
▲次世代Skypodシステム。搬送ロボットが小型化、ラック下の走行も可能となり、保管効率と搬送速度が向上
話題Exotec(エグゾテック、フランス)によるSkypod(スカイポッド)の次世代機公開は、物流業界の大きな注目を集めた。その理由の1つは、現在運用されているSkypodが、決して時代遅れのシステムではなく、今も物流の最先端を支えているからにほかならない。「すべてのSKUに2分以内にアクセス可能な機動力」「機能拡張の柔軟性」など、EC(電子商取引)、アパレル、食料品から卸、小売、製造業、3PLなどあらゆるユーザーの物流現場で、今もまさにフル稼働でその真価を発揮している。
このタイミングでの次世代Skypodの投入は、勇気のいる挑戦ではないだろうか。
Exotec Nihon(東京都港区)のアジアパシフィック地域社長である立脇竜氏は、「次世代Skypodは、これまでの機能を引き継ぎつつ、物流をプロフィットセンター化するための進化を遂げた」と、次世代機投入に絶対の自信を見せる。立脇氏がサプライチェーンのゲームチェンジャーと位置付ける次世代システムの機能とは、それによって日本の物流をどう変えていくのか、立脇氏に話を聞いた。

▲Exotec Nihon代表取締役アジアパシフィック地域社長の立脇竜氏
バッファー、順立て、ピック&パックなどSC効率化の新機能へ「進化」
次世代Skypodに実装された主要な新機能は3つ。1つ目は、注文処理済みのコンテナをシステム内で一時保管できる「バッファー機能」を備えたことである。ピッキング・仕分け処理済みのコンテナをシステム内で管理し、効率的な出荷タイミングに合わせて出荷工程に移行させる。大型ソーターやコンベア、荷合わせのスペースを削減して、庫内空間や運用効率の最適化を実現する。
2つ目は、配送ルートや店舗納品時の棚配置を考慮し、出荷コンテナを最適な順序で準備できる「順立て機能」だ。トラックへの積み込みや配送ルートに配慮した順序管理や、商品の重さや形状に基づいたピッキングの順番指定なども可能で、箱に納める順番、箱を出す順番を最適化する。
3つ目は、搬送ロボットが人の作業ステーションに商品を届けるタイミングと合わせて、その商品に適した出荷箱(段ボール箱やオリコン)を同時に搬送し、1回のステーション作業で、梱包工程まで完了させる「ピック&パック機能」。ラック内に商品だけではなく出荷箱も保管することで、商品に応じた適切なサイズ、色の出荷箱を梱包品と同時搬送してピッキングと梱包作業を一元化、作業工程や時間を大幅に削減できる。

▲ピック&パック機能運用イメージ。最適サイズの段ボールが自動搬送される
これら新機能は、これまでの保管とピッキング、仕分け作業の高速化・効率化の領域を超えて、ピッキング後の中間荷合わせや、梱包、バッファー管理まで効率化し、さらには、配送や最終納品の領域に至るまでの最適化を見据えた「進化」といえる。
常に一歩先へ、Skypodの先進性が見据えるSC改革
ピッキングと搬送を担うロボットが、床面だけではなく保管ラックを自ら上下するSkypodの3D走行システムは、保管効率の高さ、ピッキングスピードが評価され、多くのシステムが追随した。立脇氏は「それだけ、私たちの方向性が認められた証拠」と語り、次世代システムの新機能はさらにそこから先の領域に踏み込むものだ。立脇氏は、「倉庫を事業成長の基盤にするため、ただ庫内だけではなく、配送領域や納品工程の生産性も高めて物流に付加価値を生むための進化を遂げた」と語る。
次世代Skypodのソフトウエアも、ただ庫内作業に特化したロボット制御だけではなく、サプライチェーン連携の効率を高めるWES(倉庫運用管理システム)として機能を高めた。立脇氏は「いくら庫内だけスピードアップしても、バース部分や配送部分、棚入れで停滞しては、物流改革には至らない。順立て機能など倉庫作業から後工程へと滑らかにつながり、ハードとソフト両面の進化で、事業成長を支えるのがSkypodの役割」と語る。さらに、Skypodが中心となって、AI(人工知能)ルーティングや動態管理システムなどと連携することで、より生産性の高いサプライチェーン全域の改革が実現するはずだ。立脇氏は「連携はオープン」と語り、すでに多くのソリューションベンダーと次の一手を検証していることも明かす。
「EC時代の申し子」Skypodだからできる、オムニチャネルの対応力
Skypodは、すでにEC物流が定着した時代背景に生まれた「EC時代の申し子」だからこそ、EC運用を前提とした企業成長を支え、オムニチャネル化する物流パフォーマンスを最大限まで引き上げることを目指している。ピック&パック機能は、EC業務における出荷箱の選定工程も削減した。出荷箱同様に、店舗配送用のオリコンもピッキング&パッキングすることができ、「BtoBもBtoCも1つのシステム内で完結し、どのようなバランスでも変わらないパフォーマンスを提供する」(立脇氏)ことも、Skypodならではの機能だ。
庫内からサプライチェーンを最適化-Skypodによる価値創出
Exotecは、ソリューションベンダーにとどまらず、もはや「サプライチェーンのアドバイザー」だといえる。庫内の効率化相談に対して、積載率の改善や最適ルート選定を問題提起して、サプライチェーンとしての最適解を導くことを重視している。そのため、庫内だけの運用を考える事業者を戸惑わせることもあるという。それでも、今後自動化を検討する事業者には、「せっかくの投資ならば、今顕在化している課題だけではなく、より広く、より先を見て、変化に備えた自動化が大切」と訴える。こうした姿勢こそがSkypodの進化の推進力となっているのだ。
CLO(物流統括管理者)体制によって物流戦略も大きく変化する。これまで不十分だった庫内と周辺領域をつなぐ切り札として、さらに共同配送などより高度なオペレーションの構築に向けて、次世代SkypodシステムとExotecの姿勢は、サプライチェーンを俯瞰するCLOにとっての心強い味方となるだろう。