「東京オリンピックと物流」館内物流インタビュー【後編】

[特集]東京オリンピックと物流|インタビュー【後編】

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――多くのメリットをもたらす館内物流だが、導入状況は。

[特集]東京オリンピックと物流|インタビューvol.1東京都は物流の一元化や駐車場に関する条例などを徹底をしようとしている。既に導入をしている所は、反社会的勢力や住民・道路混雑などの問題を抱えた地域を中心に、共益費や管理費を事前に確保するなど計画段階から物流に配慮した設計を予算化している。

館内物流を導入する上で、その費用を賄う手段として館内配送費や管理費などが考えられるが、通常の大型ビル建設時には考慮されていない。館内物流を導入しなくてもまかなえる大型施設は、周辺道路の混雑がない環境にあったり、館内物流を導入するには規模が小さかったりといった状況が考えられる。

導入の目安は、延床面積が10万平方メートル、トラックの導入・接車・納品台数が200台から300台、宅配荷物個数が月間2000から4000個、周辺環境(建築物・民家・道路混雑)をすべてコントロールできる――といった条件がそろう施設となる。テナントの業種・業態によって物量は違うが、館内物流に携わってきた者として、経験上、想定できる。

 

――特定企業にノウハウが集積する背景には何があるのか。

[特集]東京オリンピックと物流|インタビューvol.1館内物流を提供できる物流会社には、ゼネコンや建設会社と一緒に、テナント各社の移転(引っ越し)を含めた物流管理が求められる。宅配の取り回しだけでは十分な導入メリットを生み出すことが難しく、幅広い物流管理能力が欠かせない。実際に館内物流を提供できる物流会社は少ないのが実情だ。

これらの物流会社は、館内運営、車両管理、宅配以外の業者に対する直納ルート提供ができなければならない。直納は事前に業者を登録し、同時に納品時間や配達方面も登録して承認カードを発行するといった対応が考えられる。納品業者をコントロールすることは、即ち納品物をコントロールすることとなる。厳密で柔軟なスケジュール管理によって移転から宅配、直納までを一元・徹底管理できるノウハウを、一般の物流会社が蓄積するのは困難だ。

館内物流を提供する物流会社には、設計段階で接車する納品トラック台数、時間管理、商品受取管理を考慮し、宅配管理システムと直納管理システムを構築する必要がある。

 

――館内物流に関心がある場合、何を参考にすればいいのか。

[特集]東京オリンピックと物流|インタビューvol.1現場内覧が一番だ。見ながら説明を聞くことができる、当社運営の施設を紹介したい。設計・建築の段階から前もって館内物流を計画しているため、こうした初期段階からのアドバイスも可能だ。搬入動線通路の幅、コーナーのミラーの設置、貨物用エレベーターに関する仕様まで物流管理を考慮しきった建築を提案する。

納入管理をしないと物が滞留してしまうため、納品業者を管理することでモノを溢れさせない。建物の規模に対して適正な着車バース数を設定することで、納品時間の管理・業務時間の管理が可能になるが、これは適正な運営と適正な施設設計によって可能となる。

東京オリンピックに開催に向けては、ゼネコン各社や建設業者だけで大型施設・競技場・ビル・マンションの建設・設計を行うのではなく、計画段階から物流団体や物流事業者が参加し、物流に対する要望・使用条件を的確にヒアリングして組み込んで行くべきだ。

 

――東京五輪を見据えた都市物流のあり方をどう考えるか。

館内物流の計画、施設の建設に向けた物流計画は、設計変更がきく時期までに盛り込むべきだ。一般的に、大型施設内の物流を効率的に行うには、トラックの接車バース数を多めに作り込み、荷捌き場所を広くとることが考えられがちだが、無駄な物流スペースを作らず、無駄な物流コストを掛けない効率的な作業を提供するのが館内物流の導入意義だ。大型施設における間接的な物流コストを下げることに主眼をおかなければならない。

[特集]東京オリンピックと物流|インタビューvol.1

三身直人氏プロフィール

東京オリンピックイヤーの1964年1月生まれ、神奈川県出身。
旧東急ロジスティック(現SBSロジコム)で2000年から一貫して館内物流事業に携わる。

連絡先
SBSロジコム営業本部
TEL:03-3829-2470
ウェブサイト:http://www.sbs-logicom.co.jp/lgc/physical/tasukaru/