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ニトリが西日本の物流拠点に新たなロボットを導入する理由

2017年1月25日 (水)
物流ロボット普及加速へ岡村製作所とグラウンドが提携
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話題ニトリホールディングス傘下の物流会社・ホームロジスティクス(札幌市北区)は、関西の物流拠点「大阪DC」(大阪府茨木市)内に西日本をカバーする通販発送専門拠点として「西日本通販発送センター」を2月に稼働させる。プロロジスパーク茨木のスペースを利用し、自社2拠点目の通販物流拠点となる同センターでは、最新のインテリジェント無人搬送ロボット「バトラー」を10月に79台導入し、構内の物流作業で全面的に活用する計画だ。

同社が西日本通販発送センターにインテリジェント無人搬送ロボット「バトラー」の導入を決めたのは、長期化する人手不足への対応にある。昨年2月には川崎市東扇島地区にある東日本の物流拠点「通販発送センター」で、国内初の物流ロボット倉庫「オートストア」の導入を発表しており、同社の「人に優しい職場環境の実現」に向けた取り組みは一貫したものだといえよう。

オートストアは供給元の欧州企業と岡村製作所が販売契約を結び、岡村製作所から導入したもので、グリッド内に隙間なくコンテナを積み上げて収納する構造により、スタッカークレーン式自動倉庫の2分の1、平置き棚の3分の1の保管スペースで高密度保管とピッキング作業の大幅な効率化に取り組んだ。

オートストア

▲オートストア

では今回の西日本で、東日本拠点と異なるバトラーロボットの導入を決めたのはなぜか。バトラーロボットは無軌道で搬送することが可能だという特徴があるものの、ロボットが商品を作業者の元まで搬送してくるという点に大きな違いはない。

その理由について、ニトリホールディングスはLogistics Todayの取材に対し「取り扱うことができる荷物サイズの上限の違い」にあると説明する。

オートストアで取り扱い可能なサイズが60センチ×40センチ×30センチとなっているのに対し、バトラーは100センチ×100センチ×200センチまで、大小さまざまな荷姿の商品に対応できる。容積で比べると、バトラーが搬送できる荷物のサイズはオートストアの最大27.7倍に相当し、サイズの大きな「家具」というカテゴリーを取り扱うニトリにとって、この違いは無視できるレベルではない。

▲ニトリホールディングスの白井俊之社長

▲ニトリホールディングスの白井俊之社長(写真は2016年2月の記者発表時のもの)

ただ同社は必ずしもバトラーのほうが優れているという結論を下したわけではなく、「オートストアもバトラーも、ともに優れているという判断から導入を決めた」(ホームロジスティクス)としている。取り扱うことができるサイズ上限はバトラーに分があるものの、保管効率はオートストアが格段に優れている。

バトラーの導入はまだ先(2017年10月)であり、オートストアに対する同社の評価も「物流効率化で満足な成果を出している」という。

こうした状況だが、同社の物流拠点の省人化・自動化に対する同社の取り組みは、まだ途上にあるものだといえる。機器選定にはホームロジスティクスの松浦学社長だけでなく、親会社であるニトリホールディングスの白井俊之社長(ホームロジスティクス会長を兼務)が強く関与していることからも、ニトリグループとして物流拠点の省人化・自動化が経営戦略の重要なポジションを占めていることがわかる。

今回のバトラー導入では、白井社長、松浦社長ら同社グループの首脳・幹部が世界各国の無人搬送システムを視察し、最終的な導入の意思決定にも白井氏をはじめニトリホールディングスの役員が関わった。

▲ホームロジスティクスの松浦学社長

▲ホームロジスティクスの松浦学社長(写真は2016年2月の記者発表時のもの)

今後は東西2拠点となる通販発送拠点を拡大する可能性もあるなか、通販発送拠点で使用する自動化機器をオートストアかバトラーに統一していくことや、2機種以外の機器を採用することも「選択肢にある」という。多くの荷主企業や物流企業の間で無人搬送ロボットへの関心が高まっていることもあり、この先どう結論を出していくのか、「ニトリの選択」が注目される。(書き手=赤澤裕介)