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加勢グループ、年内にも沖縄で生鮮食品のEC開始

2022年5月27日 (金)

EC加勢(大阪市中央区)グループが2021年に沖縄県で始めたEC(電子商取引)と宅配の一貫事業が軌道に乗ってきた。糸満市の物流拠点「琉球FORCE PARK」を核に、独自のECサイトと小口配送網を組み合わせた事業で、本土に比べて送料が高く配達日数もかかるという沖縄ならではのハンデを克服しようと挑戦している。グループの「琉2加勢」(那覇市)は、年内にも生鮮食品のEC通販を県内で始める計画を明らかにした。

▲琉球FORCE PARK外観(画像は一部修正、出所:琉2加勢)

加勢グループは21年9月に物流施設「琉球FORCE PARK」(1万3400平方メートル)を開所し、軽トラック十数台で沖縄での宅配事業に参入した。「沖縄だからしょうがない」という消費者の“諦め感”の解消に挑み、同年10月に那覇市に新会社「琉2加勢」を設立。同施設を地域浸透型サービス物流拠点と位置付け、商品をより早く、安い送料で届けるプロジェクトを始めた。

独自の通販サイト「琉2マーケット」は、アパレルや家具、雑貨、食品など豊富な商品を扱う。物流業の強みを生かし、倉庫・配送一体型のEC運営をすることで、多くの県民が諦めていた「即日・翌日配送」を離島など一部を除いて実現、送料も本州並みに抑えることができた。加勢グループの全国ネットワークに加え、新たに海運会社と連携し、県外商品を短時間で輸送する体制を整えたことも奏功した。まだ大手EC事業者が本格参入していないなか、いち早く沖縄に進出したことで需要を押さえた面も大きい。

想定を上回る新型コロナウイルス禍の長期化で事業計画は多少の修正を強いられたが、消費者の好評を得て、琉2加勢は次のステップである生鮮品のEC通販の準備に入ったという。地元中堅スーパーチェーン「フレッシュプラザ・ユニオン」(沖縄県宜野湾市)から物流業務の受託に成功、それを足掛かりにスーパーで扱う青果をECサイトに加える作戦だ。店舗からではなくFORCE PARKから届けることで、県外産青果でも鮮度を落とさず迅速な配達が可能としている。

■琉2加勢の松野社長、「沖縄でも本土並みのECサービスを」

沖縄事業の陣頭に立つ琉2加勢の松野辰也社長は本誌のインタビューに応じ、生鮮食品のEC通販への意欲を語った。

――県外資本ですが沖縄でのEC通販を軌道に乗せました。要因をどう考えますか。

松野氏 我々は「沖縄だからしょうがない」と県民の多くが諦めていた送料や配達日数の部分に挑戦したことで、受け入れられたのだと思う。単なる配送業や倉庫業ではない独自の物流と商流をやろうという強い思いがそれを支えてきた。自治体から災害支援を受託するなど、地域社会に徐々に浸透できている。

――ECも宅配も本州大手や外資がライバルとなりますが。

松野氏 沖縄では外資系ECの進出はまだ本格化しておらず、当社が素早くサイトの浸透と配送網を構築できた。自社のドライバーが配送することで、消費者に直接会って要望を聞く「御用聞き」もでき、他社と差別化できている。

――生鮮食品のEC計画の見通しは。

松野氏 年内に始めたい。FORCE PARKは将来を見越して建設段階で冷蔵機能を備えている。加勢グループの本州でのノウハウを生かせば保管・配送は問題ない。さらに、冷凍食品を扱うために冷凍倉庫の新設も検討している。カット野菜・フルーツの加工場も設ける考えだ。

――業績や今後の課題をどう評価していますか。

松野氏 コロナ禍で当初想定を超える影響を受けたが、琉2加勢は売上高十数億円を確保したい。エリア的にも那覇中心の配達網を県中北部に広げることが課題となる。ただ、沖縄での経験は新たなシステム開発につながっており、グループ全体の企業価値向上に貢献している。

――沖縄経済についての思いをお聞かせ下さい。

松野氏 ビジネスは容易ではないが、沖縄も本土復帰50周年を迎え、大きな世代交代の時期にある。革新的な考えを持つ企業人も増えており、協力して地域社会に新たな価値を提供したい。