車両総重量5トン未満のトラックを運転できるが、5トン以上11トン未満のトラックを運転するには2年の運転経験を要する中型免許を取得しなければならず、ドライバー不足の深刻化を懸念していた全ト協や、若年層の就業機会を狭める要因と主張する全国高等学校長協会などが制度改正を求めていた。

有識者検討会はA案からC案の3案を検討した結果、「車両の特性を十分理解した運転が期待される」として、新制度では、普通免許で運転できる範囲を車両総重量3.5トン未満に引き下げるとともに、中型免許が必要な車両を「7.5トン以上11トン未満」へと下限を引き上げ、「3.5トン以上7.5トン未満」のトラックを運転できる新免許区分を設ける案を軸に報告書をまとめた。

▲免許区分案と取得年齢(出所:警察庁「貨物自動車に係る運転免許制度の在り方に関する報告書」)

▲免許区分案と取得年齢(出所:警察庁「貨物自動車に係る運転免許制度の在り方に関する報告書」)

新免許区分では、トラックを用いた試験・教習が導入されることとなり、免許取得時にトラックの車両特性を踏まえた運転技能が検証されるため、現行制度と比べて運転技能面で安全性の向上が期待される一方、18歳以上で運転経験を問わずに取得できるようにとなる。

18歳が運転できるトラックの範囲が拡大することとなるため、警察庁は「さらなる総合的安全対策」を講じることが必要だとして、(1)初心運転者に対する安全対策の充実(2)貨物自動車運送事業法体系の中での運転者研修や教育の強化(3)事故防止や被害軽減のための貨物自動車の装備の拡充、運行管理(4)支援システムの充実——など、ハード・ソフトを連携した対策により、トラックの運転の安全性向上を図る。