「東京オリンピックと物流」館内物流インタビュー【前編】

[特集]東京オリンピックと物流|インタビューvol.1前編

2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会に向け、競技場やインフラなどを整備する動きが活発化しつつある。関連する大規模施設の建設に物流管理の観点を取り込み、物流や周辺交通の整流化を図ろうとする物流業界団体や行政の積極的な働き掛けが特徴的だが、物流の中でもこうした分野を先導できる専門家は少ないのが実情だ。

長年、大規模商業施設などの館内物流導入に携わり、日本物流学会でこの分野の普及活動に取り組み、「館内物流請負人」とも呼ばれる三身直人氏(SBSロジコム)に、東京オリンピックに向けた館内物流上の課題、何に留意すればいいのかを聞いた。

――東京オリンピック開催に向けた物流上の課題は。

[特集]東京オリンピックと物流|インタビューvol.1建築上、物流を行うための問題点は多く見受けられる。国交省では6年後に控えている東京オリンピック・パラリンピックで、大型施設を中心とした競技場や、来日する外国人に対する商業施設、宿泊施設の荷捌き場を中心とした物流管理に目を向けている模様だ。

現状、ビルの入り口は2.2m・2.5m・2.7mなどさまざまだが、規格として2t車トラックの高さである3m、4t車トラックの高さ3.5mと、物流車両の入場口としても統一されておらず、課題となっている。

また、荷受け場(=プラットホーム)は1.1mや0.7mが基準となっているものの、この高さに関してもトラックの規格にはあっていない。物流会社としての観点とこれまでの経験上、建築段階で大型ビルの物流搬入口にはプラットホームは不要だと思われる。建築物が物流をまったく考慮しない設計になっているのが現実だ。

天高や入口の高さ、プラットホームの必要性は、これから建築していく競技場や選手村(マンション)の建築資材搬入、物品搬入を考えた際、施設に荷物を運ぶ物流会社は、この建築上の課題点によってしわ寄せがくると考えられる。なくてはならないモノの流通に対する備え、特に物流に対する取り組みは東京オリンピック開催国として大きな課題だろう。

 
――館内物流を考慮した施設づくりによるメリットは。

[特集]東京オリンピックと物流|インタビューvol.1社会的な利点としては、施設周辺の管理、道路の混雑緩和、物流会社搬入・宅配業者搬入でエレベーターの混雑、早い物勝ち、エレベーターなど電力の使い過ぎ、器物破損の危険、業者同士のいざこざをなくす――といった点が考えられる。これらをコントロールし、CO2を削減できるような運営によって環境面に配慮できることもメリットだ。

施設運営者側としては、通常、物流の管理・コントロールは警備会社や駐車場管理会社が行うことが多いためため、物流のノウハウのない事業者による非効率を回避できる点が大きい。専門的な館内物流を導入しない場合、物流、荷物の受け入れが煩雑となり、物の消失や納品先を間違える、時間内に配達ができないなどの課題が出てくる。

これを改善するには、館内物流の導入が有効だ。コスト削減・大型物納品時の養生・同線・セキュリティ、安全性が確保され、明確な物流担当者が常駐することで、ビルに入れないトラックの誘導など、施設運営者が行うことを代わりに行う。

また、テナントや利用者にとっては、館内で物流が滞ると道に迷い、宅配が来なくなる、欲しい時間に商品が来ないといった課題を解消できる。裏口、納品口のセキュリティーも守られる。裏口からの入場についても、カードキーなどの使用を徹底することで、不審者の侵入を防ぐことができる。これらの導入効果は、開店前納品の徹底、館内で配達車の管理に通じ、来街者の歩行の安全確保にもつながる。

後編に続く】

次回は前編に続き、三身氏が「館内物流の導入状況」「特定企業にノウハウが集積する背景」「何を参考にすればいいのか」といった問いに回答する。

三身直人氏プロフィール

東京オリンピックイヤーの1964年1月生まれ、神奈川県出身。 旧東急ロジスティック(現SBSロジコム)で2000年から一貫して館内物流事業に携わる。

■連絡先
SBSロジコム
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