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ホームロジと富士運輸、「スワップボディコンテナ」導入で連携

2016年6月21日 (火)

ロジスティクス富士運輸は21日、ニトリホールディングス傘下のホームロジスティクス向けに、拠点間輸送の効率を大幅に高める取り組みとして、スワップボディコンテナを導入した。ドライバー不足を補うとともに、ドライバーの「手待ち時間」を解消しつつ、物流効率を高める取り組みとして注目されそうだ。

ホームロジと富士運輸、「スワップボディコンテナ」導入で連携

ホームロジでは、埼玉県白岡市の物流拠点「関東DC」と川崎市川崎区の「川崎DC」の拠点間輸送を行っているが、これまでは「手待ち時間」などが影響して1日に片道1運行にとどまっていたところ、富士運輸と協力してスワップボディコンテナを導入したことで、1日3-4運行(最大2往復)が可能になった。

これにより、ホームロジスティクスはこの区間の幹線輸送コストを15-30%程度削減できる見込みで、まずは関東DC・川崎DC・通販発送センター(川崎市川崎区東扇島)で7月下旬に本格運用に入り、8月下旬にDCから宅配拠点となる営業所への搬入に適用範囲を拡大。10月下旬にはDC・店舗間で運用していく計画。今後は関西・九州への展開を視野にスワップボディコンテナの導入区間を広げ、2018年に幹線輸送全体の10%、20年には20%を切り替える方針だという。

スワップボディコンテナは、商品を積載する荷台部分を脱着できる車両で、車体と荷台が分離することで、商品を積載したコンテナ輸送と空きコンテナへの積み降ろしを別拠点で同時に行うことができるようになる。今回の取り組みでは、車体ヘッド部分1台とコンテナ3個を1セットとして、2セット導入した。

実際の運用では、関東DCから川崎DCへ向かった車両が現地に到着すると、すでに関東DC行きの荷物を積み込んだコンテナが待機しており、ドライバーはコンテナを付け替えて「手待ち時間なし」で復路を出発。関東DCに到着すると、すでに川崎DC向けの2運行目の荷物を積載したコンテナが用意されており、ドライバーは再びコンテナを付け替えて川崎DCへ向かう。

■きっかけはHL・松浦社長の欧州視察
ニトリ、通販物流拠点に国内初の「ロボット倉庫」導入ホームロジスティクスの松浦学社長が欧州を視察した際に、スワップボディコンテナが運用されている光景を目の当たりにし、「自社の物流に導入できないか」と考えたのが導入のきっかけとなった。

日本では少子高齢化に伴う労働力不足への懸念が現実のものとなりつつあり、ホームロジスティクスは欧州視察の結果として、親会社のニトリホールディングスとともに、川崎・東扇島拠点へのロボット倉庫構築を決断。

倉庫拠点でロボット倉庫を運用することで作業者を減らす取り組みに着手する一方、輸配送分野ではスワップボディコンテナの導入が効率化の「切り札」になると考え、国内でこうした新たな取り組みに賛同してくれる運送会社を探したのが昨年6月のことだった。

また、富士運輸は車両台数1000台とドライバーを効率的に運用するため、早くから中継輸送を取り入れるなど、運送業務の効率化に積極的な経営方針を実践。

ホームロジスティクスから「スワップボディコンテナという車があるが、活用できないか」と声がかかった際、即座に協力したい意向を示し、話がまとまったという。

富士運輸でスワップボディコンテナの導入責任者を務めた前田修・成田支店長は、ホームロジスティクスから声がかかった当時を「こういう取り組みが必要だというのはわかっていた。いいタイミングで声をかけてもらった」と振り返る。

■効果最大化のポイントは荷主・物流会社の連携
話がまとまると、富士運輸は昨年6月のうちに日本トレクスへ車両を発注。それからおよそ10か月を経て、4月初旬に2セット(ヘッド車2台とコンテナ6台)が納車となった。

運行数の増加が最も大きな導入効果となるが、ほかにも導入したコンテナ部分は自立式で車検が不要なため、運用時の負荷が小さく、けん引免許が不要な点もメリット。

ただ、せっかくスワップボディコンテナを導入しても、従来のように最大6時間もかかっているようでは、1人のドライバーの稼働時間内(8時間)で1運行しかできず、導入メリットが得られなくなるため、発着地で生じる「手待ち時間」を解消・改善しなければならないという課題があった。

今回の取り組みで重要な役割を果たしたのが「荷主と運送会社の連携」だ。

スワップボディコンテナの導入効果を最大限に高めるため、コンテナの積み卸し作業はホームロジスティクスが自社で専従要員を育成し、富士運輸(のドライバー)は「運行・コンテナの切り離し・新たなコンテナの接続」という本来の業務に専念できる体制を確立。こうした「荷役の分離」により、手待ち時間が一気に解消した。

荷主側のホームロジスティクスも負担が増えたわけではなく、積み卸し作業員を育てるだけで、これまでの1日1運行から3-4運行へと高い輸送能力を得られるようになった。

幹線輸送の効率化・能力強化が直接の効果となるが、実際には輸送頻度が増えたことで、DCから店舗への配送効率を高めることにもつながった。

導入効果

■一般トラックの2.5倍となる導入費用が課題、国の支援体制カギ
ホームロジと富士運輸、「スワップボディコンテナ」導入で連携いいこと尽くしのように見えるが、車両の接続・切り離しに「30メートルの真っ直ぐな距離」が必要になるため、運用可能な拠点選定が課題になってくる。富士運輸によると、「勾配が2.5%を超えると運用しにくくなる」ため、接車バースの前に広いスペースを確保しなければならないという。

また、導入費用も同サイズの一般的なトラックの2.5倍程度かかる。運用効率は最大30%高まるが、導入費用を回収するための期間が長くなる点も今後の課題だ。

ホームロジスティクス、富士運輸はこれらの「障壁」を認識しながらも、今後の導入拡大に積極姿勢を示す。

日本の物流産業全体で労働力不足・ドライバーの長時間労働が問題となるなか、国土交通省は荷主と物流会社の連携が解決につながるとして、国がこうした取り組みを後押しする方針を打ち出している。

スワップボディコンテナの導入が拡大するためには、導入費用が高いという課題を乗り越えなければならない。荷主・物流会社の連携を前提に、国による支援体制の整備が普及へのカギとなろう。