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創業者アダムCEOが陣頭指揮、”スマホ系”AMRと成果コミットで1000台導入へ

RaaSは「結果」の時代に、シリウスAMRの新戦略

2026年3月17日 (火)

話題25年10月、自律走行搬送ロボット(AMR)を展開するシリウスジャパン(東京都中央区)の社長に、シリウスグループ創業者でグローバルCEOを務めるアダム・ジャン氏が就任した。これまで日本市場の開拓を力強く牽引してきたグレース前社長の退任に伴うトップ交代だが、急成長を遂げる中国発ロボット企業のトップ交代劇に対し、現場のユーザーの間には「日本市場に対するコミットメントが後退するのではないか」という一抹の不安がよぎったかもしれない。

しかし、その年の暮れ、本誌編集長との対談に応じたアダムCEOの素顔と、その口から語られた事業戦略はその不安を払拭するものだった。創業者自ら日本法人の陣頭指揮を執るという決断は、シリウスにとって日本市場が「絶対に揺るがない最重要拠点」であることの証明だった。

>>【特別連載(2)】”スマホ系”AMRは「2枚の絵」から始まった

日本国籍を持つ創業者、冷静なROI分析とコストダウン

中国発のグローバル企業を率いるアダム氏だが、そのキャリアの基盤は日本にある。中国・西安でコンピューターサイエンスを学んだ後、たまたま見かけた求人情報から日本企業の面接を受けたことを機に来日。10年以上にわたり日本に滞在し、NVIDIA JAPAN(エヌビディアジャパン)でソフトウェア開発などに従事した経歴を持つ。

▲シリウスグループ創業者で日本法人代表も兼任するアダム・ジャンCEO

「日本に10年以上滞在して、大学卒業後もずっと日本にいました。その時に日本の国籍も取りました。パスポートは日本のものです」

流暢な日本語でそう語るアダム氏は、日本のビジネス文化や商習慣を自らの肌感覚として深く理解している。同氏が18年に中国でシリウスロボティクスを創業した際、当初から注視していたのが「投資対効果(ROI)」という観点での市場選定だった。

「創業当時、中国は倉庫内の人件費が安く、AMRを導入しても費用対効果が出にくい状況でした。一方、日本は中国の現場に比べて人手不足が進行し、人件費も高い。自動倉庫は初期投資が大きく高リスクだが、AMRであればスモールスタートが可能で、導入して様子を見ながら増やすことができる。そう分析し、19年から日本市場に注力することを決定しました」

現場の投資対効果を最優先に据えるシリウスの戦略は、スモールスタートできることも相まって日本市場にマッチし、これまでに世界で4000台、日本国内でも600台のAMR導入を実現した。さらに、26年には小型・中型・大型あわせて4200台(うち小型が2000台)の生産計画を立てているという。

「台数を増やすことでハードウェアのコストは下がり、毎年12%のコストダウンを実現し続けています。日本での販売価格は当初250万円でしたが、現在は200万円前後に下げ、従来のリース料金も月額10万円から8万円に改定しました」と、アダム氏はさらなる普及への自信を覗かせる。

▲EC倉庫を縦横無尽に駆け回るシリウスの小型AMR「FlexSwift」

「スマホ」のように進化するAMR、多用途展開が1000台の原動力へ

コストダウンに加えて、26年の日本市場における最大の起爆剤となるのが、ハードとソフトの両面から進む「多種・多用途展開」だ。

これまでシリウスが日本市場で展開してきた600台のAMRは、ほぼすべてが小型モデルの「FlexSwift」(フレックススウィフト)で、その主な用途はピッキングアシストだった。しかし、対談の中でアダム氏は「ことしの春までに中型AMRを投入します。これで小型、中型、大型の3種類体制になる」と明言。可搬重量や通路幅の要件に合わせて、現場に最適なハードウェアを選択できるようになるという。


▲(左)可搬重量600キロの「FlexPorter GO」(右)同1000キロの「FlexPorter DO」

シリウスの真骨頂はハードウェアの拡充だけではない。「シリウスのAMRは、スマートフォンのようなもの」とアダム氏が語る通り、同社のロボットは「ソフトウェア定義型」であることが最大の特徴だ。

「同じロボットであっても、新しいソフトウェア(アプリ)をインストールすれば、まったく新しい機能をつけることが可能になります。例えば、主に小型機のFlexSwiftで使われている『SpeedPicker(スピードピッカー)』を入れればピッキングアシストに、『GoodsKeeper(グッズキーパー)』を入れれば棚入れ作業に、そして『PonyRunner(ポニーランナー)』というアプリを入れればA地点からB地点への定点搬送に対応できるようになります」

▲「FlexPorter」シリーズは、ピッキング、定点搬送、棚入れのそれぞれにニーズがある

従来のロボット導入では、ピッキング用、搬送用と、用途ごとに異なる仕様のロボットを設計・購入する必要があった。しかしシリウスのAMRであれば、標準化された機体をそのままに、アプリを追加するだけで「あるときは棚入れ、あるときはピッキング、あるときは出荷場への定点搬送」といった多用途な使い回しが可能になるのだ。

この「ハードウェアの拡張(小型・中型・大型の3種展開)」と「ソフトウェアによる多用途展開(アプリ追加)」という強力な両輪こそが、シリウスが26年に掲げる「日本市場での導入1000台」を達成するための原動力だ。販売代理店との連携も強化し、ピッキング現場だけでなく、製造業の工場内搬送など、新たな領域への進出も本格化させていく構えだ。

「結果」にコミットする前代未聞の新サービス

低価格化と多用途展開によって現場の自動化を加速させる一方で、アダム氏は対談の終盤、業界の常識を根底から覆す新たなサービスモデルの提供を明らかにした。それが、「Result(リザルト)as a Service」だ。

「これまで『RaaS』といえばRobotics(ロボティクス) as a Serviceでしたが、これからはRが変わります。本当に結果が出たら課金します、という意味の『Result as a Service』です」

この新サービスは、人材派遣会社と強力なタッグを組み、「人」+「AMR」+「群制御システム」の3つをすべて統合したパッケージとして提供し、ECフルフィルメントセンターなどのオペレーションそのものを代行するという究極のソリューションだ。

最大の特徴は、事前に設定した「結果(パフォーマンス)」に基づいて課金を行う点にある。ロボットという機体を貸し出すのではなく、現場の生産性向上という成果そのものを提供するビジネスモデルだ。

「評価基準をきちんと契約で明確化します。もし本当に結果が出なかったら、課金するのは難しくなりますね」と、アダム氏は成果が出ない場合のリスクを自社で負う覚悟を明かした。この成果コミット型のモデルは、多様なアプリで現場のあらゆる作業をカバーし、現場の作業員とロボットの協働を最適化する「群制御システム」の能力に対する、絶対的な自信の表れでもある。

では、成果にコミットできるだけの絶対的な自信を裏付ける、シリウスの群制御システムやロボット開発の根底にはどのような歴史があるのか。次回は、アダム氏がスーパーコンピューター「40万元」と「2枚の手描きの絵」からスタートさせた、シリウスの泥臭い創業の軌跡と「ソフトウェア至上主義」の哲学について詳報する。

>>【特別連載(2)】”スマホ系”AMRは「2枚の絵」から始まった

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