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船主協会、2016年の海運重大ニュース発表

2016年12月19日 (月)

ロジスティクス日本船主協会は16日、「2016年海運界重大ニュース」を発表した。要望を訴えていた海運税制や、川崎汽船、商船三井、日本郵船――の邦船3社の定期コンテナ船事業統合、パナマ運河拡張、120年ぶりの商法改正など、業界の動きから話題のニュースまで振り返っている。詳細は次の通り。

■海事産業界が連携してPR活動を拡大「船ってサイコ~2016」を展開
同協会は、政府・日本財団が中心となって推進した「海と日本プロジェクト」の一環として昨年度に引き続き「船ってサイコ~2016」と銘打ち、船に親しんでもらうためのさまざまなイベントを展開した。今年度は、商船の一般公開に加え、関係団体の協力を得て造船所の見学会を開催するなど、海事産業界が連携を強めて、昨年度にも増してPR活動を拡大。また、学校教育において海事産業の重要性が取り上げられるよう、関係各方面に働きかけるとともに、各種見学会に小・中学校の教師や児童・生徒を招待するなど海事産業への理解増進に努めた。
■2017年度税制改正で海運5税制の拡充・延長が実現
今年度は、海運関連の5つの税制(トン数標準税制、船舶の特別償却制度、船舶の圧縮記帳制度、中小企業投資促進税制、地球温暖化対策税の還付措置)が一度に要望時期を迎えた。厳しい環境だったが、海運業界は外航、内航、旅客船が一丸となったほか、国土交通省や造船業界等とも連携しつつ国会議員への陳情活動を精力的に行った結果、12月8日に発表された与党税制改正大綱で、いずれもほぼ要望どおりの内容で認められた。
■大手3社が定期コンテナ船事業統合契約を締結
川崎汽船、商船三井、日本郵船の大手3社は、10月31日にコンテナ船事業を統合すると発表した。関係当局の許認可を前提に事業統合を目的とした合弁会社を2017年7月1日に設立し、2018年4月1日から事業を始める。新合弁会社の船隊規模は、3社合計で140万TEU(業界6位、世界シェア7%)に相当する。定期コンテナ船市況は、世界経済の成長鈍化や資源安で需要が低迷する一方、発注済みの大型船の竣工が続き、歴史的低水準にあり、16年8月末には韓国最大手の韓進海運が経営破綻した。
■海運業界に大きなインパクトを与える環境規制の導入が決定
9月8日にフィンランドが加入したことにより、バラスト水管理条約が発効要件を充足し、017年9月8日に発効することとなった。これにより、すべての外航船は原則としてバラスト水処理装置を搭載する。また、10月のIMO MEPC(海洋環境保護委員会)で、一般海域での舶用燃料油の硫黄分の規制値(現行3.5%以下)を0.5%以下に強化する時期が2020年に決定された。さらにCO2削減対策として、新たに燃料消費実績報告制度を導入するための条約改正案が採択されるなど、海運業界に大きな影響を及ぼす環境関連規制の成立が相次いだ。
■商法(運送・海商関係)が制定以来120年振りの見直し
1899年の商法制定以来ほとんど改正されていなかった運送・海商に関する規定が、2年間にわたる法制審議会商法部会での審議を経て2月12日に改正要綱が決定された。改正要綱では荷送人による危険物に関する規定、定期傭船契約に関する規定など、制定以来の社会・経済情勢の変化、関係者間の合理的利害調整の観点から見直しが図られている。10月18日には「商法および国際海上物品運送法の一部を改正する法律案」として閣議決定された。
■パナマ運河で新閘門開通、新通航料体系・料金が適用開始
パナマ運河新閘は、2007年9月の着工から 9年を経戸と6月26日に漸く開通、LNG船も含め大型船型が通航可能となった。新閘門開通に伴い、船種毎の新通航料体系・料金が全面適用された。一方、これらの動きを受け、スエズ運河では3月以降、一定条件下で大幅な通航料値引きを実施。両運河間で通航環境整備や通航料に関し、ユーザー視点に立った競争の活発化が期待される。
■ 世界各地で海賊の脅威が続く
ソマリア沖・アデン湾では、日本をはじめとする各国の海賊対処活動が大きな成果をあげるとともに、民間武装ガードの採用など商船側の自衛措置が奏功し、海賊発生件数は2013年以降、激減している。しかし、依然として海賊の脅威は払拭されていない状況にあることから、これまでの護衛艦2隻態勢から1隻態勢に変更するものの、引き続き海賊対処活動を継続することを閣議決定した。全体的には海賊件数は昨年から減少したが、東南アジア(スールー海)や西アフリカ・ギニア湾周辺では、ハイジャック事件も含め発生件数が増加している。
■ 内航海運の将来像を描く新たな内航ビジョン策定に向けた議論開始
国土交通省は、4月「内航海運の活性化に向けた今後の方向性検討委員会」を設置し、中長期の内航海運の姿を見据えた今後の内航海運のあるべき姿と、それに向けて関係者が取り組むべき方向性についての検討を開始。7月に着手すべき5つの取り組み(産業構造強化、船員確保・育成、船舶建造、業務効率化・新規需要獲得)を中間とりまとめとして整理し公表した。今後も引き続き、おおむね10年後を見据えた議論を深めていくこととしている。