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邦船三社、統合のコンテナ船事業で人事とロゴ発表

2017年7月10日 (月)

▲左から、川崎汽船の村上社長、商船三井の池田社長、統合事業会社のCEOに就くジェレミーニクソン氏、日本郵船の内藤社長(LogisticsToday撮影)

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ロジスティクス日本郵船、商船三井、川崎汽船の邦船三社は10日、定期コンテナ船事業を統合するために設立した新会社に関する記者会見を開いた。事業会社のCEOに就任するジェレミーニクソン氏が、三社が事業統合によってどのように事業を展開していくのかを説明した。統合により、輸送能力世界6位のコンテナ船会社が誕生することになる。

統合事業は、(1)東京に本社を置く持株会社(2)シンガポールを拠点とする事業運営会社(3)地域ごとの事業を統括する香港、シンガポール、英国、米国、ブラジルの地域統括拠点6組織――の3階層で構成。実質的な事業運営はシンガポールの「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス社」を中心に展開する。

記者会見では、3階層それぞれの経営体制とブランドロゴマークが発表された。社名のオーシャン・ネットワーク・エクスプレスは、「一つのチームとなり、ナンバーワンを目指し、唯一無二の存在になる」ことをビジョンに掲げ、オーシャンの「O」、ネットワークの「N」、エクスプレスの「E」という頭文字から「ONE」という略称にその思いを込めた。

持株会社の代表取締役会長には田辺昌宏氏、代表取締役副会長に鈴木敏幸、丸山英聡の両氏が就任。事業会社のオーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)はジェレミーニクソン氏がCEOに就き、地域統括会社の下で日本事業を受け持つ「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス・ジャパン」(10月設立予定)は木戸貴文氏が代表取締役社長に就任する。

ニクソン氏は欧州船社などで営業・輸送事業や事業統合を担当し、2010年以降、日本郵船でシンガポールを拠点にグローバル定期船事業を担当、現在は同社の経営委員を務めている。

ニクソン氏は会見で、統合会社が船腹量144万TEU(20フィートコンテナ換算)で、マースク、MSC、CMA-CGM、COSCO、HLCUに続き、世界6位の輸送能力を持つコンテナ船社になることを説明。「一つのチームとなり、ナンバーワンを目指し、唯一無二の存在になる」というビジョンを体現するため、チームワークやベストプラクティス、品質、信頼、イノベーションといった8つの分野に注力していく、とした。

■質疑応答
――ジェレミーニクソン氏に聞きたい。きょうはCOSCOがOOCLを買収するとの発表があった。新会社の事業規模について、どう思っているのか。どうしていきたいのか。

ニクソン氏:大変厳しい環境にあり、海運業界では過去1年半、多くの合併・買収が行われ、プレイヤーが減っていった。事業統合によって3社は十分なスケールを確保したと思っているが、中長期的にこれで十分だとは思っていない。

――売り上げ、利益目標について。また、どう実現していくのかについても説明してほしい。

ニクソン氏:会社をどう筋肉質にしていくか。例えばリクルートプログラム。すでに3社それぞれ有能な人材を世界で抱えている。少しセンシティブな話だが、現在、全社の有能な才能を活かせるような組織設計に取り組んでいる。最低限、既存顧客を保持したいとも考えている。100万TEU、240隻を運航する体制と、少なくとも3社の事業規模を維持・成長させていきたい。

収益については、今のところ、まだ事業を開始していないので、事業計画に着手できていない。新会社は立ち上がったばかり。今後、(2018年4月の)サービス開始までに準備していく。

――新会社の社員数は。

村上氏(川崎汽船社長):3社それぞれに、出向者、特に海外現地法人などから何人程度転籍するのか、考えがあると思う。ほぼそのまま新会社へ移ると理解しており、およそ1万人前後になると聞いている。これから各地域の組織の詳細が決まっていく。

池田氏(商船三井社長):統合による削減効果を1100億円と見積もった過去の見立ては何ら変化していない。もちろん、環境や前提条件が変わってくれば動くだろうが、コストセーブが可能だという考え方は変わっていない。

内藤氏(日本郵船社長):独禁法当局の認可を待っていた関係上、各社が詳しい事情を交換できなかったという事情がある。本来は設立時に売り上げや利益目標を出せればいいのだが、現状は3社の数字を単純に足して出している。詳しくは今後、煮詰めていく。

――会見の趣旨がよくわからない。そもそも新会社はどういう将来像を目指すのか。十分なスケールを確保したというが、グローバルで1、2位でなければ生き残れないという業界が多い中、6位で大丈夫だと思っているのか。それともさらなる統合を考えているのか。

ニクソン氏:まず第一に達成すべきは、18年2月からのブッキング業務の開始を円滑にすすめること。顧客に迷惑をかけずに開始できるようにする。また、シンガポールに事業拠点を置く理由については、シンガポールがアジア市のハブ港、海事クラスター、人材面、運航面の集積地であるということ。特に東西航路の「ザ・アライアンス」がオペレーションセンターを設けているということもある。

池田氏:数字を見れば6位。確かに3社統合しなければならないと思ったのは、規模を確保するためだった。しかし、この産業で規模だけが唯一のファクターだとは思っていない。迅速な意思決定、人材登用、システムの優位性など、総合的要素で競争力ナンバーワンを目指す。規模の1位は目標ではない。