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大学生「物流企業名知らず」47%、認知度1位はヤマト

2022年12月13日 (火)

(イメージ)

調査・データ新卒採用支援を手掛けるインタツアー(東京都港区)が13日発表した「業界別イメージ調査 物流業界編」によると、現役大学生に「物流業界で思い浮かべる企業名」を尋ねたところ、47.0%が「分からない」と回答したことが明らかになった。同社は、大学生が物流業界に対して比較的良好なイメージを抱いているのに対して「実際に仕事を担う企業には関心が低いことが伺える」と結果を分析している。

「物流業界で知っている企業名」に関する質問では、学生に3社を挙げてもらった。一番多かった「分からない」の回答を除けば、1位ヤマト運輸が36.7%、2位佐川急便(SGホールディングス)が24.5%と健闘した一方、日本通運(NXグループ)は10.1%、日本郵船は5.4%と振るわなかった。

物流業界のプラスイメージを尋ねたところ、「社会貢献度が高い」が35.4%でトップ。新型コロナウイルス禍で物流ニーズが高まり、社会インフラとして認知が高まった影響とみられる。また「安定している」が24.3%、「グローバル化が進んでいる」が20.0%と続いた。このほか、自由回答では「高収入が望める」「自分で時間を管理できる」といった稼げる仕事のイメージも強い傾向が見られた。

一方で、物流業界のマイナスイメージとしては「作業的」が39.7%と最も多かった。検品やピッキングといった単純作業を繰り返す庫内業務についてイメージしている様子が伺えた。転勤やワークライフバランス、給料の低さといった待遇や働き方に関するネガティブな印象も目立った。自由回答では体力面や長時間労働を不安視する声が聞かれたほか、業界の将来性や人手不足に言及する学生も一定数いた。

具体的な仕事のイメージに関しては「ものを運ぶ」が50.5%と最多となったが、他業界と比べて具体的な仕事についての記述が少ない傾向が目立った。物流企業への選考意思の有無は「受けるつもりはない」が74.8%と4分3近くを占め、関心度や志望度の低さが際立つ結果となった。

物流業界の志望者(25.2%)のうち他の志望業界を尋ねたところ、最多はメーカーで45.6%で、商社(総合)が26.6%、IT・ソフトウエア・情報処理が22.4%が続いた。

調査はインターネットとSNSを通じて、ことし9月13〜20日に実施。2023〜26年に卒業する大学生1万4723人のうち941人から回答を得た。

当たり前に存在する物流、その担い手の発掘に必要なのは「使命」「貢献」を語ることだ

「物流は『空気』のような存在と思われている。そこからの脱却が人手不足の第一歩だ」。ある運送会社の社長がふと、こう漏らした。物流という仕事が空気のような存在であることと、人手不足の解決。この2つの事象を結びつける概念とは何か――。それを示してくれたのが、今回のインタツアーの調査結果だ。

(イメージ)

あらゆる産業活動のベースとなっている物流。新型コロナウイルス感染拡大も契機としたEC(電子商取引)サービスの浸透は、社会に欠かせないインフラとしての認知を着実に広げるきっかけになった。「クロネコヤマト」や「飛脚」の例を挙げるまでもなく、無数の物流事業者が輸配送車両を全国を巡らせているのだ。

工場や産地から遠く離れた店舗で商品を購入する、さらにはスマートフォンやパソコンで自宅にいながらお気に入りの品物を買う――。通勤や通学で利用する鉄道やバスのように、「当たり前」のごとく存在している物流。それだけ社会活動に欠かせない存在として成熟している仕事なのだが、それゆえにむしろその存在自体が見えにくくなってしまっている。

それが物流業界の立場だとすれば、なんという皮肉であろうか。それゆえに社会人を目指す学生の志望業種になかなか浮上してこない実情たるや、もはや悲惨と言うほかない事態だ。

空気のように存在する対象を「色付け」するにはどうすればよいだろうか。将来の業界を担う学生をはじめとする若手の人材を呼び込むことを目的とするアクションを考えるならば、賃金や福利厚生など優位性のある条件面をどんどん提示すればよいのだろう。しかし、こうした手法で将来の有望人材が集まるとはとても思えない。そこには、持続的に働き続ける職場としてのイメージを描けないからだ。

いわゆる「Z世代」の特徴のひとつに、社会への貢献を実感できる仕事を選択する傾向があるという。経済のグローバル化が加速する一方で少子高齢化が進み、雇用形態の多様化が広がるなかで、あたかも空気のように存在する物流の仕事に価値を見い出すには、今の物流の担い手がその「使命」「貢献」を明確に語らなければならない。冒頭の問いの答えは、まさにそれだ。(編集部・清水直樹)

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LOGISTICS TODAY編集部
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