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パレット・共同輸送など、JPRがつなぐ物流と企業

2024年9月6日 (金)

話題日本パレットレンタル(JPR)は、長年にわたり「パレットの標準化」「一貫パレチゼーション」の普及に取り組むことで「ドライバーの重労働からの解消」「運送・荷役の効率化」「人手不足への対応」など2024年問題への貢献、サプライチェーンの最適化を目指した事業を展開してきた。レンタルパレットを主力事業としながら、物流の各工程をつなぐ、企業間をつなぐことにこだわり、多様なソリューションによる物流効率化を主導してきた。

8月22日に開催したオンラインイベント「JPRウェビナー2024 SUMMER」は、そんなJPRの提供するソリューションを5つのセッションで紹介する、意欲的なセミナーとなった。

日本国内から海外、他社連携まで、パレットによる物流改善さらに推進

まず最初のセッションで紹介されたのは、レンタルパレット事業と、パレット標準化の普及である。

▲PT-11型パレット

同社のPT-11型パレットは9割以上を占める主力商品であり、自動倉庫への格納やRFIDタグ管理に対応して効率的なパレット輸送に必要な仕様を備える。先般、物流の効率化を目指す「官民物流標準化懇談会・パレット標準化推進分科会」においては、「標準型パレット」の規格として11型が、また、運用としてレンタル方式を採用することが最終的にとりまとめられ、レンタルパレットの活用拡大を推進していくことが求められている。

こうしたパレット標準化の動きを先導し、標準型のパレットを提供するだけではなく、共同回収システムの構築と運用による、パレットの共同利用、循環利用に貢献しているのがJPRだ。物流の各つなぎ目をよりスムーズに連携させ、サプライチェーン全領域の効率化を実現、回収にかかる負荷をなくすことで、より多くのユーザーが利用しやすく、限られたアセットを「共同」で有効に活用する取り組みを先導している。

▲共同回収システムの概要

「共同」の取り組みによる効率化は、自社提供システム内だけにとどまらない。レンタルパレット事業のライバルでもあるユーピーアールとは、両社共通のサービス基盤「X-Rentalオープンプラットフォーム」(XROP、クロップ)を共同運用し、レンタルパレット利用しやすい環境を作り、業界全体での効率化へと連携拡大にも取り組む。

こうした「共同」の概念を基盤にした物流革新を進めるためにJPRが整備したのが、年間5000万枚のパレット出庫、検品、洗浄、メンテナンスの拠点となる全国58か所のデポである。他社の5倍におよぶ大量のパレットの供給と管理のために、画像認識技術による自動選別機やAGF(無人フォークリフト)の導入など、デポ機能の自動化・効率化も進める。

これまで、パレットの運送利用が進まなかった背景には、バラ積みに比べて積載効率が下がることや、パレット回収作業にかかる負荷の大きさなどが要因となっていた。JPRは共同回収システムの構築で回収の負荷をなくすとともに、単純な積載効率の低下によるデメリット以上の、物流危機への対応やCO2削減などの社会貢献、サプライチェーン全域でのメリットに目を向けるべきと訴え、その領域を広げていくための環境作りとサービス品質の向上に取り組む。

そうした取り組みとしてJPRでは、レンタルパレット事業を国内のみならず、海外へ向けても国際間レンタルパレットサービスとして拡大していることが2番目のセッションで紹介された。

「XROP」 紹介ページ

国内から海外へ、国際間パレット輸送も拡大

APP(アジア・パレット・プール)と名付けられたサービスでは、日本、タイ、中国、韓国、シンガポール、台湾、米国の7か国を対象として、11型サイズの国際間輸送専用パレットによるサービスを展開。サービス内容としては、レンタカーの乗り捨て、海上コンテナ運用のように、「日本で借りて海外で返す」「海外で借りて日本で返す」というシンプルな運用となり、利用者がパレット戻しを気にする必要なく、海外現地での納品・回収が可能になる。

▲「APP」サービス運用例(クリックして拡大)

APPサービスは、海外輸送でのワンウェイの使い切りパレット輸送から、各国のパートナー企業の協力による合理的なパレットの循環利用を促す仕組みである。パレット調達コストの削減や、安定的で簡単な調達、CO2削減など、効率的で社会課題にも貢献できる輸送方法をより広い領域で拡大するサービスと言える。パレット利用での積載率の低下に拘泥せず、荷役負荷、荷役時間の削減、車両待機時間などSC全体への波及効果を考えて、国内のみならず海外への運用がさらに普及していくことも望まれる。

JPRでは、さらに、APPの対象国以外でもレンタルパレットによる運送を行う「国際間レンタルサービス」などに取り組むことで、日本国内で積み上げたレンタルパレット運用のノウハウを、海外のSCまで見据えた効率化・環境貢献へと拡大させたサービス提供を目指すと言う。

「APP」 紹介ページ

DD Plusによるパレットだけではないつなぎめ潤滑化

JPRが取り組むのは、物流の上流と下流や、企業間の「つなぎ目」をいかにスムーズにするか。3番目のセッションでは、一貫パレチゼーションだけではなく、納品伝票電子化、「DD Plus(ディーディープラス)」によって、伝票のやり取りを効率化するサービスが紹介された。

ディーディープラスは物流のつなぎ目で発生する納品、受領情報の伝達作業では、まだまだ紙ベースの作業現場が多く、電子化が求められる領域である。印刷や仕分け、押印や保管などのムダを省き、データによるやり取りにすることで物流をスムーズにし、荷待ちや荷役時間の削減にも貢献する。

▲「DD Plus」サービス概要(クリックして拡大)

また、納品日、荷主・物流事業者、出荷拠点、届け先、商品、数量といったデータを共有できることは、物流DXの第一歩でもあり、データ活用による物流現場の変革の入り口ともなる。

政府も推奨する伝票電子化だが、取引先との共同の取り組みとする必要性や、多様なサービスが存在していることなどがかえって、サービス実装のボトルネックとなり、様子見の状況が続く。
ディーディープラスは、他社サービスとデータ連携を行えるので、相手先が他社サービスを使用していても伝票電子化ができること。標準データフォーマット(DLフォーマット、物流情報標準メッセージ)に準拠し、認定システム(納品伝票エコシステム)とも連携するなど、つなげやすく、汎用性、互換性を確保していることが特色だ。

また、レンタルパレットの受払の同時処理も可能であり、納品とパレットなど物流容器の入出荷をワンストップで処理することで、つなぎ目のさらなる効率化を実現する。納品データの蓄積を通じて輸送実態を見える化、さらに他の領域の効率化ソリューションと連携することで、より広い領域の効率化も実現できる。

紙伝票の運用現場では、伝票発行・照会・仕分け・照合・回収・保管といった業務が発生し、それによる負荷が、これからの物流に求められる「共同配送」実現のボトルネックとなることは間違いない。アナログからの脱却から、さらに共同配送などに意欲的に取り組むためのはじめの一歩となるのが、ディーディープラスの導入と言えるだろう。

「DD Plus」 紹介ページ

TranOptによる共同輸送の普及こそ、物流効率化の鍵

4番目のセッションでは、まさにその共同輸送のためのサービス、膨大な物流データからAI(人工知能)による最適なマッチングで実現可能とする「共同輸送マッチング」のためのソリューション「TranOpt(トランオプト)」が解説された。

▲「TranOpt」サービスイメージ(クリックして拡大)

トランオプトは、多数の企業の輸送経路などをデータベース化し、膨大な物流データからAIによって業界を跨いだ荷主企業同士をマッチングすることで、共同輸送を可能にするサービス。共同輸送によって実車率や積載率の向上、CO2排出量の削減をはかり、飛躍的な物流の効率化を実現する。会員数200社、20カテゴリー以上の多彩な企業が参加し、産学共同研究開発のAIによって、経路、想定運賃や荷量の需給・季節変動なども考慮したマッチングを可能にし、また、往路・復路の組み合わせだけでなく、3つの経路を結ぶマッチングや同一経路で混載を行う相手を探すマッチングなどの機能を実装し、トランオプトによる共同輸送の取り組み事例が、共同輸送による物流効率化事例として多数紹介されるに至っている。

▲コミュニティサービス概要(クリックして拡大)

なかなか着地が難しいとされる共同輸送だが、トランオプトはビッグデータとAI技術、多くの荷主企業の参加で、実用的な共同輸送マッチングを可能にしていることなど、JPRならではのこれまで取り組みが生かされたシステムと言える。帰り便のマッチングによる実車率の向上、混載便のマッチングによる積載率の向上など、物流効率化の各指標の改善はもちろん、スポット便と定期便のマッチング、繁忙期の輸送の平準化、トラックだけではなくモーダルシフトのマッチング相手を探すことも可能である。さらに、ただWEB上でのマッチングから、実際に共同輸送を実現しようとする企業同士のリアルの場での協議を通じて取り組みを拡大する「共同輸送コミュニティー」構築へとサービスを発展させ、業界やエリアごとなどより実情に即した共同輸送の実現を後押しし、トランオプトを基盤にしたより現実的な共同化、効率化の検討が進むことが期待される。

「TranOpt」 紹介ページ

荷待ち削減へ、失敗しないバース予約システム導入

最後のセッションで紹介されたのは、JPRのグループ会社、TSUNAGUTE(ツナグテ、東京都千代田区)が提供するバース予約システム「telesa-reserve(テレサリザーブ)」。先着順の来場ルールを予約制にすることで、車両来場場時間の平準化と来場予定や荷待ち車両の見える化を実現し、来場時間の平準化、データの自動蓄積と分析による改善、業務負荷軽減(事前情報共有による作業計画立案、到着予定の共有)など構内業務を効率化、施設前の渋滞解消など周辺環境にも配慮するソリューションだ。

▲「telesa-reserve」サービス概要(クリックして拡大)

このセッションでは、バース予約システムの失敗しない「導入までのスケジュールとポイント」を紹介。特に大事な取り組みは、「運用ルールの作成」と「予約者(運送会社、ドライバー)への通知」であるとした。

車両1台あたりの利用時間、予約タイミング、来場時間、到着時間が遅れた場合のルール(一定時間経過で次の車両呼び出しなど)、など「運用ルール」を事前にしっかりと検討、作成すること。
また、せっかくのシステム導入も、その周知 納品者に情報共有が遅れると、情報伝達が遅くなるため、説明会、掲示物、チラシなどで、システム導入による運用変更をしっかりと共有しておくことこそが、その後のスムーズで効率的なバース環境作りに役立つと説明された。つなぐをテーマとした一連の説明の中で、人と人との連携など「丁寧につなぐ」ことの必要性についても訴えて、ウェビナーを締めくくった。

「telesa-reserve」 紹介ページ

全セッション合わせて10時から16時におよんだオンラインセミナーは、紹介されるソリューション同士や、他のソリューションと連携、併用することで、さらに効率化の促進に貢献することも示された。より広い領域で「全体最適化」「協調・協働」が重視されるなか、JPRの一貫した取り組みの中からのソリューション提案の「説得力」を再認識させられる機会となった。