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運輸・郵便、景況感やや改善も価格マイナスに転じる

2020年10月2日 (金)

調査・データ日本銀行が2日公表した9月の短観(調査全容)によると、運輸・郵便業の景況感を表す9月の業況判断指数(DI)はマイナス42で、6月から1ポイント改善した。12月までの見通しはマイナス37と9月から5ポイントの改善が予測されているが、これまで3四半期連続で実績が予測を大きく下回る結果となっており、先行きは不透明だ。

この調査は、日本銀行が全国9537社を対象に実施し、8月27日から9月30日までの間に回答を得たもので、貨物運送・旅客運送・倉庫・運送付帯サービス業などが含まれる運輸・郵便業では、およそ600社から回答があった。業況DIは、業況が「良い」と回答した割合から「悪い」の割合を差し引いたもの。

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■12月改善見込むも大企業ほど予実かい離大きい

運輸・郵便業の業況DIの推移を企業規模別にみると、大企業は9月の実績がマイナス38と、6月から5ポイント改善。12月までの見通しはマイナス24となっており、10ポイント以上の改善が見込まれるが、6月調査では実績値が予測値を32ポイント下回り、足元でも15ポイントの開きがあることを踏まえると、必ずしも改善に向かうとは言い難い状況となっている。

中堅企業は、9月の実績がマイナス44で、こちらも6月から4ポイントの改善。マイナス幅は大企業より大きく、悲観的な見方が強いものの、9月は予測値との開きが少なく、12月は1ポイントの改善が予測されている。

一方、中小企業は9月の実績がマイナス41と、マイナス幅は中堅企業より少ないものの、6月から3ポイントの悪化。12月は2ポイントの改善を見込む。

■供給過剰感強まり雇用・価格に影響

「需要超過」の割合から「供給超過」の割合を差し引く需給DIでは、運輸・郵便業の9月実績がマイナス38となり、6月から2ポイント悪化。ことし3月以降、3四半期連続で供給過剰感が強まっている。規模別では、大企業より中堅・中小企業の方が高い供給過剰感を示しているが、12月はいずれも数ポイントの改善を見込む。

こうした需給バランスを受けて、運輸・郵便業の人手不足感は6月以降大幅に緩和。人員「過剰」の割合から「不足」の割合を差し引く雇用人員DIは、ことし3月までマイナス50以下だったが、6月にマイナス20、足元の9月はマイナス21となった。中小企業ほど人手不足感が強い傾向は変わっていない。

6月からプラス(人員過剰)に転じた製造業と比較すると足元の人手不足感は強いものの、その数値は非製造業の平均に近い値となっており、12月もこの状態が続くことが予想される。

運輸・郵便業では運賃や保管料などを指す「販売価格」の動向は、「上昇」から「下落」の割合を差し引く販売価格DIがこの2年間で初めてマイナスに転じ、マイナス3となった。特に中小企業ほどDIの下落幅が大きく、急速な価格下落を感じているものとみられる。

12月は、「上昇」とみる割合が優勢なのが大企業で、「下落」とみる割合が優勢なのが中堅・中小企業という構図になっている。

■大企業・中堅ほど資金繰り苦しく

資金繰りが「楽である」から「苦しい」の割合を差し引いた9月の資金繰りDIはマイナス6と、6月から1ポイント改善したが、依然として厳しい状況がうかがえる。大企業と中堅企業はマイナス10で、大企業は6月から2ポイントの悪化、中堅企業は横ばいという結果だった。中小企業はマイナス1で、6月から4ポイント改善している。

金融機関の貸出態度が「緩い」と感じている企業が優勢な中、企業規模が大きくなるほど「厳しい」と感じる割合が多くなっていることが影響しているものとみられる。