話題物流施設にとって、電力は単なる光熱費ではない。広い屋根と大きな建屋面積を持ち、照明、空調、換気、搬送設備、事務所機能を抱える物流倉庫では、電力の使い方そのものが固定費、作業環境、脱炭素対応、さらには人財確保と施設価値を左右する。
これは、施設を所有・運営する物流不動産事業者や倉庫事業者にとっては施設価値やテナント誘致の課題であり、入居して物流業務を行う荷主・物流事業者にとっては、電力コストやCO2排出量、作業環境の課題でもある。
電気料金の高止まりが続くなか、荷主やテナント企業からCO2排出量削減への対応を求められる場面も増えている。物流施設ではいま、所有者、運営者、利用者のそれぞれが、「どこから電力を調達し、どう使い、どこまで減らすか」を考える必要性が高まっている。
再エネ導入への関心も高まるが、最初の一歩を踏み出すのは簡単ではない。太陽光発電設備導入にはどこから手をつけ、どれだけの投資が必要なのか。屋根にパネルを載せた後、長期にわたる保守・運用は誰が担うのか。さらに、使用電力量そのものを減らす省エネにも取り組むべきだと分かっていても、空調や照明、換気制御の更新でどれほどの効果が出るのか、判断に迷う施設も少なくない。

大和エネルギー(大阪市阿倍野区)は、こうした物流施設の不安に対し、太陽光発電設備の施工やPPAスキームを活用した再エネ導入提案と、空調・照明・制御設備などの省エネ提案を組み合わせて応える。発電事業者としての運用知見、設計・施工・O&Mまでの一貫体制、大和ハウスグループとしての建物理解を生かし、物流施設の電力コスト削減と脱炭素化を長期運用まで支援する。
取材に応じたのは、事業統括本部ソリューション事業部東日本営業所所長の石渡信任氏、事業統括本部電力事業部事業開発グループの川路翔子氏、事業統括本部ソリューション事業部省エネルギー営業所営業1課主任の明石学氏の3人。石渡氏のソリューション事業部は、物流倉庫向けの太陽光、省エネ対策、空調設備導入などの請負工事を担当する。川路氏の電力事業部は再エネ開発事業者としての実績・経験より物流倉庫ではPPA事業者として太陽光発電設備導入支援を担い、明石氏の省エネルギー営業所は、既存施設の省エネ提案やエネルギーサービス(※)の保守・契約管理を担当する。
(※)エネルギーサービスとは、企業や施設のエネルギー利用を最適化するために、設備の設計・導入・運用・保守、エネルギー調達、省エネ支援などをワンストップで提供するサービス
再エネ導入、関心の先にある不安

▲石渡氏
物流施設から寄せられる相談は、ここ数年で変わってきた。「電気料金を下げる、あるいは安定化を図ることへの相談は変わらず多い」(石渡氏)ことに加え、入居するテナントや荷主企業から、再エネへの取り組みを求められるケースが増えている。物流施設屋上を活用した太陽光利用への関心も高まる。
大和エネルギーは、太陽光発電の導入方式として、PPAとEPCの双方に精通し、企業の投資方針、施設の所有形態、入居期間、発電事業のリスクを取れるかどうかに応じて、最適な方式を組み立てる。
特にテナント型物流倉庫では、再エネ導入に関心があっても、入居企業だけで投資判断するのは難しい。荷主や物流事業者などのテナント側は再エネ電力を使いたい一方、入居期間内で設備投資を回収できるとは限らない。施設所有者側も、屋根を活用した再エネ導入が施設価値向上につながる可能性はあるが、設備投資や運用管理をどう担うかという課題が残る。
PPAは、発電事業者が顧客施設の屋根などに太陽光発電設備を設置し、発電した電力を施設側に販売する仕組みである。施設の屋根など、発電場所と電力の使用場所が同じものをオンサイトPPA、離れた場所で発電した電力を送配電網を通じて使用するものをオフサイトPPAと呼ぶ。太陽光発電設備導入における初期投資や保守・運用負担が施設側には発生しないことが、PPAの大きな利点となる。
一方で、施設所有者や自社倉庫を持つ企業が発電設備を自社保有したい場合には、EPCという選択肢もある。EPCは、顧客が設備を自社保有する前提で、設計・調達・施工を事業者に委託する方式だ。発電メリットを自社で取り込みやすい反面、初期投資や運用リスク、保守管理の負担を自社で負うことになる。
石渡氏は「発電所を運営して事業を行う以上、事業リスクを取れるか、初期費用を負担できるかが大きな判断材料になる」と話す。太陽光事業の実績があり、自社で発電設備を保有したい企業にはEPCとして設計・施工を提供し、初期投資や運用負担を抑えたい企業にはPPAを提案する。大和エネルギーは、PPA事業者として発電事業を担うことも、EPCとして顧客の自社保有を支援することもできる。この両面に対応できることが、施設所有者、倉庫事業者、テナント企業それぞれの事情に応じた提案につながる。

▲川路氏
川路氏は、物流倉庫ならではの難しさとして、テナントの入れ替わりによって需要が変動する点を挙げる。これは、施設所有者にとっては長期的な発電計画の課題であり、テナント側にとっては、自社の使用量に合わせた再エネ導入がしにくいという課題でもある。
「テナントの出入りで需要が変動するため、特定のテナントに使ってもらうためだけの太陽光導入は難しい面がある」(川路氏)。そのため同社は、自家消費を基本としながら、余剰電力を系統へ逆供給することで、テナントの使用量が変わっても再エネを最大限活用できるスキームを構築している。
ただ載せて終わらない、使い切るPPA設計
太陽光発電は、屋根にパネルを載せれば終わりではない。物流施設では、屋根の耐荷重、防水、保守動線、パワーコンディショナーやキュービクルの設置スペース、テナントの入れ替わりによる電力需要の変動まで確認する必要がある。さらに、発電設備は長期にわたって稼働する。発電ロスを抑え、異常時に対応し、将来の点検や修繕を見据えた設計になっていなければ、導入後の運用負担が重くなる。
その点、大和エネルギーは単なる施工会社ではない。自社で発電所を所有・管理する発電事業者として、設計段階から保守性、発電効率、長期運用を見据えた提案を行う。同社は2026年10月1日時点で全国191か所、338メガワットの発電所で事業を行い、事業計画の立案から建設、運用・保守まで一貫して自社で手掛けている。オンサイトPPAでも全国29か所、合計35メガワットの太陽光発電所を運営している。
物流施設で問われるのは「発電すること」だけではない。発電した電力を施設内でどう使い、余った電力をどう扱い、別拠点やグループ内でどう活用するか。ここに、大和エネルギーの提案力、総合力が表れる。

▲「成田ファッションロジスティクスセンターⅠ」(出所:大和エネルギー)
その一つが、センコーグループの東京納品代行が運営する「成田ファッションロジスティクスセンターI」(千葉県富里市)である。同施設は、24年2月からオンサイトPPAによる太陽光発電設備「DREAM Solar 富里II」を運用している。大和エネルギーは発電事業者として、設備の設計・調達・建設(EPC)から運用・保守までを一貫して担っている。
屋根スペースを最大限に活用した太陽光発電設備により、発電した電力を施設内で自家消費している。一方で、発電量が需要を上回る時間帯に生じる余剰電力をいかに有効活用するかが課題であった。そこで大和エネルギーは、オンサイトPPAに加え、余剰電力を別拠点へ供給するオフサイトPPAスキームを構築した。
26年6月からは、成田ファッションロジスティクスセンターⅠで発生する余剰電力を、東京納品代行の別拠点「東京ベイ・ファッションアリーナ」(千葉県市川市)へ供給するオフサイトPPAを開始。オンサイトPPAとオフサイトPPAを組み合わせることで、施設で創出した再生可能エネルギーをセンコーグループ内で有効活用する仕組みを実現した。本取り組みにより、脱炭素化とエネルギー利用効率の向上を実現する仕組みを実現した。

▲「LOGI STATION 福岡小郡」(出所:大和エネルギー)
JR九州の物流施設「LOGI STATION 福岡小郡」の事例では、屋根を北面と南面に分け、北面でオンサイトPPA、南面でオフサイトPPAを導入した。屋根全面の発電容量は合計6.6メガワット、初年度想定年間発電量は770万キロワットアワー、年間3457トンのCO2排出削減を見込む。これは一般家庭1800世帯分の年間電力使用量に相当し、同一施設における屋根上太陽光発電設備としては九州最大級の発電量となる。
再エネ電源を、施設の自家消費、余剰電力の売電、再エネ電力活用比率の向上と組み合わせることで、物流施設の屋根は「パネルを載せる場所」から「電力戦略を組み立てる場所」へと変わる。
建物を知り、長期運用まで支える
大和ハウスグループとしての建物理解も、物流施設向け提案の大きな強みとなる。太陽光発電設備は建物から切り離して考えられない。新築施設では、建築工程表と太陽光事業工程表を照合し、屋根工事後に太陽光工事が全体工期内に収まるかを検証する必要がある。施工時には、ゼネコンとの作業員動線、仮設事務所、クレーン使用場所、安全管理などの調整も欠かせない。
石渡氏は「太陽光導入に必要な建築工事は、建物設計期間中に協議することが重要だ。工事開始後では対応が間に合わない場合がある」と話す。パネルの設置工事だけでなく、建物そのものを理解したうえで工程を組み立てられることが、物流施設での導入を現実的にする。
発電設備は長期にわたって稼働する。大和エネルギーは、発電所の維持管理を担う管理グループを持ち、運転開始後の異常対応や運用上のフィードバックを自社で行う。発電効率を求めて屋根上にパネルを全面敷設するのではなく、作業者が歩ける幅を適切に確保するなど、保守性を見据えた設計も重視している。設置容量が下がる場合でも、将来の点検や修繕のしやすさを優先する考え方だ。
「事業者と施工会社が連携して進めなければならない案件では、一気通貫の提案を求められる」(石渡氏)。新築ではゼネコンとの工程・安全面の連携も必要となるため、建物工事と太陽光工事を分けて考えるのではなく、施設全体の計画に組み込む必要がある。長期にわたって使われる建物設備として、点検できるか、修繕できるか、故障時に対応できるか。こうした運用面まで見据えなければ、導入後の負担は現場に返ってくる。
大和エネルギーが発電事業者として自ら発電所を保有・管理していることは、こうした設計思想にもつながっている。発電設備を単なる工事対象ではなく、長期にわたって稼働させる資産として捉えるからこそ、保守性や運用性を含めた提案が可能になる。
省エネで使用量を減らす
もっとも、再エネ導入だけで物流施設のエネルギー課題が解決するわけではない。太陽光発電は、使用電力の一部を再エネに置き換える施策であり、電力使用量そのものを減らすには、省エネ設備改修が必要になる。
明石氏は、既築建物では「まず省エネでどれだけ使用量を削減できるかを検証し、残る使用量を自家消費型太陽光でどこまで賄うかを検討する」と説明する。再エネを先に考えるのか、省エネで需要を絞ってから発電容量を決めるのか。建物の状態、既設太陽光の有無、導入済み設備によって、最適な順序は変わる。

▲明石氏
建築付帯設備の省エネ対象は、主に空調と照明だ。空調はパッケージエアコンの法定耐用年数が13年であり、老朽化や予防保全の観点から見直されることが多く、単純更新ではなく、室外機の切り分けなどを含めて省エネ性を高める提案を行う。一方、照明は効果を示しやすい。高天井用水銀灯400ワットを200ワットのLEDへ更新した施設でも、近年の100ワット級LEDへ再更新すれば、さらに消費電力を抑えられる。人感センサーや照度センサーを組み合わせ、作業者の分布や自然採光に応じて照明出力を調整する提案も可能だ。
暑熱対策も重要なテーマになっている。長野県の物流施設では、暑さを理由にパート従業員が離職する課題を受け、空調を2年に分けて導入した。先行導入した南西向きエリアでは、未導入エリアより室内温度・湿度が低下し、離職率も大きく下がったという。大規模倉庫で全館空調が現実的でない場合には、暑さ指数(WBGT)を可視化して対策が必要な場所を把握し、優先順位を付けて投資計画を立てる。
さらに太陽光と蓄電池を組み合わせたBCP提案も広がる。建物が停電すると太陽光発電設備も停止するが、蓄電池を併設すれば、日中の発電電力の利用、夜間への蓄電、長期停電時の充放電が可能になる。
再エネと省エネは、環境対策であると同時に、エネルギーコストを抑え、脱炭素対応と災害に強い物流拠点づくりを支える経営戦略でもある。施設を所有・運営する側にとっては、屋根や設備を活用した施設価値向上の手段となる。入居して物流業務を行う荷主・物流事業者にとっては、電力コスト削減、CO2排出量削減、作業環境改善につながる。
電力を「つくる」だけでなく、「使う量を減らす」。その両面を一体で設計できるかが、これからの物流施設の競争力を左右する。大和エネルギーは、発電事業者としての運用知見、設計・施工・O&Mまでの一貫体制、大和ハウスグループとしての建物理解、省エネ提案まで含めた一気通貫の体制で、施設所有者、倉庫事業者、テナント企業それぞれの電力再設計を支えていく。

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