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JR貨物、南福井駅を着発線荷役方式へ変更

2021年9月17日 (金)

ロジスティクス日本貨物鉄道(JR貨物)は17日、北陸新幹線の敦賀延伸開業に合わせて工事を進めていた北陸線南福井駅(福井県福井市)について「全国で31番目の着発線荷役(E&S方式)の設備を備える駅に変更」し、10月11日から新設備の一部使用を開始すると発表した。

入換作業の不要なE&S方式とすることで、リードタイムの短縮や輸送需要ヘの柔軟に対応できるようにする。また、停車列車を増やすことにより「貨物鉄道輸送の大動脈」とされる北陸線上の南福井駅の利用利便性を高める。

E&S方式(着発線荷役)は、コンテナを本線上の列車から積み卸しするもので、着発線上にコンテナホームがあり、列車が駅に到着した直後に荷役作業を開始し、終了次第そのまま発車できる。この方式の駅は全国に30駅あり、南福井駅で31駅目。駅構内の複雑な入換作業がなく、同社は「大幅なリードタイム短縮と省力化、輸送需要への柔軟な対応が可能」とE&S方式の優位性をアピール。

▲従来の駅とE&Sタイプの駅との違い(出所:JR貨物)

南福井駅は総面積5.6万平方メートルで、このうちコンテナホーム1.1万平方メートルの利用を先行して開始する。全面使用開始時のコンテナホームは1.7万平方メートルとなる。コンテナホームと荷役線は当面、1面1線で22両をE&S方式対応とし、今後1面2線の全面使用開始を目指す。

列車本数は1日につき上り3本・下り4本で、現行の上り2本・下り3本体制から増加する。取り扱う貨物量は2020年度実績で年間11.2万トン。同社は「今後も物流生産性の向上のために積極的にE&S方式を導入していく」方針を示している。

北陸地方における貨物輸送機能を強化する起爆剤に

JR貨物が南福井駅におけるE&S方式の導入は、北陸新幹線の金沢駅・敦賀駅延伸に伴う線路移設スペースの捻出策して浮上したものだった。しかしながら、北陸地方における鉄道貨物輸送の機能強化をいわば「抱き合わせ」で実施することは、意義深い取り組みであると言えるだろう。

南福井駅は、福井地区における鉄道貨物の拠点として機能してきた。福井県には大手メーカーや地場産業の製造拠点が立地し、日本海側の各地域としては貨物取扱量も比較的多い。さらに、関西圏と中部圏の両方のアクセスの良さから、今後も貨物輸送の拠点としてのポテンシャルも決して小さくない。

さらには、冬季の積雪という北陸地方ならではの課題もある。福井県は北陸自動車道や国道8号といった主要道路が貫通するが、雪による通行支障は長年の課題であり、いまだに解決されていない。今回の南福井駅におけるE&S方式の導入は、鉄道輸送が、道路輸送に依存しがちな地方における物流の主役を担えることを実証する好機になるはずだ。JR北陸線は、北陸新幹線の延伸による経営分離とともに、特急列車の運行がほぼなくなるとされており、線路容量の大幅な確保が可能になる。南福井駅の今回の改良が、鉄道貨物の可能性を示す起爆剤になることを期待する。(編集部・清水直樹)