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「PUDOがある」、新たなラストマイルの景色

2025年10月20日 (月)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「PUDOステーション体験イベ、全国4都市で開催」(10月15日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

ロジスティクス読者の中にも「PUDO(プドー)ステーション」の“存在”を知っているという人は多いだろう。すでに全国7000か所に設置されているというから、多くの人々の生活圏に密着した存在となっている。

Packcity Japan(パックシティジャパン、東京都千代田区)が展開するこのオープン型宅配便ロッカーのネットワークは、再配達の削減やCO2排出量の低減など、物流業界が抱える社会課題の解決に貢献してきた。駅、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、商業施設、オフィス、大学、公共施設などに設置され、誰でも利用できる「共通インフラ」として定着しつつある。誰もが、いつでも、どこでも、好きな時に配送サービスを利用できることで、時間や場所の制約から解放された、自由度の高い日常生活をおくることにも貢献している。

同社は17日、東京で開催されているスマートシティフェスタにて、ヤマト運輸と連携してこのPUDOステーションの利用方法などを紹介した。

▲「スマートシティフェスタ」の様子

実際のPUDOステーションでの荷物の受け取り方法はこうだ。EC(電子商取引)サイト購入時に「PUDOステーション受け取り」を選択すると、到着時にSMSやメールで通知が届き、その2次元コードをかざすだけで受け取れる仕組みだ。非対面・非接触の手続きが可能で、生活者の利便性を高めるとともに、配送現場の負荷を軽減している。特にコンビニ、スーパーなどではレジ業務などを中断して問い合わせに対応することも減り、大幅な業務改善になっているという。

「知っているけど使ったことがない」利用率向上が次の壁に

▲PUDOステーション

PUDOステーションは、すでに多くの人にとって“見たことがある”存在とはなった。しかし、「その中で、“使ったことがある”人はまだ限られる状況」と同社マーケティング部広報担当の永山徹氏は語る。

「設置場所は知っているが利用方法を知らない」「自宅に宅配ボックスがあるから必要ない」といった声も多く、認知と実利用の間に大きなギャップが残る。さらに、置き配の標準化など、受け取り手段の多様化も進む。再配達率削減や、誰もが利用しやすい配送環境作りを目指してきた同社にとっては、喜ばしい社会の変化ではあるが、PUDOの“事業”として見れば逆風であることも否めないと、永山氏も認める。「まずは、さわってもらうこと、使ってもらうという最初のハードルを飛び越えてもらうこと、PUDOの真価を知ってもらうことが重要」(永山氏)

PUDOステーションの真価は、受け取るだけではなく発送にも対応できる“パーソナルな郵便局”としての機能だ。同社では、メルカリ、ヤフーオークションなどのCtoC領域の利用拡大、発送需要の拡大を見据える。荷物を「返す」「送り出す」」など、これまで受け取り中心だった利用シーンを広げることで、ユーザーとの接点を拡大していく方針だ。

「何が何でもPUDOだけを使ってほしいということではない。受け取りや発送の選択肢のひとつとなるのか、まずは試してもらいたい」と永山氏は語る。日常の中で一度使ってもらうことで、利便性を実感してもらう。その体験を広げることが次の利用、そして社会全体の定着につながるという考えだ。

これまでないラストマイルのあり方構築するPUDOネットワーク

ことし2月に同社は、デジタル戦略・DX(デジタルトランスフォーメーション)分野のエキスパートである柳田晃嗣氏が新社長(CEO)に就任するという転換点を迎えた。柳田氏は、みずほフィナンシャルグループ副カンパニー長兼副CDO(Chief Digital Officer)やアマゾンジャパン、Googleなどでの経験を通じて、テクノロジーとビジネス変革を横断してきた人物である。就任に際し、「人とモノを迅速かつ確実につなぐことで、多くの人の暮らしを豊かにする」と抱負を語り、これまでにないラストマイルのあり方を形にするという方向性を示した。

新体制のもと、同社は「PUDOネットワークのデジタル化・DX強化」を目指す。デジタル技術を活用した利便性向上や運用効率化に取り組み、将来的にはカメラやセンサー機能を活用した“スマート筐体”として、新たな進化を視野に入れているのだろう。単なる街角の受け取りロッカーではなく、都市物流のハブとして機能する次世代PUDOステーションの姿が想像できる。

まずは、より多くのユーザーに利便性を体感してもらうことが、同社にとっての重要ミッションとなった。イベントへの出展、SNSや動画を通じた使い方紹介、地域メディアとの連携などにも注力すると永山氏はいう。多様化するユーザーのライフスタイルに合わせたアプローチを強化し、自分の時間を大切にできるというライフスタイル提案型のコミュニケーションを重視している。

PUDOステーションは、企業や物流事業者にとっても新たな価値を提案し続ける。アパレルをはじめとしたレンタル事業の返却拠点、EC(電子商取引)事業者の返品受け取り窓口、地域の回収・リユース拠点など、用途は多様化しており、“循環する物流”の起点としても注目を集めている。ユーザー自身がサプライチェーンの一員として参加する「参加型物流」を支える基盤としての可能性も広がっている。

次世代物流で「人と物をつなぐ拠点」へ

「PUDOステーションは、単なる箱ではない。ユーザー、配送事業者の時間と手間を省き、人と物をつなぎ、人と人をつなぐ拠点」と、永山氏は語る。

再配達削減という物流課題の解決から、リユース・循環型社会への貢献、そしてDX活用による都市型物流の最適化へ。PUDOステーションは、生活者と物流を結ぶ「社会のインターフェース」として進化を続けている。目指すのは、PUDOステーションの前に立つ一人一人が、物流の未来を少しずつ体感する時代の到来である。(大津鉄也)

▲Packcity Japan 永山氏

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