ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

ETC2.0車載器の普及に遅れ、従来器向け経過措置延長求める

運送会社にコスト負担の可能性浮上、全ト協が要望行動

2016年8月23日 (火)

ロジスティクストラック運送会社に新たなコスト負担の可能性が浮上してきた。

高速道路料金の大口・多頻度割引制度の恩恵を受けられるETC2.0車載器の普及が遅れ、大半の運送会社がまだ移行しきれていないにもかかわらず、9月末頃に従来型のETC車載器搭載車に対する「最大割引率50%の経過措置」が打ち切られるという懸念が現実味を帯びてきた。

こうした状況を懸念する全日本トラック協会は23日、国交省の石川雄一道路局長を坂本克己副会長、福本秀爾理事長、日本貨物運送協同組合連合会の中川才助副会長、村田省蔵専務理事の4人が訪問し、経過措置を「当面の間」延長するよう要望したと発表した。

運送会社にコスト負担の可能性浮上、全ト協が要望行動

全ト協の要望に対し、石川局長は業界からの要望を受け止めつつ、ETC2.0車載器の足下の普及状況が「低い水準にある」との認識を示したが、具体的な方向性については明言を避けた。

ETC2.0車載器はその普及促進を図る観点から、さまざまなインセンティブ措置が施された一方、従来型のETC車載器を対象に4月以降の「一定期間」、 最大割引率50%を維持する経過措置が設けられているが、実際には車載器メーカーによる車載器の供給が当初の想定よりズレ込んだために遅れ気味となってい る。

ここで一定期間がいつまでを指すのかが問題となる。高速道路会社の予算措置状況や国土交通省がこれまでさまざまな機会に言及してきた内容から、経過措置期間は「半年程度」とみられており、4月からの半年間ということになれば9月末には措置が打ち切られる可能性がある。

4月以降、運送業界は国内個人消費の低迷から貨物輸送量が減少傾向にあり、数年来のドライバー不足も継続しているため、「ただでさえ荷物が減っているのに、稼ぎたい時に稼げない」状況にある。これに加え、現時点で大半の運送会社に当てはまる従来型ETC車載器向けの高速道路料金割引が「期間満了」ということになれば、運送会社が受けるダメージはかなり大きなものになりかねない。

なぜこういう事態に陥ったのか。

メーカーのETC2.0車載器が出揃ったのは4月頃で、不測の事態とはいえ、熊本地震の影響もあって量産体制に入ったのは6月半ば以降だといわれている。

ETC車載器を利用して高速道路料金の割引を受けてきたトラックのうち、ETC2.0に移行するのは50万台程度と想定されているものの、こうした背景から7月末時点で導入を済ませたトラックは16.3万台にとどまり、想定との大きなズレに至ったとみられる。

ETC2.0

国や高速道路会社は9月末頃までに大半が移行すると考えていたとみられ、メーカーの供給体制が整ってきた6、7月と徐々に導入・移行ペースも高まってきているが、出足の遅れから9月末頃までに移行のメドが立つという状況には程遠いのが実情だ。

ETC2.0の普及拡大は国の政策であり、利便性や安全性、物流効率の向上にもつながるものだが、現在の運送業界が置かれている状況や供給時期がズレ込んだことなどを考慮すれば、国の責任で従来型車載器に対する経過措置を延長すべきだろう。