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交換方式で弱点克服、EV配送を実証から実用へ


記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「バッテリー交換式EVでのコンビニ配送を実証」(9月18日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

荷主いすゞ自動車は20日、バッテリー交換式EV(電気自動車)トラックの実証出発式を横浜市内で実施した。横浜市、ファミリーマート、伊藤忠商事と連携し、コンビニエンスストア向け配送での交換式バッテリーEVの実用性を検証する。EVトラックの運用は充電時間の長さがボトルネックとなってきたが、国内初となる両側同時交換による独自方式を採用することで、稼働停止時間の大幅な短縮を図る。

今回の実証では、バッテリー交換ステーション1基の運用スペースを横浜市が提供、実証用に改造した「エルフEV」車両3台で検証を重ねる。

出発式では、いすゞ自動車の南真介社長が挨拶し、商用EVに求められる長時間稼働で、交換式バッテリーの有効性を強調。特に24時間稼働するコンビニ配送では充電待ちによる非効率が致命的であり、3台の車両で80店舗をカバーする今回の実証運用を通じて、実際の業務での課題抽出と改善につなげる。

実証のために開発したバッテリー交換ステーションは、いすゞが提案する「EVision Cycle Concept」(イービジョン・サイクル・コンセプト)に基づき、輸送稼働の効率化とカーボンニュートラル(CN)化の両立を目指すもの。今回の実証結果から、バッテリー交換運用を基盤とした全国の小売配送網への展開を見据える。

ファミリーマートは、「2030年までに物流CO2排出量を17年度比30%削減」という目標を掲げており、交換式バッテリーEVが持続可能な物流構築における重要な技術になるとの見方を示す。CO2削減に加え、充電待ち時間の大幅削減で安定配送と効率向上の両立が期待されると述べ、今回の実証から得られる知見をもとに、全国センターでの環境配慮型車両導入につなげていくという。

また、伊藤忠商事は、脱炭素化と輸送効率化の両立実証に向けて、事業性評価や運行データ解析を通じて商用EV普及の加速に貢献する意向を示した。

▲EVバッテリー自動交換の様子

出発式では、両サイド同時バッテリー交換システムをデモンストレーション。車両IDの自動認識による入場指示で車両がステーションに入庫。停車後は通信機能を通じて自動で車両位置補正や、4パックのバッテリー交換が始まり、ドライバーがキーをオフにしてから交換完了まで7分で完了するプロセスを披露した。これまでは急速充電でも1時間を要したバッテリー充電時間を大幅に削減、1回の充電で100キロ圏内の配送に対応する。

また、交換・格納されたバッテリーは2時間程度で充電を終えて、止まることのない運用に備えることができる。実証事業のオペレーションでは1日最大3便、1便あたり30から70キロの走行を想定し、走行データなどからステーション配置などの運用の最適化、展開拡大の妥当性などが検証される。また、バッテリー交換ステーションはソーラーパネルによる給電機能を備え、災害時の非常用電源、蓄電池としての活用など社会インフラとしての役割も担う。

いすゞは今後の普及、実用化への課題を、ステーションの小型化とする。また、中国ソリューションなどとの競争も想定され、バッテリーEV交換の標準化、規格化などへ向けて、協調領域と競争領域についての検証を進めていき、CN実現という目標への到達に力を注ぐ方針である。

横浜市の山中竹春市長は、横浜市全体のCO2排出量の2割を運輸部門が占めることから、コンビニ配送の電動化は極めて重要と挨拶。持続可能な都市モデルの構築を進める中で、今回の実証は大きな一歩になると期待を寄せた。(大津鉄也)

▲実証用に改造された「いすゞ エルフEV」

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