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椿本マシナリー、物流エンジニアリング事業に参入へ

2021年8月27日 (金)

荷主椿本チエイングループの椿本マシナリー(大阪市西区)は26日、物流エンジニアリング事業に本格参入すると発表した。マテリアルハンドリング(マテハン)事業の領域を拡大し、自動搬送ロボット(AGV)の展開を加速する。物流現場の業務効率化に向けて導入が進むロボットの開発にも注力することで、物流関連機器の市場で存在感をさらに高める狙いだ。

▲センター内を自律走行する小型AGV(出所:椿本マシナリー)

椿本マシナリーがマテリアルハンドリング事業への本格参入の第一弾として開発したのが、AGV「T-Carry system」だ。AGVを走行させたい場所に専用シートを敷き、その上で稼働させる。複数のAGVが相互に連携することで、交錯せずに迅速に指定された目的地までモノを運ぶシステムだ。床面だけでなく架台や段状の場所でも使用可能で、自由なレイアウトが可能。AGV単体での取り外しが可能で、取り外しや追加が可能だ。稼働中の目的地の変更や複数のゴール地点の設定も可能だ。

椿本マシナリーの機械商社として培ってきた情報力や調達力・販売ネットワークと、椿本チエインが得意とするマテハン事業における技術力とのシナジー創出が狙い。物流現場の運用を熟知し、長期に渡ってお客様の課題を解決してきた専門技術者の豊富な知見により、メーカーの枠にとらわれない最適なソリューションを提供する。椿本マシナリーは、マテリアルハンドリング事業で2016年度に売上高30億円に成長させる計画だ。

また、マテリアルハンドリング事業を強化するための取り組みとして、パートナー企業との連携により、新たなアイデアや商品を開発する共創プラットフォームを実現するラボ施設を新設する予定だ。未来の物流の世界を体験できる仕様とする。

ロボットへの本格参入で生き残りを図る戦略

椿本チエイングループがマテリアルハンドリング事業の拡大に乗り出すのは、物流現場におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)化が本格的に加速する今後を見据えて、既存事業への依存から脱却しなければ物流関連機器の市場で存在感を高められないと判断したからだ。

(イメージ)

EC(電子商取引)を中心に物流センターの人出不足が課題となっており、現場では生産性向上、業務効率向上への自動化・省人化・スペース有効活用のニーズが高まっている。さらに、社会課題であるCO2削減のための省エネ対応などを含め、顧客ニーズも多様化している。椿本チエイングループは、ハードウェアに軸足を置いた事業展開だけでは、今後のDX化への対応は不十分と判断。AI(人工知能)やロボット技術の活用により、物流のハード・ソフト面のトータルコーディネーターとして、スピーディかつリーズナブルな商品・サービスを提供していく戦略に舵を切った。

とはいえ、AGVなど物流ロボット市場も、既に業界を超えたプレーヤーが参入し、まさに「群雄割拠」の状態だ。そもそもロボットの導入だけでは部分最適化はできても全体的に効率化することは困難だ。椿本チエイングループは、ロボットと既存技術の連携、またはロボットを含めた統括的なソリューションの開発に、他社との連携を含めて対応する必要があるだろう。(編集部・清水直樹)