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ロボット大賞に「ばら積みピッキング」ロボット

2016年10月12日 (水)
ロボット大賞に「ばら積みピッキング」ロボット
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イベント経済産業省など6省と日本機械工業連合会(日機連)が共催する「第7回ロボット大賞」で、人間が動作を教えることなく、ばら積みピッキングを行うことができるMUJIN社の「PickWorker」(ピックワーカー)が大賞(経産大臣賞)を受賞することが決まった。

ロボット大賞は、経産省と日機連が幹事となって総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省と共催で特に優れたロボットを表彰する制度で、4月下旬から6月末までに応募があった151件から、各省の大臣賞を大賞として選定した。10月19日に東京ビッグサイトで開催される「ジャパンロボットウィーク2016」で表彰式と受賞ロボットの展示を行う。

MUJINのピックワーカーは、人間がロボットに動作を教示(ティーチング)することなく「完全ティーチレス」で産業用ロボットによるばら積みピッキングを実現するコントローラーで、ユーザーは、(1)ペンダント上でロボットの動作環境を作成(2)ワークの把持可能箇所の登録(3)搬送位置や姿勢の登録――の3ステップで、専門的な知識がなくても、3週間程度でばら積みピッキングを立ち上げることができる。

労働力不足など社会的課題解決への貢献と生産性向上に寄与している点が評価された。

経産大臣賞以外の大臣賞(大賞)は次の通り。

 イメージ受賞作品と応募者概要評価
総務大臣賞Pepper[ソフトバンクロボティクス株式会社]感情やコミュニケーションに注目した人型ロボットで、人の表情と声から感情を推定し、自然なコミュニケーションが行えるアルゴリズムを搭載。幅広い人々にPepper向けアプリの開発環境を提供中。今後はAndroid OSにも対応予定であり、更なる広がりが期待される。ロボットおよび開発ツール等が一体となったプラットフォームを提供し、ユーザー参加型で社会的ニーズを作り出していくという新たなロボットビジネスモデルを、実際に実績が上がるまでに実現した点を評価。
文部科学大臣賞モジュール分散協働型収穫支援ロボットシステム(自走式イチゴ収穫ロボット)[国立大学法人宇都宮大学(尾崎功一研究室)/アイ・イート株式会社]色を相対識別する手法により、イチゴの熟度及び茎の切断位置を正確に認識し、果実に触れずに収穫できるため、イチゴの商品価値を損なわずに販売することができる。
また、複数モジュールの組合せによるロボットシステムで、分散化した機能モジュールを後から追加する等、段階的なロボット導入が可能となる。
自走式ロボットの要素機能をモジュール分散化し、各モジュールが協働動作するロボットシステムは技術的にもユニークであり、完熟イチゴを傷めることなく収穫できるため海外輸出が可能になるなど、生産者にとってメリットが多い点を評価。
厚生労働大臣賞HAL医療用下肢タイプ[CYBERDYNE株式会社]人の動作意思を反映した生体電位信号(BES)に従って駆動し、装着者の運動機能を改善させる、新医療機器として承認された治療用ロボット。患者の脳・神経系から筋肉への指令信号を反映した微弱なBESを計測することでアシスト動作を決定。各関節に配置されたパワーユニットを駆動する。進行抑制治療において歩行機能を改善する医療機器として承認を得るなど、ロボット医療機器の実用化成功例である点が高く評価された。海外も含め他社を追随させない高い技術により、これまで有効な治療方法が無かった進行性の希少難病の患者において、歩行機能の改善効果が認められた功績は大きい。
農林水産大臣賞ロボットトラクタの研究開発[ヤンマー株式会社]圃場内の決められた経路を自動的に走行するロボットトラクタと、人が運転するトラクタが協調して農作業を行うシステム。あらかじめ圃場の形状や作業工程を登録したタブレットを用いて、ロボットトラクタのスタート・ストップなどのコントロールが可能。高度なロボット技術を有し、労働力不足等の農業特有の課題に対応する社会的ニーズを満たすと共に、省人化と安全性の両立を目指す取組を評価。また、人の監視下での自動化を経て2020年における遠隔操作によるロボットトラクタの完全自動化を目指した取組の将来性に期待。
国土交通大臣賞SPIDER(スパイダー)を用いた高精度地形解析による災害調査技術[ルーチェサーチ株式会社]人が立ち入れない災害現場や急傾斜地において、天候に左右されずに地形データを取得し、三次元点群データの作成までを迅速に行うことを可能としたGPS制御による高性能無人ヘリロボット。ハードの設計開発・組立てから、現場での調査・計測オペレーション、データ解析までを一気通貫でソリューション事業として顧客に提供し、ロボットを活用した検査・調査事業領域でのソリューションビジネスのひとつの成功例といえる点を評価。
中小企業庁長官賞(最優秀中小・ベンチャー企業賞)リトルキーパス(図左)/ロボットアシストウォーカーRT.1(図右)[株式会社幸和製作所/RT.ワークス株式会社]ロボット技術を搭載した歩行器で、既存の歩行器における上り坂での利用者の足腰への負担、下り坂で加速することによる転倒危険性があったものを、各種センサー類を活用し制御することによりあらゆる場面でのオートサポートが可能。「リトルキーパス」は歩行そのものが困難な人、「RT.1」は歩行が可能であるが買物荷物の運搬が困難な人に対応。社会的ニーズが明確であり、技術的に良く練られているほか、すでに商品化され将来の展望も明確である点を評価。また、今年7月に「リトルキーパス」が厚生労働省より「自動制御機能付き歩行器」のカテゴリーで介護保険の対象に認定されており、時期的にも授賞対象として適当。
日機連会長賞人-ロボット協調安全用スリーポジションイネーブル装置[IDEC株式会社]現在までの約20年間で累計250万台を出荷した実績を持つ、ロボット操作時の予期しない動作から回避する安全装置。この装置の国際規格は同社の取組を通じて策定され、人-ロボット協調空間における安全確保のスタンダードとして高いシェアを獲得。特許取得のみならず国際規格づくりを成功させることで高いシェアを確保し、多くの産業用ロボットメーカーのみならず工作機械への使用を実現したという意味において、要素技術としての点だけでなくビジネス・社会実装の面でも評価。ロボット革命が始動した2014年前後より、人-ロボット協調環境での重要な安全装置として、一層の応用開発を推進することで、100万台出荷を達成した。
日機連会長賞協働ロボットFANUC Robot CR-35iA[ファナック株式会社]35kg可搬と重量物を取り扱える高可搬タイプでありながら、安全柵無しで人と一緒に作業できる協働型汎用産業用ロボット。接触停止・退避動作・反転動作が可能な安全機能を搭載し、アームも柔らかいカバーで覆われるなど安全面に注力。重量物をハンドリングしながらの長い距離の移動と、高い感度での安全性を両立させた点に新規性・優位性があり、実績も挙げつつあるため新たな市場を開拓できる可能性が十分ある点を評価。
審査員特別賞介護老人福祉施設の変革(生産性革命)実現のためのロボット利活用の推進[社会福祉法人シルヴァーウィング]平成25年度よりロボット介護機器を積極的に現場に導入し、利用者のADL(日常生活動作)改善やQOL(生活の質)向上だけでなく、介護者の介護負荷軽減や介護作業効率化にも努め、介護現場でのロボット活用の経験・ノウハウを蓄積。多くのロボットを試作段階から導入してメーカーとともに改良を重ねた結果として大きな成果を上げている。日本だけでなく世界各国の同様な福祉施設からの見学希望が後を絶たないなど、介護業界を牽引する役目を果たしている点を高く評価。
審査員特別賞レスキューロボットコンテスト[レスキューロボットコンテスト実行委員会]レスキュー工学の技術を活用して製作した遠隔操縦型ロボットを用いて、災害地を模擬したフィールドから要救助者(ダミー人形)を救出する、レスキューを題材としたロボットコンテスト。阪神・淡路大震災をきっかけとして、次世代のレスキュー工学を担う人材の育成と防災・減災の大切さの社会啓発を目的とし、2001年の第1回から毎年開催。技術や教育という面のほか、災害地で活用され得る要素の提案も審査対象に含まれるなど「社会性」を重要な柱としていることに加え、「人へのやさしさをコアとしたユーザー視点を大事にする技術者の育成」という観点を重視している点を評価。
優秀賞まほろ(バイオ産業用汎用ヒト型ロボット:ラボドロイド)[ロボティック・バイオロジー・インスティテュート株式会社/国立研究開発法人産業技術総合研究所]既存の実験機器を活用しながら熟練作業者による実験手順が再現可能なバイオ産業用汎用双腕ロボット。多種多様な実験作業をロボットに置換するだけでなく、手作業のばらつきや個人差、ミスを排除し、人以上に高い正確性・再現性を実現。単にバイオメディカル分野における人代替のロボット応用というのでなく、実験室の自動化を一歩進めて、実験行為の標準化やトレーサビリティ向上を目的としたシステムを開発し、それにより社会価値を追求していく姿勢を評価。
優秀賞セコムドローン[セコム株式会社]ドローンを使った契約先敷地内の侵入監視を行う警備システム。侵入車両や侵入者を防犯用レーザーセンサが検知すると、位置情報がドローンに伝送され、自動で離陸を開始、自律飛行で対象に接近・追跡しカメラで撮影し、映像をリアルタイムでコントロールセンターに配信する。コールセンターの管制員が侵入車両/侵入者の特徴を確認するとともに、管制員から指示を受けた緊急対処員が現場に急行する。本業である警備事業の補完として飛行監視を追加するもので、装置の仕様が用途に特化されコンパクトで有用な装置になっている点や、運用者が研究開発、製造、メンテナンスまで取り組むことにより実用的なシステムが構築されている点を評価。
優秀賞土壌センサー搭載型 可変施肥田植機[井関農機株式会社/国立大学法人鳥取大学(森本英嗣研究室)]田植えと同時に圃場の作土深や肥沃度を測定しながら、その結果に応じて施肥量を自動で調整できる田植機。GPS搭載により、測定した圃場の土壌状態や施肥結果を地図上に残すことが可能であり、後年の栽培管理の改善に寄与。作物栽培のノウハウがない未熟練者でも一定の生産性を確保できる可変施肥システムは技術的にもユニークであり、肥料の節約にもつながることで低コスト化に貢献するなど社会的ニーズを見たしている点を評価。
優秀賞農業用アシストスーツ[国立大学法人和歌山大学/パワーアシストインターナショナル株式会社]農作業の現場に特化したアシストスーツで、収穫物の持ち上げや中腰姿勢の保持、斜面での移動などの負担を軽減させるほか、搭載している電動モータの出力を一定の範囲内に制限し、意図しないアシストが生じても装着者自身で対応できるよう配慮。現在まで実用化の努力を着実に続けており、開発姿勢には好感が持てるほか、ロボットとしても複雑すぎず、簡単にもなりすぎず、適度なシンプル化が行なわれており製品として成立し得るものであると期待される点を評価。

■表彰式
日時:2016年10月19日(水曜日)10時30分-11時50分
場所:東京ビッグサイト東3ホール内メインステージ