
記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「Cuebus、自動物流道路実証で100メートル連続搬送」(3月9日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)
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ロジスティクス物流現場の自動化は、単なる省人化から「インフラ設計」へと視点を広げつつある。庫内搬送ではAGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)、 さらにピッキングまで自動化を広げた自動倉庫など多様なサービスが提案されているが、さらにもう一歩先の庫外領域とのシームレスなつながりが重要な論点となっている。
3月に東京で開催された「物流倉庫ロボティクス・オペレーション展 2026」に出展したCuebus(キューバス、東京都台東区)も、独自のアプローチで倉庫内自動化に挑む。リニアモーター技術を活用した立体自動倉庫ソリューション「CUEBUS」の先進性に加え、国の構想として議論が進む「自動物流道路」への実証にも参加しており、物流の未来像を体現する存在として関係者の関心を集めている。

▲「CUEBUS 75L」(出所:Cuebus)
会場で披露されたCUEBUSは、多層構造によって空間効率を極限まで高める設計が特長だ。従来の倉庫では十分に活用されていない天井空間を生かし、保管能力を大幅に引き上げることを狙う。
搬送の中核を担うのはタイルと呼ばれるリニアモーター駆動の床面、走行路部分である。ラックを載せた台車自体にはモーターもバッテリーもないため、故障リスクなくシンプルな運用を実現する。
台車サイズに合わせた多様なオリコンや段ボールなどマルチケースに対応し、形状を問わず搭載できる柔軟性を持つ。オリコンを重ねることで、製造ピース部品や消費財商品など幅広い業態で多品種の取り扱いに適用可能で、さらに2層、3層と、より高密度かつ商品へのアクセスもスムーズな保管環境も構築できる。また、複数台の連結で幅1500ミリのZハンガーラックを一体搬送することも可能で、アパレル現場での活用にも有効だ。

▲展示会場でデモ稼働するCUEBUS。床面のタイルを組み合わせて簡単に設置できる
設置に関してもアンカーレスで、モジュール化されたフレームを連結する要領で組み立てが可能である。需要に合わせて簡単に増設やレイアウト変更で、スモールスタートから段階的な拡張に対応し、成長投資に合わせた導入ができる点は中小企業にとっての運用ハードルを下げる機能だ。同社担当者は「動かない在庫を積み上げるための投資ではなく、取り出し頻度が高い商品を効率的に搬送・保管することが最大の価値になる」と語る。
また、AGVやAMRとの関係性についても「競合というより役割分担」との認識を示す。通路が不要な高密度保管領域はCUEBUS、広域搬送では自律搬送ロボットに載せ替えるといった、既存自動化設備と無理なく連携できる。
さらにCUEBUSは、オリコン単位ではなくパレット単位での搬送・保管への対応も進めており、パレット物流ベースのサプライチェーン最適化に向けた“次の一手”も用意する姿勢だ。
幹線物流の課題解決、その決定打としての進化に期待
こうした倉庫内ソリューション開発と並行して、同社が中期的なテーマとして取り組むのが自動物流道路の実証だ。国土交通省主導のプロジェクト「自動物流道路の実装に向けたコンソーシアム」では、リニア搬送技術を基盤とした輸送機構の検証に参加している。構想では、高速道路の中央分離帯や路側帯、地下トンネルなどに専用インフラを整備し、貨物を定時性の高い自動搬送で運ぶことが検討されている。
同社は、倉庫内で培った技術を幹線輸送へ応用する構想だ。「遅れない物流」「止まらない物流」を、幹線物流領域でも実現することが狙いとなる。
先に行われた国主導の実証実験では、専用インフラ上での自動搬送を想定し、リニアモーター駆動機器によるパレット輸送の定時性や安全性が検証された。重量1トン積載下や100メートル区間の連続搬送における安定走行が確認され、拠点間輸送を担う新たな物流手段としての可能性が確認されたという。政府は2030年代を視野に、自動物流専用道路の社会実装を段階的に検討しており、今回の検証はそのロードマップ上の技術評価の一環と位置づけられる。幹線輸送の一部を専用インフラへ移行することで、トラックドライバー不足や高速道路の渋滞緩和、CO2削減といった構造課題への対応も期待されている。

▲実証実験された搬送車(出所:Cuebus)
さらに、幹線輸送とラストワンマイル配送の役割構築も注目される。自動物流道路で拠点間輸送を担い、最終配送のトラックとどうスムーズにつなぐのか。幹線輸送の拠点到着時間の精度が高まれば、ドライバーの待機時間削減にもつながるなど、ただ長距離輸送工程を省人化するだけではなく、サプライチェーン全域をつなぐ最適化に貢献する。
専用インフラ整備や標準規格の確立など課題は多いが、物流業界が直面する人手不足や輸送力制約を踏まえれば、こうした中長期構想の重要性は増すばかりである。同社関係者は、まずは現場で確実に成果を出し、理解と信頼を広げていくことが最優先事項と語る。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)制御技術、WMS(倉庫管理システム)やWCS(倉庫制御システム)などとの連携技術を基盤にした自動化の実績を積み重ねることで、物流インフラそのものの革新、自動物流道路に接続する。庫内自動化から幹線輸送自動化へとシームレスに広がったネットワークが、目指すべきフィジカルインターネット構築の基盤となる。
物流の自動化は、もはや倉庫内の効率化にとどまる議論ではない。個別設備の導入競争を越え、輸送ネットワークそのものを再設計する段階に入りつつある。リニアモーター搬送という新たな技術軸を手にした同社の挑戦は、庫内作業の最適化から幹線輸送の革新へと射程を広げる。倉庫と道路を分けて考えてきた従来の物流モデルは、今まさに再編の局面にある。物流の主戦場は「現場」から「インフラ」へ、その転換はすでに始まっている。(大津鉄也)
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