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宅配2トップが「週休3日制」検討、佐川はすでに“実績”

2017年6月6日 (火)

話題ヤマト運輸と佐川急便の宅配大手2社が、週休3日を中心とした働き方の導入について具体的な検討を開始したことが6日、わかった。

■佐川「東京・山梨で4月からトライアル」
 ヤマト「現行でも可能だがさらに踏み込む議論」
佐川急便は東京都と山梨県で4月から試行的に「週休3日を認める変形労働時間制」に基づく正社員の募集を開始しており、すでに「若干名」(佐川急便広報室)を採用した。

ヤマト運輸は「以前から変形労働時間制を取り入れており、現行制度でも多くの週で3日間休むことは可能だが、さらに踏み込んだ取り組みの検討に向け、効果や課題を見きわめる議論を行っている段階」(ヤマト運輸広報戦略室)にあるという。

一般的に「週休3日制」を実現するには、フレックスタイム制や裁量労働制のほか、1日ごとではなく月や年単位で労働時間を計算する変形労働時間制を導入するという選択肢がある。

■働き方に柔軟さ、兼業認め人事考課も格差設けず(佐川)
変形労働時間制には月ごとの法定労働時間のなかで週・日の労働時間を振り分ける「月単位」の制度と、同じく法定労働時間の中で1か月以上1年未満の労働時間を設定し、季節の繁閑を考慮して労働時間を決める「年単位」のものがあり、今回佐川急便がトライアル導入しているのは「月単位」の変形労働時間制だ。

週40時間を超えない範囲で働く時間を決められるようになるため、勤務スケジュールの組み方によっては週休3日が可能になる仕組みで、柔軟な働き方が実現できるようになる半面、1日の労働時間を10時間と決めた日があったとしても、2時間分の残業手当は発生しない。

つまり、同じ時間だけ働いても残業手当の割増分に相当する金額が減ることになるわけで、「競合業種を除くなど一定のルールはある」ものの、佐川急便では同時に兼業(副業)を認めることにしている。また、昇給や昇格など人事考課上の判断についても、一般的な1日8時間、週40時間の勤務体系で働く労働者との差を設けないことを明確にするという。

ただ、今回の変形労働時間制の導入は「あくまでもトライアル」に位置付けて取り組むもので、生産性や従業員の満足度、業務上の支障がないかなどを検証した上で、東京都や山梨県以外への導入拡大を検討する。

こうした柔軟な働き方を導入する理由について、同社は「これまでも一つのエリアを3交代で運営するなど、従来の一人で受け持つスタイルから転換を図ってきたが、より『敷居を下げる』ための施策としてテストすることにした」と説明する。

■「事実上可能→制度化で取得促進」効果期待(ヤマト)
一方、ヤマト運輸は現在でも変形労働時間を認めているほか、ことし4月以降は有給休暇、同社独自の「記念日休暇」と合わせて年間休日が126日となっている。現行制度の下で事実上の週休3日制を実現することも可能だが、さらに踏み込んで「制度としての週休3日」を打ち出し、明確化することで、従業員が休みやすくする効果を見込む。

同社は「(トライアルを含めて)実施を決めたわけではない。検討というよりも、あくまでも議論している段階だと考えてほしい」と念を押すように強調したが、同時に「働き方改革を進める上で、多くの企業が(週休3日制の導入を)検討するものと理解している。当社でもその方向で社内の議論が行われており、聖域はない」と、週休3日制の導入そのものは否定していない。

■物流業界、宅配2トップの動き注視
佐川急便とヤマト運輸の取り組みにまだ温度差はあるが、物流業界を代表する2社が「働き方改革」を進める政府の方針に沿って週休3日制を真剣に検討しはじめたのは事実であり、物流業界に及ぼす影響は小さくない。

1980年代半ばに週休2日制を導入する企業が増えてきた際、物流企業の多くはほかの業種に比べて導入が遅れ、85年時点では「何らかの週休2日制採用企業」の割合が全産業平均の49.1%に対し、「運輸・郵便業」は29.7%にとどまっていた。ヤマト運輸と佐川急便の取り組みの結果次第では、他業種に先行して物流企業の「働き方改革」が進展する可能性も出てきたといえよう。