環境・CSR大阪市此花区の人工島・舞洲の日立物流西日本でおきた倉庫火災を受け、全国にさまざまな倉庫をかかえる物流各社では、防火対策を急ピッチで見直す動きがみられている。外部の専門家をまじえた診断チームを結成して防火対策のチェックを強化したり、より耐火性の強い資材への置き換えを検討するなど、さまざまな観点からの見直しがおこなわれている。
全国に約300ほどの倉庫を管理・運営しているある都内の総合物流会社では、防火体制にまつわる外部の専門家を含めた診断チームを結成した。
これまで倉庫の防火対策については従来から設けていた「防火対策チェックシート」にもとづき、収容品や電気設備、フォークリフト充電、暖房器具、喫煙管理、消防計画、防火設備、防犯対策などといった分類による計65項目について、倉庫の責任者が点検し、月1回の提出をおこなっていた。
だが、今回の大規模な倉庫火災を受け、これまでの形式的チェックを求めるだけでなく、電気管理などに詳しい外部の専門家をまじえて、漏電や配電周りといった専門的な観点でのチェックを強化していくこととした。火災リスクの高い築年数の古い倉庫から取り組む。各部署から防火対策の責任者も選出し、対応にあたる方針だ。
物流会社のコンサルティングを手がける都内の企業には、火災直後から、新たな防火体制の構築に向けた相談が、相次いで寄せられているという。
今回の火災では、開口部が少なかったり、消防突入口の数が限られていたりといった、倉庫という建物の特性が浮き彫りとなった。燃え広がったのが段ボール製のパレットだったこともあり、より耐火性の強い資材への置き換えや、防火安全システムの構築に向けて、企業と検討を始めているという。
防火対策は、取り返しがつかない最悪の想定に立ち向かう難題だ
今回の大規模な火災を受けて、倉庫物流の関係者たちの、防火対策への危機意識が強まっている。
防火対策への取材を通して印象的だったのは、倉庫の構造的な問題があるなかで、基準を満たす防火体制が仮にとれていたとしても「とはいえ、いちど火がついてしまったら、もうなにもかも同じじゃない?そうなったら、どんなにお客様の大切な荷物を自分たちが責任を持って預かっていたとしても、そこで働く人の命を守ることのほうが大事になる」という物流倉庫の営業担当者との雑談で、なにげなく聞いたせりふだった。
それだけ一度、引火の原因になる出来事が起こってしまったら、命や財産などすべてを失ってしまう取り返しのつかないことになる今回の倉庫火災の影響の甚大さや、だからこそよりいっそうの防火体制について、会社として本気で取り組んでいかなければ二度目は絶対にないという危機感が伝わってきた。
品質管理を手がける別の担当者のもとにも現場から「倉庫火災が起きてから、夜も眠れない。もし今回のようなことがうちにもおきたら、どうやって荷物を守ればいいのか」という声が複数寄せられたことから、防火対策に向けての取り組みを急ピッチで始めることにしたという。
今回の火災以前にも、大規模な倉庫火災は起きている。何かが起きないと変わらないというのはとても皮肉なことだが、それでも取り返しのつかない最悪の想定を、どうしたら最小限に食い止められるかという難題に、策をこらしている。(編集部・今川友美)