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楽天の小売店DX新会社が西友株取得、東急も提携か

2020年11月16日 (月)

M&A西友とネットスーパー事業で協業している楽天は16日、スーパーマーケットなどの小売店のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する新会社「楽天DXソリューション」を2021年1月に設立し、同社を通じて西友の株式20%を取得すると発表した。西友の100%親会社である米ウォルマートは、楽天の新会社に西友株式の20%、米投資ファンドに65%を譲渡し、残る15%を継続保有する。

新会社の「楽天DXソリューション」は、国内の小売事業者向けに実店舗のデジタル化や、オンライン・オンフラインの垣根を越えた購買体験の提供などを支援する会社で、こうしたDX支援によって今までにない店舗形態の創出を目指す。

具体的には、人工知能(AI)による需要予測を用いた在庫管理や価格設定の最適化、スマートフォンなどによる”レジ無し決済”の導入などを予定している。同社は今後、さまざまな事業パートナーと提携することを視野に入れており、既に東急と提携を検討しているという。

西友は、ウォルマートが100%親会社ではなくなるが、米投資ファンド、楽天、ウォルマートの3社が選出した経営陣が引き続きウォルマートのグローバル調達網などを活用しながら小売店舗のDX推進を強化する。

楽天は、既にネットスーパー事業で協業関係にある西友を皮切りに、東急などとも提携し、小売業界のDX推進へ影響力を強めていく方針。西友の株式取得については、21年1-3月期に完了する見通し。

似て非なるふたつの提携

前週末に掲載したライフコーポレーションとアマゾンの事例に並列扱いされがちな本発表だが、本質的に違うのではないだろうか。

ライフ・アマゾンの協業は、それぞれに唯我独尊を貫く強い売手同士によるものだ。
企業文化や価値観の違いが摩擦や不協調を生むことへの危惧は、内部者や外部者の誰もが想定や懸念しながらも、その先に起こる未知の化学反応への期待がマイナス要素を凌いでいる。衝突や先導争いでのぶつかり合いによって排出される熱が、やがて上昇気流と化して強烈な浮力に転じたら――という想像に胸躍る者は多いはずだ。

かたやで西友・楽天の組合せには、そこまでの温度上昇を感じない――おそらく似て非なるモノだという直感がよぎるからだろう。業績不振から脱却できない流浪のGMSが、米国製調剤薬でも快復できず、今度はECマート国内先駆者のコンサルティングとサポートを得て、再生を賭すというのが額面だろう。しかし、目的の主従は逆で、実は西友の再生よりも楽天の販売手法多角化が主となっている可能性も否めない。

本日午前に期間GDPの好転が発表された。その過半を占める個人消費の獲得戦争は、境界と競合の区分を消しつつ進行しているようだ。(企画編集委員・永田利紀)