行政・団体国土交通省は4月18日付で、一般貨物自動車運送事業者が営業所ごとに確保すべき最低車両数(原則5両)を下回る、いわゆる「5両割れ」状態となった場合の「事業計画に従い業務を行うべき命令」の発動基準を明確化する通達を全国の地方運輸局などに出した。これを受け中国運輸局は5月1日、「厳正に対処する」方針を表明。違反を繰り返す事業者には、最終的に事業許可の取り消し処分も行うことを明確にした。
国交省が定めた新たな基準は、貨物自動車運送事業法第8条第2項に基づく「事業計画に従い業務を行うべき命令」について、その発動要件を具体的に示したものだ。地方貨物自動車運送適正化事業実施機関による巡回指導や、運輸局などによる監査の結果、事業計画に反して営業所に配置されている車両数が5両未満であることが確認された場合などに命令を発動する。これまでは、車両数不足に対する指導や行政処分はその他の監査項目と合わせて適宜行われてきたが、明確な命令発動基準が定められていなかった。
今回の公示では、命令発動後のフローも明らかになった。命令を受けた事業者は、原則3か月以内に車両数を事業計画通りに是正し、改善報告を行うとともに、必要に応じて事業計画の変更認可申請などを行わなければならない。期間内に改善報告や必要な申請が行われない場合、または申請が認可されなかった場合は「命令違反」とみなされる。この場合、行政処分基準に基づき行政処分を実施するとともに、併せて再度、「事業計画に従い業務を行うべき命令」を発動する。
そして、この2回目の命令にも従わなかった場合には、行政処分基準に従い、最終的に事業許可の取り消し処分を行うこととした。

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国交省が今回、5両割れ事業者への対応を強化する背景には、物流業界を取り巻く厳しい環境がある。中国運輸局は、「計画の内容に反した状態で事業を行う者が存在し、それらは交通事故防止に向けた安全義務違反やトラックドライバーの健全な労働環境の維持をおろそかにし、悪質な法令違反を犯している可能性もある」と指摘。主にトラックの輸送力低下が懸念される「物流2024年問題」への対応として、こうした悪質な事業者を排除し、トラック事業の適正化と公正な競争環境の維持を図る必要があると言及した。同局は、「本件や取引の適正化などを通じて、持続的な物流体系の構築に引き続き取り組んでいく」としており、今回の措置が、コンプライアンスを順守し、安全確保や労働環境改善に真摯に取り組む事業者が正当に評価される環境整備の一環であることを示唆している。
今回の命令発動基準の明確化と厳格な手続きの導入は、これまで一部で問題視されてきた「名義貸し」のような事業実態のない事業者や、安全管理体制が不十分な事業者の淘汰につながる可能性がある。業界全体の健全化と、持続可能な物流ネットワークの維持に向け、今後の運用状況が注目される。
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