話題物流現場でピッキング支援や搬送自動化を進めてきたシリウスジャパン(東京都中央区)が、製造業への展開を本格化している。
もっとも、製造現場での活用を見据えたAMR(自律走行搬送ロボット)は、急きょ用意したものではない。「FlexPorter GO」(フレックスポーター・ゴー)「FlexPorter DO」(フレックスポーター・ドゥ)「FlexPilot LIFT」(フレックスパイロット・リフト)などの製造業との親和性が高い製品は、すでに数年前から開発、製造に着手したものであり、中国など海外では導入実績もある。日本国内においても、物流のみならず製造業の課題解決にも本格的に向き合う方針を改めて明確にしたことで、現在、複数の製造現場で検証が進められている状況だ。
すでに世界で2000台以上を数える物流領域におけるAMRの稼働実績は、同社の貴重な財産であることは間違いない。ただし製造業への展開で問われるのは、物流で培ったAMRの技術をそのまま持ち込めるかではない。
シリウスジャパンの事業マネージャー李拳志氏は、物流と製造でAMRの置かれる立場が異なると説明する。

▲李拳志氏
「物流現場では、導入したAMRの動きに従って人間が動く余地がある。一方、製造に関しては、既存の生産管理体制の枠組みにAMRが組み込まれ、人の動きで調整できる領域が極めて限定的だ」
物流倉庫では、作業者がAMRの動きに合わせる協働運用を構築しやすい。一方、製造現場では既存の生産計画や設備の稼働条件、工程ごとのルールがよりシビアである。AMRはその中に入り込み、作り込まれた生産体制に合わせた正確な動きが必要となる。
「止めない」の意味が変わる製造現場
もちろん物流でもAMRが止まれば出荷に影響するため、安定稼働が重要であることに変わりはなく、シリウスジャパンもその実績で評価を高めてきた。ただ製造では、一定の地点から一定の地点へ同じ搬送を何百回も繰り返し、荷物を次工程へ正確に受け渡す用途が多い。そのため、停止位置の再現性や設備とのドッキング精度がより重要になる。
「製造現場に関しては、一定区間のルートの定点搬送があるので、そのタスクがずっと重複されてくる。より高い精度が求められる」
さらに、AMRが止まって仕掛品や部品が届かなければ、その後の生産工程にも影響する。
「1ラインの遅れが発生するだけでも、AMRが停止し、仕掛品や部品が所定のタイミングで供給されなくなる可能性がある。これにより、時間的なロスや生産コストの増加につながるだけでなく、生産ライン全体の稼働率が低下し、最終的には生産量や売上にも影響を及ぼすリスクも高まる。そのため、オペレーションを止めないこと、すなわち安定して稼働し続けられることが、AMR導入において非常に重要」
つまり製造業では、AMRは単に人の搬送作業を代替する機械ではなく、生産工程を支える設備の一部になる。物流で重視されてきた物量変動への柔軟な対応とはまた異なり、決められた生産計画のなかで、同じ仕事を確実に再現し続けることが問われるわけだ。
一方、物流で蓄積してきた知見が生きる領域も大きい。
同社はロボット本体、AI、製造までをグループ内で一貫して手掛ける垂直統合型の開発体制を強みとする。中国には大規模な製造拠点を持ち、荷台やトレイの形状など、顧客ごとの要望にも比較的柔軟に対応できる。
物流現場で顧客ごとのオペレーションを聞き取り、最適な構成を設計してきた経験も製造現場へ持ち込む。
「ロボット、AI、すべて自社で開発しているので、ユーザーからの個別の要望にも柔軟に対応できる。物流現場で培った知見は、製造現場にも生かせる」
さらにシリウス独自の群知能プラットフォーム「FlexGalaxy.AI」によって、複数のAMRだけでなく自動倉庫などのマテハン設備も統合管理できる。物流現場で積み重ねた運行データや制御ノウハウを、製造現場へ横展開できることも強みとなる。
3機種は「スペック」で選ばない
李氏は、製造現場で活躍する3機種であるFlexPorter GO、FlexPorter DO、FlexPilot LIFTの違いを解説する。
FlexPorter GOは物流と製造の双方で使える汎用モデルで、可搬重量は300キロ。従来のピッキングアシストロボットより重量のある荷物を扱え、RFIDリーダーや小型プリンターなどのオプションも搭載できる。

▲FlexPorter GO
FlexPorter DOはより製造現場を意識したモデルで、台車などの下へ潜り込んで持ち上げ、定点間を搬送する。可搬重量は1トン。上部の荷台部分は搬送物に合わせてカスタマイズできる。

▲FlexPorter DO
FlexPilot LIFTは300キロまで搬送でき、1メートル程度の通路幅でも走行できるコンパクトモデル。IP45の防水・防じん性能も備え、製造現場を主要ターゲットに据える。

▲FlexPilot LIFT
3機種をそろえた意味は、単に「軽いものから重いものまで運べる」というラインアップの拡充ではない。製造現場では、何を運ぶかだけでなく、どの工程からどの工程へ運ぶのか、人が積み降ろすのか、既存設備と自動で受け渡すのか、どの程度の通路幅を確保できるのかなど、条件によって適する搬送方法が変わる。だからこそ、機種ありきではなく、工程ありきで製品を選ぶ必要がある。
シリウスジャパンが重視するのも、この3機種をカタログスペックで売り分けることではない。
「これ一個一個を単体で売っていくというより、ユーザーの課題をまずヒアリングして、その後、最適なロボットを活用したコンサルティング的な動きで現場の改善につなげる」こと。ユーザーへの提案力を高めるためのものだ。
ユーザー側がある製品を希望しても、現場を確認した結果、別の機種や複数機種の組み合わせを提案することもある。物流では、商品の置き場所や作業人数まで分析し、AMRを入れた場合の台数、初期費用、ランニング費用、削減効果を算出してきた。製造でも、単なる機器販売ではなく工程そのものへ踏み込む姿勢を取る。
実際、製造現場の担当者も自らの工程に存在する無理や無駄を認識しているケースが少なくないという。問題は、それを改善するための人員や時間を確保できず、人が重量物を運ぶ、長距離を歩くといった業務が残り続けていることだ。
シリウスジャパンが目指すのは、そうした作業を無条件でAMRに置き換えることでもない。
機器単体を売ることより、顧客の課題を解決できるかを優先する。その姿勢は、製造業市場での差別化にもなりそうだ。
AMR導入を、工場全体改善の入り口に
物流現場においては、まず搬送工程の改善を少ない台数の自動化機器で検証するスモールスタートも後押ししてきた。製造現場でも同様、最初から工場全体を自動化する必要はない。
「全工程を変えるのではなく、この区間、このエリアだけまず試して、その後、生産性が確認できたら展開を拡大していくお客様も多い」
製造向け3機種は現状、基本的に購入での提供となる。標準的な導入リードタイムは2-3か月程度で、台数や輸入、上位システムとの連携内容によって変動する。
その先でシリウスジャパンが目指すResult(成果)は、省人化だけではない。
重量物の長距離搬送を人から切り離すこと、人手不足や高齢化へ対応することに加え、部品待ちを減らし、生産ラインを安定して動かすこと。さらにAMRの稼働ログを蓄積すれば、搬送頻度やロケーション配置、生産管理そのものを見直す材料にもなる。どの工程で、どれだけの搬送が発生し、AMR導入によって生産性が上がったのか、あるいは期待した効果が出なかったのか。導入後に得られるデータは、AMRの効果測定だけでなく、次の改善策を検討する材料となる。「導入して終わり」ではなく、実際のResultを見ながら次の工程へ展開する循環をつくる考えだ。
「AMRそのものではなく、全体の運用を最適化すること」
工場内物流全体を変えたい。その入り口としてAMRがある。AMRを単体設備として導入するだけでなく、既存設備や人の配置、搬送工程を含めて見直し、生産全体の改善へつなげることが、本格的な製造業展開で問われるシリウスジャパンの役割になる。
物流現場で培った「ロボットを売る」のではなく、「現場を変える」という経験を、どこまで製造業へ持ち込めるか。シリウスジャパンの製造業展開は、その実力が問われる新たな段階に入った。
会場: 東京ビッグサイト(東京国際展示場) 東3ホール
野村不動産ブースにて出展/ブース番号E3-C13


























