ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

STOCKCREW事例から紐解く、圧倒的な機能性と導入効果

EC物流の風雲児、100倍成長支えるシリウスAMR

2025年6月20日 (金)

話題2025年春、急成長を遂げるEC物流プロバイダーのSTOCKCREW(ストッククルー、東京都中央区)が、新拠点「Chiba Dock2」(千葉県八千代市)にシリウスジャパン(東京都中央区)の自律走行型搬送ロボット(AMR)「FlexSwiftシリーズ」を15台、追加導入した。同社のシリウスAMR導入は、これで延べ百数十台規模に上る。なぜ彼らはシリウスAMRを“追加”し続けるのか。その答えは、単に人手不足を補うという次元にはない。事業規模100倍という常識破りの成長を支えるAMRの圧倒的な機能性と、数字が証明する導入効果。今回は、その核心に迫る。なお、このサクセスストーリーの背景にある両社トップの思想と哲学については、同時公開の特別対談レポート(前後編)で詳述する。

>>【特別対談・前編】STOCKCREWとシリウス両トップが語る躍進の原点

EC物流の風雲児、STOCKCREWが切り拓く新たな地平

2019年の本格始動以来、EC物流業界でその名を急速に轟かせているSTOCKCREW。彼らは一体、どのようなサービスで“風雲児”と称されるに至ったのだろうか。その主軸は、D2Cブランドや中小規模のEC事業者を中心とした、発送代行サービスである。彼らが取り扱うのは、ブランドの世界観を体現するアパレルやコスメ、作り手のこだわりが詰まった雑貨など、一つ一つの顧客体験がリピート率を左右するような、繊細なオペレーションが求められる商材だ。

STOCKCREWが市場に与えた最大のインパクトは、その革新的なビジネスモデルにある。従来、小ロット多品種のEC事業者が高品質な物流サービスを利用するには、高額な固定費や複雑な契約が障壁となっていた。STOCKCREWは、この常識を打ち破る。初期費用をゼロに設定し、物量に応じた完全変動費モデルを提示することで、これまで大手物流会社のサービス利用が難しかったスタートアップや新興ブランドの成長を、物流面から強力に後押ししてきたのだ。

▲EC商品発送の梱包ライン

そのビジネスモデルは多くの事業者の支持を集め、会社の成長は拠点面積の推移に如実に表れている。創業当初はシリウスジャパンの拠点の一角を間借りした30坪のスペースから出荷を始めたが、そこから埼玉県八潮市に250坪、すぐに手狭になり同県杉戸町に450坪、さらに千葉県八千代市に3400坪の「Chiba Dock」を開設し、それも今や6000坪にまで拡張している。わずか4年あまりで総床面積は文字通り100倍以上に膨れ上がった。

この急成長を支えるには、極めて高度なオペレーション設計が不可欠となる。多種多様な荷主の、日々変動する小ロットの出荷指示を、ミスなく、効率的に、そして低コストで処理しなくてはならない。だからこそ、特定の熟練作業者の経験則に依存した旧来の物流オペレーションでは事業の成長はすぐに頭打ちになってしまう。同社を率いる中村慶彦社長が、創業当初から人の属人性を徹底的に排除した「標準化されたオペレーションフロー」の確立を事業の生命線だと考え、その解決策として「ロボットありきの業務設計」に行き着いたのは、必然だったのだ。

▲STOCKCREWの中村慶彦社長

成長戦略と完全合致、シリウスAMRが選ばれ続ける理由

数あるAMRの中からSTOCKCREWがシリウスを選び、そして使い続ける理由は、同社の成長戦略とシリウスの機能性が完全に合致しているからに他ならない。

その第一の理由は、ビジネスの成長を一切阻害しない「限界のない拡張性」である。STOCKCREWの戦略は、標準化された倉庫区画を、事業拡大に合わせて“コピー&ペースト”のように次々と広げていくことだ。しかし、多くのAMRは一定の台数や面積を超えると、中央集権的な制御システムの問題から区画を物理的・システム的に分ける必要があった。「それでは我々のコンセプトと合わない。その点で、シリウスの拡張性に止めどがない仕組みは、唯一無二の選択肢だった」と中村社長は語る。

▲STOCKCREWのEC倉庫を縦横無尽に駆け回るシリウスAMR「FlexSwift」

シリウスのAMRは、一台一台が独立して判断する「完全自律走行」と呼ぶのがふさわしい。事前にインプットされた倉庫内のマップと、通路での一方通行や追い越し、ピッキング待ちの縦列待機など、細かく設定された“交通ルール”に基づき、各AMRが個々に最適なルートを判断して走行する。重要なのは、この走行中の判断に常時通信を必要としない点だ。通信するのは、クラウドからオーダー(タスク)を受け取る時と、作業完了後に結果(実績)をフィードバックする時だけ。そのため、走行中の通信量が極めて少なく、強力な専用回線を必要としない。この仕組みこそが、理論上、台数や面積の制限なく拡張できる理由なのである。マップと交通ルールを設定しさえすれば、ロボットの台数も稼働面積も際限なく増やせるのだ。

さらに、シリウスジャパンはバーチャルのシミュレーションソフトも提供している。これにより、実際のオーダー量や倉庫レイアウトに合わせて、最適なAMRの台数と作業員の人数を事前にシミュレーションし、検証できるため、「ロボットありき」の計画立案がさらに容易になる。

▲AMRの台数と作業員の人数、出荷データを入力すると、バーチャル上でAMRと人の動きが再現され、その出荷効率が数値と動きから見て取れる

この技術的な優位性がもたらすのが、ビジネスの機会損失を防ぐ「驚異的な導入スピードと柔軟性」だ。「拠点の拡張速度に、ネット回線の敷設が間に合わないこともあった」(中村社長)。そんな時、STOCKCREWの現場では、なんとポケットWi-FiやスマートフォンのテザリングでAMRを動かしたというから驚きだ。前述の通り走行中の常時通信を必要としないため、大規模なネットワーク工事を待たずとも、まさに“その日から”稼働を開始できる。この常識破りの導入スピードが、「3日後に、新たに450坪で立ち上げたい」といったSTOCKCREWの要求に対応し、同社がサービスを提供し続けることを可能にした。

そして、これらの高度な仕組みを支えるのが、究極のシンプルさを体現した「誰でも使える操作性」である。EC物流の波動対応には、短期のスポットワーカーの力が不可欠だが、シリウスAMRの現場では、初めて来た作業員でも、わずか5-10分のレクチャーで即戦力になるという。作業員は、目の前に来たロボットの指示に従い、商品を取ってスキャンするだけ。広大な倉庫のどこに何があるかを覚える必要は一切ない。この「教えない」オペレーションが、教育コストを劇的に削減し、常に安定した高品質なサービスレベルを維持する基盤となっている。

数字が証明する、ChibaDockでの確かな導入効果

これらの優れた機能性がもたらす効果は、決して感覚的なものではない。「Chiba Dock」での運用実績として、明確な数字となって表れている。例えば、従来60人必要とされていたピッキング作業は、AMRの導入によって20人での運用が可能となり、実に66%もの作業者人数削減を達成した。これは単なる省人化に留まらず、確保できた人材を検品や梱包といった、より付加価値の高い業務へ配置転換することを可能にする。

生産性の向上も著しい。人手のみで作業していた場合と比較し、1時間あたりの処理行数は50%も向上。処理能力が1.5倍に飛躍することで、急な出荷増にも対応でき、顧客へのサービス品質向上に直結している。これらの効率化はコスト面にも大きなインパクトを与えた。人件費とロボット費用を合算した月間のオペレーションコストを20%以上も削減することに成功したのだ。

さらに見逃せないのが、作業環境の劇的な改善だ。AMRの導入により、作業員の1日あたりの平均歩数は、2万歩から6500歩へと65%以上も激減した。この劇的な歩数削減の理由は、そのオペレーションにある。従来の人海戦術では、作業者が広大な倉庫を歩き回りオーダーリストを片手に商品を探していた。しかし、シリウスAMRを導入した現場では、ロボットが出荷指示を受け取ると、自律的に棚へと移動し、その場で待機する。一方、作業員は決められた自分の担当エリア(ゾーン)から動く必要がない。次々と自分のゾーンにやってくるAMRの指示に従って商品をピッキングし、箱に入れるだけで作業が完了するのだ。

人が商品を探しに行くのではなく、AMRが人のもとへやってくる。この“歩かない”ピッキングが、作業者の身体的負担を大幅に軽減し、働きやすい職場環境の構築、ひいては従業員の定着率とオペレーション習熟度の向上という、さらなる好循環を生み出している。

成功の裏にある思想――「アウトオブボックス」とは何か?

Chiba Dockへの追加導入は、これらの確かな効果と機能性に対するSTOCKCREWからの厚い信頼の証だ。しかし、このサクセスストーリーの根底には、単なるスペック比較だけでは語れない、両社トップが共有するある“思想”が存在した。それは、シリウスジャパンが掲げる「アウトオブボックス」というコンセプトに集約されている。

なぜSTOCKCREWの中村社長は、その思想に強く共鳴したのか。そして、「アウトオブボックス」は、これからの物流の未来をどう変えていくのか。その答えは、同時公開の特別対談レポート(前後編)で明らかになる。

>>【特別対談・前編】STOCKCREWとシリウス両トップが語る躍進の原点

■特別対談の全編動画はこちら