イベントLOGISTICS TODAYは3日、茨城県トラック協会のトラック総合会館で「運びと地位向上キャラバン」を開催した。今回は、全国のトラック・物流Gメンの活動を強力にけん引してきた前・国土交通省トラックGメン統括であり、新たに関東運輸局 茨城運輸支局長に就任した田中幸久氏と、地元の運送業界を率い、2030年の事業許可更新制を見据えた「13支部廃止」というドラスティックな組織再編案を推し進める茨城県トラック協会会長の小倉邦義氏(茨城流通サービス代表取締役)が登壇した。
▲<左から>モデレーターを務めたLOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長、ワンロジの吉岡泰一郎社長
モデレーターを務めるワンロジの吉岡泰一郎社長、LOGISTICS TODAYの赤澤裕介社長兼編集長を交え、補助金終了へのカウントダウン、燃油費の「流動費化」、そして「台数から利益へ」の経営転換に加え、地方の運送業にも波及する「フィジカルインターネット(PI)」の未来像にいたるまで、極めて実務的で踏み込んだ議論が展開された。
最初のセッションでは、茨城運輸支局の田中幸久支局長が登壇。田中氏は前任地の中国運輸局などでトラックGメンの統括として数々の荷主への監査や指導の現場に立ち会ってきた。
▲関東運輸局茨城運輸支局の田中幸久支局長
「真っ当な経営を行う運送事業者が不利益を被らない環境を作ることが国交省およびGメンの役割。適正原価の遵守や取引環境の健全化を進めるため、今後も荷主への指導や是正を徹底していく」と田中氏は強調する。
茨城運輸支局長として今後、地域物流に対して行うアプローチについて、監視や指導といった取締りだけでなく「事業者自らが適正な運賃を論理的に提示できるようになるための、健全化への支援」に注力していく方針を示した。荷主に対してただ「価格を上げてほしい」と懇願するのではなく、運送原価を正しく計算し、根拠を示して交渉できる事業者を増やしていくことこそが、取引適正化における最大の急所であると語った。また「トラック事業者自身が、どのくらいのトン数、容積などの輸送力を持っているのか、運ぶ力を持っているのかを見える化し、把握することが必要だ」と指摘した。さらに「経済成長はそこで働く人の生活を豊かにするためにするもの。まずはそこに立ち返って、物流に携わる人びとの暮らしを豊かにすることに思いを馳せてほしい」と訴えた。
続くセッション2に登壇した茨城県トラック協会の小倉邦義会長は、茨城県トラック協会の今年6月の定時総会にて、長年続いていた県内13の支部を廃止し、4つの広域ブロックに集約・統治する組織再編案を提示したばかりだ。この背景にあるのは、2030年に本格化する「事業許可更新制」に対する強い危機感である。
▲茨城県トラック協会の小倉邦義会長
「30年に本格化する更新制により、財務要件などを満たせない事業者の2割から3割が脱落しかねない。赤字でも車両台数だけを維持し、採算を無視して目の前の安い仕事を奪い合うような経営体質から、業界全体が脱却しなければならない」
小倉会長は協会の組織再編を進めることで、各事業者が必要な情報を確実に得ることができ、効率的に収益向上を目指せる協会作りを推進するという。また、田中氏が自社の運ぶ力を定量的に把握する必要性を説いたように、小倉会長は自社の経営を見える化することの必要性を訴え、地元発のベンチャーコンサルの協力を得て、原価計算を支援し、適正な運賃収受や採用の効率化を進める考えを示した。
セッション3では、田中支局長と小倉会長、そしてモデレーターの吉岡氏、赤澤編集長が加わり、今回のイベントの核心とも言えるパネルディスカッションが行われた。
▲興味深い議論に集まった聴衆で、会場は満員の盛況となった
モデレーターの赤澤編集長は、「国内では現在、フィジカルインターネット(PI)の議論が進んでいるが、ここで最も先進的な議論を行っているのは化学品ワーキンググループ(WG)だ」と紹介。その上で、茨城県内における危険物倉庫の建造がこれから本格的に進んでいくという地域特性に触れ、「こうしたインフラ整備と歩調を合わせることで、茨城がPIの取り組みにおける全国の先進地となる可能性を秘めている」と説明した。
さらに赤澤編集長は、「まだ地方の運送業では『PI』といわれてもピンとこないかもしれない。しかし、自動車関連産業の業界団体である日本自動車工業会(自工会)がPIに取り組み始める。これを契機として、今後は各種産業でもPIへの取り組みが本格化していくだろう」と見通しを示した。
これを受けて田中支局長は、「『フィジカルインターネットはフィジカル(物質)をインターネットのパケットのように半ば自動的にさまざまな運び手が輸配送する仕組み』と言われると理解しにくいかもしれないが、空いているパレットを多様なプレイヤーが活用し合うような仕組み、と考えると現実味をもって理解できるのでは」と説明した。
また田中支局長は、これまで主導してきたトラック・物流Gメンの活動について「長くトラックドライバーを続けたい人をつなぎ止めたいなら、法にのっとった事業を展開するべきだということを知ってもらうための活動」と説明。これについて小倉会長も、「これまで放っておいてもドライバーを雇っていられると思っていた事業者も、同じやり方ではドライバーが外に流出してしまう。トラック事業者も意識を変えていかなければならない」と応じた。
最後は吉岡氏による、「より多くのことを学ぶことは、運送業の発展に必要なことだが、それは同時に荷主企業のためにもなることだ。物流に関わるなら、これからも知識のアップデートに努めていかなければならない」との総括で、イベントは幕を閉じた。
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