イベントLOGISTICS TODAY、ワンロジ(東京都新宿区)、ドライバーニューディールアソシエーション(D.N.A.)は22日、第11回となる「運びと地位向上キャラバン」を仙台で開催した。東北エリアで初の開催となった今回は、初となる3者共同主催により、ハイブリッド形式(現地参加・オンライン生配信)で実施。「東北の運送会社が運賃交渉・人手不足を突破する実務生存戦略」をテーマに、現場に根ざした生々しい経営課題と打開策についての議論が繰り広げられた。
イベント前半のセッションでは、会場提供も務めたライフサポートエガワ(東京都足立区)の江川哲生社長が登壇。同社が推進する「お菓子の共同配送事業」の実効性と、そこに至る歴史について語られた。
▲ライフサポートエガワ・江川哲生社長
現在、同社では160社を超えるお菓子メーカーの共同配送を手がけ、1日あたり20万〜25万ケース、600台のトラックを運行。大手コンビニ向けのお菓子の8割を担当するなど、広域・地域密着の双方で物流基盤を支えている。
1992年に先代社長が始めた共同配送のきっかけは、自社の営業による飛び込みではなく、お届け先である「菓子卸(着荷主)」からの依頼であった。朝8時に多数のトラックが集中することで近隣トラブルや事故が多発していた背景に対し、着荷主から「まとめて持ってきてほしい」と要請されたことがスタートとなった。
従来、3社・3お届け先で9台必要だったトラックを3台に集約し、棚入れや先入れ先出しといったきめ細やかな現場対応(付加価値サービス)を徹底したことで着荷主からの信頼を獲得。それが発荷主(メーカー)への指名・紹介へと波及していった。
2024年問題(改善基準告示改正)やESG意識の高まりを受け、「自社単独での配送から共同化へ」とシフトするメーカーが急増。同社の共同配送モデルは、積載効率の向上とCO2削減、納品先の混乱回避を同時に実現する「三方よし」の仕組みとして、改めて強い注目を集めている。
▲「運びと地位向上キャラバン」での質疑の様子。イベントはライフサポートエガワ 仙台扇町DCの、ガラス越しにオフィスが見える倉庫ワーカー用カフェテリアで行われた
続いて行われたセッションでは、奥洲物産運輸(宮城県東松島市)の菅井武英社長が登壇。東北エリア特有の「長距離輸送への依存」や深刻な人手不足という共通課題に対し、ダブル連結トラックの導入推進やトレーラーを活用した輸送効率化など、現場から地場物流を守り抜くための取り組みが紹介された。
▲奥洲物産運輸社長の菅井武英氏
セッション内では、輸送効率化を目指して導入を進めたダブル連結トラックをめぐり、行政手続きの不透明さが浮き彫りとなるエピソードも明かされた。菅井社長によれば、UD製のトラクターヘッドとダブル連結トラック架装を合わせた合計金額は4000万円に上るが、行政側の判断の見直しによって、5か月間も使われないまま放置される事態が生じたという。
これに対し江川社長は、「食品輸送用のトラックが2000万円ほどだが、その倍の金額というのにも驚く。しかし、その車両が5か月も使えないのは経営的にもさぞ辛かっただろう」と感想を漏らした。
菅井社長は「車両導入に当たっては補助金が出たので4000万円全額が自社持ちというわけではない」としつつも、「補助金を出すということは効率的な物流機材の導入を促すものなはずだが、それを阻害する行政の運用には首をかしげる」と語った。また、「一旦は行政がOKを出したものを、担当者が代わったという理由で改めて判断をし直すというのはいかがなものか。」と強い疑問を呈した。
昨今ではリチウムイオン電池の普及、EC(電子商取引)需要の高まりによる、アルコールを含む化粧品やエアゾール製品の集積により、危険物倉庫の需要が高まっているが、ここでもまた、各消防署による対応のムラが指摘されている。
▲モデレーターを務めたワンロジ社長の吉岡泰一郎氏
さらに会場からも「中央官庁で有識者会議というものが開催されているが、こうした状況を含め、物流の現場を知っている有識者の意見が反映されているのかは疑問だ」という声が上がり、現場のリアルな実情と行政の壁についての議論が深まった。
クロージングセッションでは、LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長とワンロジの吉岡泰一郎社長から、本キャラバンが掲げる本質的なテーマ「ドライバーの処遇改善と地位向上」について深い議論が交わされた。
無事故歴や走行距離、稼働時間といったドライバー個人の長年の実績が、転職時にリセットされてしまう業界構造への危機感が共有され、「走行実績などの累積データを年金手帳のように個人に帰属させ、キャリアとして公正に評価される仕組みを作りたい」という構想が語られた。
▲モデレーターを務めたLOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長
また、協賛企業として登壇したロジザードの金澤茂則代表取締役社長は、フィジカルインターネットやブロックチェーン技術を活用したサプライチェーンデータ連携基盤の構築について言及。「荷物を運ぶドライバーの実績を共通証明できるデータベースを整えるとともに、荷主側がより配送へ配慮する世の中を作っていくことが、サステナブルな物流の実現につながる」と語った。
終盤では、海外の先進事例や失敗事例に学びつつ、日本の物流現場に即した実用的な仕組みをスピード感を持って取り入れていく重要性が確認され、大盛況のうちにイベントは幕を閉じた。