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機械・精密機器39社の温暖化対策ランク、WWFJ調べ

2019年1月18日 (金)

調査・データ公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は18日、「企業の温暖化対策ランキング」プロジェクトの報告第9弾として、機械、精密機器に属する日本企業39社の調査結果を発表した。

業界全体として、総合得点の平均は機械が45.5点、精密機器が48点と、これまでに調査してきた業種の中では比較的高い水準。WWFが重視する重要7指標では、機械、精密機器の両業種とも「ライフサイクル(LC)全体での排出量の把握、開示」の評価点が高く、一方で「長期的なビジョン」「省エネ目標」「再生可能エネルギー目標」「総量削減目標の難易度」「第3者による評価」という5つの指標は両業種とも得点が伸びなかった。

特に長期的ビジョンや再エネ目標の指標で取り組みの不十分さが目立ち、情報開示では満点を獲得した精密機器1位のニコンも、長期ビジョンや再エネ目標には取り組んでおらず、目標・実績の得点が伸び悩んだ。

機械業種では、「2050年に温室効果ガス排出量を総量で80%削減」という野心的な長期目標を掲げるナブテスコが1位となり、以下日立建機、ダイキン工業、クボタ、ダイフクと続いた。パリ協定と整合した削減目標の策定を呼び掛ける国際イニシアティブ「ScienceBasedTargets」(SBT)に取り組むナブテスコ、日立建機の2社は、長期的なビジョンや総量削減目標の難易度などで評価を伸ばしている。

SBT承認取得に向けた環境省の支援事業への参加も含めれば、ほかに7社がSBTに取り組み、WWFの評価でも点数を伸ばす傾向が認められたという。3位のダイキン工業はこの業種で唯一、再エネ目標を設定していた。

機械7位となったジェイテクトはトヨタ自動車のサプライヤー企業だが、トヨタ自動車が2015年にLC全体でCO2の排出ゼロを目指すなどとした「トヨタ環境チャレンジ2050」を宣言した翌年、ジェイテクトも意欲的な「環境チャレンジ2050」を発表。

2位の日立建機も、親会社の日立製作所が掲げる「日立環境イノベーション2050」を自社の目標に落とし込んだ中期計画を策定している。WWFジャパンは「このようにサプライチェーンを重視する本業種の調査の結果、一企業の野心的な取り組みがステークホルダー企業にも波及するという好循環が確認できた」として、グループの中核・筆頭企業が打ち出す波及効果を評価したが、「肝心の自社での排出削減の取り組みは機械・精密機器の両業種ともに不十分」だと指摘。

パリ協定が目指す脱炭素社会の実現には原単位の改善と同時に、総量の削減努力が求められるが、総量・原単位の両方に目標を持っているのはダイフク、ナブテスコ、IHI、NTNの4社にとどまり、半数以上の企業は総量目標を持っていなかった。実効性の観点で重要となる長期ビジョンや再エネ目標に取り組む企業も限定的だったという。

こうした調査結果に、WWFジャパンは「この業種の企業の多くは、ほかの企業にとってのサプライヤーにあたり、上流・下流の多くのステークホルダーと繋がりを持つため、実効性の高い環境対策に取り組めば、自社を含め、そのサプライチェーン全体での脱炭素化につながる。そのためには、社内外のステークホルダーとの対話を促進する効果が見込まれる、パリ協定と整合した長期目標などの設定が強く望まれる」としている。