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全ト協、免許制度見直しに期待|年頭所感

2014年1月6日 (月)

話題全日本トラック協会が6日発表した、星野良三会長による年頭所感の要約は次の通り。


2013年のトラック運送業界は1年を通して「燃料高騰対策」に追われた年だった。一昨年末からの株高・円安基調、中東情勢などの影響で燃料価格が高騰、高止まりしたことから、トラック運送事業者のコスト負担増を招き、経営を圧迫し続けた。

このため、12年度補正予算に15億円のトラック買替補助金を計上してもらい、昨年5月に、自由民主党本部で「燃料価格高騰経営危機突破全国総決起大会」を開催。これを受けて政府は、日本経済団体連合会、日本商工会議所に対して「燃料価格高騰下での適正取引推進に関する緊急協力要請」を行った。これは、このまま軽油価格が高騰し、その高騰分を運賃に転嫁できなければ、トラック輸送サービスの安定的な提供が困難になるとの判断から、政府がトラック運送事業者と荷主での適正取引の推進と燃料サーチャージの導入に向けた後押しをしたものだ。政府が、公共性の高いトラック輸送産業、その重要性を高く認識している証とも言える。

9月には、「燃料高騰対策本部」を設置、都道府県トラック協会でも協会長を本部長とする同本部を設置して、燃料サーチャージ導入対策を柱とした燃料高騰対策に本腰を入れて取り組んできた。11月には「トラック業界の要望を実現する会」を開催し、自民党、公明党のトラック議員連盟の国会議員265人が参加するなか、全国から集結したトラック運送事業者が、事業存廃の岐路に立たされた業界の悲痛な声を直接訴えるなど、これまでにない積極的な要望、陳情活動を展開してきた。

こうした活動の結果、12月には政府の経済対策が発表され、燃料高騰に苦しむトラック運送事業に対する支援策として、50億円規模の補正予算案が計上された。今年も引き続き、燃料高騰対策と燃料サーチャージの導入促進を、強力に推進していく。

また、地球温暖化対策税の還付は認められなかったが、エネルギー対策特別会計から14年度、15年度それぞれ61億円の助成を受けることが認められた。

もう一つの懸案事項である高速道路料金制度は、12月20日に国土交通省から「新たな高速道路料金に関する基本方針」が示された。これは、2008年から実施されてきた緊急経済対策の割引財源が今年度末で終了するために行われたものであり、高速道路の料金割引全体が見直される中、2013年度の補正予算620億円により、物流対策として大口多頻度割引が最大50%まで拡充された。

一方、2014年度税制改正では、自動車取得税、今年4月に消費税が8%に引上げられる際、3%から2%に引下げられ、消費税が10%に引上げられる際には廃止されることになった。自動車重量税は、エコカー減税が拡充されるとともに、求めていた道路財源への位置付けは「原因者負担・受益者負担としての性格を踏まえる」と明記された。自動車税は、総務省が「営自格差の見直し」による営業用トラックへの新たな増税案を提言したが、阻止することができた。

本年4月には、消費税が5%から8%へ引上げられるが、適正な転嫁対策として、昨年12月9日に公正取引委員会に対して「消費税の転嫁、表示の決定関連の共同行為(転嫁カルテル、表示カルテル)」を行うための届出を行った。今年は、同届けに基づきスムーズな転嫁が行われるよう、各種対策を推進していく。

物流の基幹産業であるトラック運送事業の社会的な使命を果たすため、これまでも、交通・労災事故防止対策、環境問題対策、少子高齢化に対応した労働力の確保、有事に備えた緊急輸送体制の確立など、社会と時代の要請とも言うべき諸課題に、果敢に取り組んできた。さらに、参入時基準の強化など規制緩和見直しのほか適正運賃収受へ向けた対応として、「原価意識向上のための実践セミナー」の開催など、原価・コスト管理の徹底による経営基盤強化対策にも取り組んできた。今年も引き続き、これらの諸問題に対して積極的に取り組む。

まず、「安全」対策は、常に最重要課題として位置付け、各種施策を強力に推進している。特にドライブレコーダは、導入の手引きと活用マニュアルを作成し、更なる普及拡大に努めた。

貨物自動車運送事業安全性評価事業「Gマーク制度」は、昨年12月19日末現在で、認定数は1万9257事業所に達し「安全性に優れた事業所」として、一般消費者、荷主企業などから高い信頼を得ている。今後は、認定2万事業所を目指し、業界内に対しては申請事業所数の増加、また、対外的にはGマークの認知度アップのため、ラッピングトラックを全国で走らせるなど、内外に向けた認知度向上策を展開して、トラック運送業界全体の安全性の底上げを図っていく。

また、昨年の10月からは、受委託点呼(共同点呼)が可能となったことを踏まえ、確実な点呼の励行を推進することにより、これまで以上に安全運行確保に努めていく。

さらには、近年の少子高齢化社会の進行や免許制度改正の影響もあり若年労働者の確保が困難になりつつあるなど、労働環境改善も喫緊の課題だ。特に免許制度は、警察庁が「貨物自動車関連の運転免許制度の在り方に関する有識者検討会」を設置して検討を開始したことから、全ト協でも業界の緊急実態調査を行う一方、年末には同検討会でのヒアリングを受けた。業界実態に即した新たな免許制度となることを大いに期待している。

本年7月末には、全日本トラック総合会館(全日本トラック防災・研修センター)が竣工し、8月から新会館での業務がスタートする。同会館は、地下1階、地上11階建てで各種研修室に加え、大規模災害を見据え、免震構造で非常用発電装置なども備えている。有事の際には全国の緊急物資輸送の中央司令塔としての機能を担うほか、平時には研修センターの役割を担う。全国のトラック運送事業者のナショナルセンターとして、活用されることを期待している。また、同センターの機能を最大限に活かすためにも、自治体とトラック協会の災害時輸送協定の締結など、緊急救援輸送体制の確立と継続的な見直しなど、万が一の備えにも取組み、「トラックはくらしと経済を支えるライフライン」として、国民の期待に応えていく。