荷主自動車輸送ビジネスを展開するゼロは、浜名ワークス(浜松市浜北区)と共同で開発したセミトレーラータイプの新型キャリアカー「Zモデル」の市場投入を始めたと発表した。
電動化された自動車は、一般的に従来の車両よりも重量が増加する傾向がある。自動車輸送用のキャリアカーの最大積載量は8.6トンであることが多いことから、運搬する自動車の重量によってはスペースが残っていても積載できないケースもあり、車両輸送の効率化の課題となっていた。
このたび開発した最大積載量10.7トンのZモデルは、電動化やグリーン化への対応に加えてエンジン停止時でも荷扱いが可能なのが特徴。スマートフォンによってフロア昇降などの操作が可能なほか、各種センサーの取り付けと柱の削減による事故リスク低減機能も搭載し、環境対応と利便性、安全性を追求した。
「Zモデル」は社会の変容に対応できる物流のあり方を象徴する事例だ
ガソリン車から電動車へのシフトは、自動車業界を取り巻くさまざまな領域に発想の転換を促している。ゼロと浜名ワークスが開発した、自動車を運ぶキャリアカーの新タイプ「Zモデル」も、こうした動きを象徴している。
自動車輸送は、長らく同じスタイルで展開されてきた物流領域の一つだ。変化といえば、鉄道から自動車へのシフトが進んだくらいだろうか。かつては「車運車」と呼ばれる専用貨車を多数連ねて東海道線など主要幹線を勇壮に駆け抜けたものだが、現在はキャリアカーに主役の座を譲っている。ガソリン車全盛の時代は、車体重量が同水準からむしろ軽くなる傾向にあったため、キャリアカーの仕様を変更する必要がなかった。
自動車の電動化は、こうした「常識」を一気に覆した。話を広げれば、物流サービスの多くは既存のこうした常識を前提に構築されたものだ。運ぶ対象が変わることで、その手段である輸送車両やシステム、そして常識も変えていく必要がある。社会の変化に柔軟に対応するのが、社会インフラである物流の使命でもある。それを端的に示したのが、今回のキャリアカーの新モデル開発だ。(編集部・清水直樹)