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東京五輪までに1万台体制、「車両稼働率向上が社会の利益」と結集呼びかけ

iGOQ「できるまで全力」、SBS鎌田代表が示す覚悟

2017年8月10日 (木)

物流シェアリングサービス「iGOQ」を今秋にも公開するSBSグループ。3PL、食品物流、重量品輸送など幅広い物流を手がけながら、物流不動産の稼働率を高めて収益に転換していくビジネススタイルに定評のある同社が打ち出す、次なる手は、社会問題化するドライバー不足の解消にもつながる、先進的な取り組みだ。グループ代表の鎌田正彦氏(SBSホールディングス社長)に、その狙いと運送会社・荷主企業がiGOQを利用すべき理由、利点、背景を聞いた。

▲ iGOQ事業について説明する鎌田正彦・SBSグループ代表

――幅広いニーズへの対応力と3PL・物流不動産の融合を強みとするSBSグループが、空きスペース・空き時間を自動的に把握してマッチングするビジネスに乗り出すきっかけは。

SBSホールディングス・鎌田正彦社長(鎌田氏):訪米中に現地でシェアードビジネスの先駆けと言われるUber(ウーバー)を利用したのが最初だ。交通・運輸分野に限らず、民泊の普及などスマートフォンアプリによる現行サービスの置き換えが起きている。

日本では、特に国内物流分野ではICT(情報通信技術)の導入や活用が遅れている。運転者の成り手が著しく不足する中で、24時間を軸として車両の稼働率を考えた場合、実稼働率は3割から4割にとどまる。

もはや一部の大手が運送業者を抱え込む時代ではなく、業界全体でまとまり、共通の課題に対処していかなければならない。ここを考えた時、同一のプラットフォーム上で、みんなで輸送力を共有していく、すなわちシェアリングサービスが必要だという結論に達した。これがきっかけだ。

――具体的にはどんなサービス内容になるのか。

鎌田氏:荷主が登録する仕事に対し、システムによって事業者が必要な条件を登録した「枠」を引き当てる。基本的にはスポット業務に関するマッチングだ。即時のマッチング、配車は段階的に検討するが、目の前に突然現れる仕事に即応できる軽貨物運送事業者と異なり、われわれ一般貨物運送事業者は基本的に「予定」で動いているため、まずはそこに合わせた展開となる。

――このビジネスでSBSはどんなメリットを享受するのか。

鎌田氏:最も重視しているのは、業界全体の車両稼働率が高まり、物流事業の環境が安定的に改善されること。それにより、将来にわたって運送業界が必要とされる輸送力を社会に提供していくことが可能になる。直接的には、運営に必要な費用を利用運送収入として得ていくモデルになるが、安定的な事業環境が整う効果の大きさには及ばないだろう。

――物流会社、あるいは荷主がこのサービスを利用するメリットは。

鎌田氏:物流企業としては稼働率と、未収の心配なしに運送収入をアップできること。荷主企業にとっては、瞬時に必要な車両を手配できるようになること。利用運送として提供するため、提供するサービスはSBSが責任を持つということも利点と考えてもらえれば。

――物流企業のどんなニーズを想定しているのか。

鎌田氏:スポット業務が多かったり、中途半端な空き時間がある、予定が空いてしまった――といったニーズに最もよく当てはまる。また、車両を確保しきれず困っている企業にとっても、効果を発揮するだろう。

まずは物流効率。これが人手不足の改善・解消に直結する。車両の稼働率が高まることでCO2の排出量を抑制できたり、政府が取り組む物流プラットフォーム化に寄与したりといった、社会的な意義も小さくないと考えている。

――シェアードビジネスは物流でも増えつつある。ほかのマッチングサービスとの違いは。

鎌田氏:法的には貨物利用運送業として運営していくことが重要だ。単なる手数料ビジネスでなく、元請けとしての責任を負うというのは、アイデアだけのビジネスじゃないという証。また、物流会社としてSBSが受託する荷物を流していくことに利用したり、SBSがビジネスの間に入ることで、与信機能を提供したり、さらには将来的に事業者にメリットある形でファクタリング機能を提供したりといったことを検討している。

当社はあくまで物流会社であり、システム開発会社ではない。つまり、システム利用料で稼ぐ必要がないということだ。動態管理を含めた管理機能を無償利用してもらい、できるだけ多くの会社にプラットフォームへの参加を呼びかけたい。

大切なのは、車両の空き時間をシェアリング、つまり共有していくという考え方であり、事業者を抱え込むという発想を持ってはいけない。アプリから取得する位置情報などは匿名情報となっており、ビッグデータとして取り扱うことは考えているが、SBSが自社以外の稼働状況を個別に把握することはない。

――サービスを利用する上で利用者の負担は。

鎌田氏:まったくない。スマートフォンアプリを利用したサービスとなるが、スマートフォンを持たない運送会社には、格安スマートフォンを月額2980円でレンタルできるプランも用意する。国内通話し放題、通信料込、端末代込のレンタルサービスだ。

――これらのサービスはSBSの事業を変革していくのか。

鎌田氏:ICTを活用したロジスティクスカンパニーへと変革してゆく第一歩となる。そのためにはロボットによるピッキング・AIによる最適化・ドローン配送など、物流目線で開発していくことが必要。多方面でICTを導入し、少しずつ社内の意識を変えていく。M&Aと同様、グループの発展に欠かせない再構築策として位置付けたい。

まずは2020年東京オリンピック・パラリンピック開催までに、iGOQを利用する車両数を1万台規模にしていく。最終的には6万台を目指す。必ずニーズがあると確信しているが、目指す姿を実現できるまでやるという意気込みを持っている。社会が物流に求める一つの答えとして、責任をもって取り組む。旧時代に穴を開け、変革していく企業体であり続けることが、SBSという事業体だと考えてほしい。