ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

JLL調べ

首都圏の先進物流施設供給量、20年まで8割増し続く

2016年10月27日 (木)
首都圏における大型先進物流施設の新規供給量
空白

調査・データJLL(ジョーンズラングラサール)が27日に公表した分析レポート「首都圏と関西の物流不動産賃貸市場」によると、首都圏の大型先進物流施設の新規供給量が2016年以降、20年まで年平均で31万坪にのぼる見通しとなっていることがわかった。

16年に32.6万坪、17年から20年までの4年間に合わせて123万坪の新規供給があり、年平均31万坪に達するとの予測で、06年から15年までの年平均17万坪に比べ、80%以上多い。

供給量の増大について、同社は「インターネット通販や3PLの旺盛な需要により、ディベロッパーや投資家が新規開発に積極的」になっていることが背景にあると分析。20年末時点の市場規模は、15年末に比べて1.8倍の350万坪を予想している。

首都圏の先進大型物流施設の賃料は、16年以降堅調に推移し、20年までの5年間の上昇率が合計4.4%と予想。年平均上昇率(CAGR)は0.9%となる。こうした分析をベースに、20年の月額賃料は直近のピークとなった07年の「坪当たり4756円」を10%近く下回るものの、「市場自体の構造が大きく変化し、経済合理性やマーケットメカニズムに基づいた形で、確立期から成長期入りとなる可能性が高い」とみている。

さらに、賃料上昇率予測(4.4%)が、前回の11.1%よりも低くなっている要因として、新規供給の拡大に加え「エリアミックスの変化」を挙げる。

17年と18年の都心40-60キロ圏の新規供給比率は合わせて40%近くに上昇し、06年から16年の20%と比べほぼ倍増レベルで「道路ネットワークの拡充により利便性は増しているものの、賃料は都心からの距離に反比例する傾向があり、賃料が低めのエリアでの供給比率増加が、全体の賃料上昇を抑制する要因となっている」。

ネット通販の売上拡大による物流不動産の新規需要について「新規供給の過半スペースはインターネット通販の拡大によって吸収される」として、関東で20年までの新規需要が年平均15万坪になると予測。これに加え、アウトバウンドEC(越境EC)も本格的に立ち上がり始めていることから、「越境EC事業者からの物流施設への需要拡大も期待できる」とした。

関西については新規供給量が17年から20年までの4年間で合わせて62.7万坪、年平均で15.7万坪と予想。04年から16年までの年平均供給量と比べると2.9倍という高い水準の供給となる。20年末時点の合計床面積は、15年末比2.3倍の134万坪と予想した。市場規模は首都圏の同床面積比で40%の水準となる。賃料上昇率は、16年以降20年までの5年間で合わせて3.5%と予想している。

関西における大型先進物流施設の新規供給量

20年の予想月額賃料は坪当たり3900円弱となり「よく言われた3500円の水準は過去のものとなる」と指摘。首都圏の賃料と比べてもその差は15%弱になるという。

JLLインダストリアル&リテールスペシャリストの二瓶博和氏は「今回改めて2020年までの市場予測を見直した。大型先進物流施設の供給が前回より上振れた首都圏と、かつてない高水準な供給となる関西ともに、賃料は堅調に推移することが確認できた。インターネット通販中心に需要は堅調で『待てば賃料は下がる』状況の再来は期待しにくくなる中、適時適切な物流拠点戦略がますます重要になるとみている。将来の供給物件の中から早めに検討することも、より有効になるだろう」との見方を示している。