ロジスティクス三井倉庫ホールディングスは17日、傘下の三井倉庫ロジスティクスがGMOシステムコンサルティング、シナブルと協業し、中規模以上のECサイトの構築から物流・販促までのサポートをセットにした「クラウドECパッケージサービスのバリューセット」の提供を開始すると発表した。
GMOシステムコンサルティングがECサイトの構築、シナブルが販促コンサルティングを受け持ち、三井倉庫ロジスティクスはECサイトの基幹システムと連携する倉庫管理システムを提供するとともに、仕入れから納入までのロジスティクスの設計、サプライチェーン企画戦略の立案、パッケージング(包装設計)ソリューションの提供を担う。顧客の現行物流業務を分析し、改善を支援することで物流のデジタルシフトも進める。
新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、国内ではEC市場が拡大を続けており、これに比例する形で物流需要も高い水準で推移している。物流業界では中小規模のEC事業者が物流業務を外注化しやすくするためのサービスが増えつつあり、大手物流企業でもこうした需要の変化を捉えてEC向けの物流スペースや配送手段を整えるとともに、オンラインで業務を受注して営業コストを引き下げられる動きが目立ってきた。
三井倉庫ロジスティクスがGMOシステムコンサルティングなどと組み、EC事業者向けのシステム構築、物流業務、販売促進をセットにした協業体制を打ち出したのもこうした物流需要の取り込みを図る意図があるとみられる。今後、大手物流企業とITシステムベンダーなどの異業種タッグが進むことで、物流現場のロボット化やサプライチェーンの効率化を促す動きにもつながりそうだ。
倉庫業者がECビジネスに関与するメリットは決して小さくない
ECビジネスを効率よく動かすための秘訣として、倉庫業務をいかに的確に管理するかが問われているという。三井倉庫ロジスティクスが、ECサイト関連サービス事業に参入する今回の動きは、まさにこうした事情を色濃く反映した取り組みと言えるだろう。
倉庫業界は、急速なECサービスの浸透を背景に、ビジネスモデルの変革を迫られている。従来の「倉庫」ビジネスから脱却し、荷物を保管するだけでなく「動かす」スキルが求められるようになったのだ。取り扱う荷物に対して、いかに付加価値を上乗せできるかが、生き残りをかけた優勝劣敗を決める分水嶺となっているのが実情だ。
裏を返せば、倉庫業者がECビジネスに参画する意義は決して小さくない。なぜなら、サプライチェーンの一角を担う倉庫は、物流全体の情報が集まる立場にあるからだ。物流全体の流れのなかで、いわゆる情報の「交差点」に位置している倉庫は、サプライチェーンの全体像を少なくとも広く把握できるわけだ。ECサービスにおける課題や解決法を探るうえで、倉庫の果たす役割は決して見逃せない。その意味で、今回三井ロジスティクスが協業に動いた意義は大きい。さらなる拡大が確実なECビジネスにおけるサプライチェーンの的確な運営において、大きな使命を担うことになりそうだ。(編集部・清水直樹)