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オートストア、処理能力を大幅改善する新ソフト発表

2020年10月27日 (火)

サービス・商品コンテナと自走ロボットを組み合わせた立体自動倉庫「オートストア」を開発・提供するオートストア(ノルウェー)は27日、既存の制御ソフトウエアをした場合と比べ、倉庫システム全体で最大4倍の処理能力を発揮するという新しいソフトウエア「ラウター」を日本市場向けに発表した。

▲オートストアの外観と内部構造

オートストアは、ジャングルジムのような立体格子状のフレームに、「ビン」と呼ばれるコンテナを保管し、自走ロボットが注文に応じてビンをピッキング作業者の手元に持ってくる仕組み。倉庫管理システム(WMS)と接続しているコントローラーが、演算システムを用いて注文ごとの最適経路を計算し、自走ロボットに指示を出す。

より大量の注文をより早く処理するには、ビンを増やしたり、ロボットを増やしたり、「ポート」と呼ばれるピッキング作業場を増やしたりすることが解決策となるが、従来の演算システムでは、ロボットの台数が増えて経路が複雑化するとオートストアのパフォーマンス低下を招くのが課題となっていた。これは、「使い込むほど処理能力が上がる」と言われるオートストアが、多くの物流現場で本格稼働し始め、「より多く」「より早く」を望む顧客のニーズが、従来のソフトウエアの想定を上回ったことの表れともいえる。

▲青線:従来の制御システム、緑線:ラウター(X軸:ロボット数、Y軸:1時間で処理するビン数)

そこで同社は、処理効率を落とさずに大量のロボットの最適経路を演算できる新ソフトウエア「ラウター」を開発。ロボットの導入数に比例して処理効率が上がり続ける高度なアルゴリズムを実装した。

これにより、160台のロボットが6万7000個のビンを22か所のポートに振り分けているある現場では、ラウターを導入しただけで、従来の制御システムと比べてピッキング作業者の待ち時間が62%減少。ロボット84台、ビン7万2500個、ポート35か所の現場では、待ち時間が40%減少した。

▲ロボット680台、ビン50万個、ポート83か所の巨大オートストアのイメージ

この事例だけを見ると、オートストアを大規模導入している物流センターだけにメリットがあるように思えるが、都市部の物流センターに導入するような小規模のオートストアにも大きなメリットがある。

▲ロボット28台、ビン1700個、ポート2か所の小規模オートストアのイメージ

「ラウター」は、最も効率的な経路を判断するだけでなく、オペレーション上で発生する変化を1秒ごとに分析して適応することで、新しい注文の受信や注文のキャンセル、ピッキング作業者の離席などの外部変化に柔軟に対応。最適なオペレーションを継続的に維持する。

これは、小規模導入拠点でも従来より効率的な運用が可能となることを意味しており、少ないスペース、少ないロボット台数でも従来と同じかそれ以上の処理能力を発揮できることを表す。省スペース・少数台数となれば、スペースが限られる都市部の物流センターでも導入可能となり、初期費用や保守費用を削減できる。

▲オートストア社のカールヨハンライアーCEO

発表会見でオートストアを「破壊的テクノロジー」と表現した同社のカールヨハンライアーCEOは、「新型コロナウイルス感染症によるパンデミックによって、小売やeコマース市場は大きな変化を遂げている。 ブラックフライデーとホリデーシーズンが近づく中、『ラウター』は、倉庫とマイクロフルフィルメントセンター(小規模物流センター)において必要不可欠な柔軟性と高速効率を提供する。われわれは、オートストアの開発の歴史において、ここ数年で最大の開発案件を製品化した」と、自信に満ちたコメントを発表。オートストア社はラウターを「あらゆる(規模・種類の)オートストアに実装できる革新的なテクノロジー」と表現している。