
話題「シリウスジャパンのAMR(自律走行搬送ロボット)を、自社の現場でも使ってみたい」。この春以降、LOGISTICS TODAY編集部には、EC事業者や物流企業などから、そうした声が寄せられるようになった。EC物流の急成長を支えるSTOCKCREWの巨大倉庫での活躍、そして四国の高密度センターにおける人時生産性向上への貢献。これまでの記事で紹介してきた数々の成功事例は、多くの読者の関心を惹きつけてきた。
しかし、性能やコンセプトへの理解が深まる一方で、導入の最終的な壁となってきたのがコストだ。そんな現状を打ち破るべく、シリウスジャパン(東京都中央区)が業界の常識を根底から覆す、衝撃的な一手を「国際物流総合展2025 INNOVATION EXPO」で披露する。これまで月額10万円で提供してきたAMRのサブスク(RaaS:Robotics as a Service)料金を、半額の「月額5万円」で提供するというのだ。
これは単なる価格破壊ではない。日本の物流業界の未来を、ユーザーと共に創り上げようとする壮大なプロジェクトの幕開けだ。本稿では、シリウスジャパンのニエ・ユハン(グレース)社長(以下、グレース社長)への独占インタビューを基に、この革新的な試みの全貌を解き明かす。
日給1667円の衝撃、「人の代替」から「能力の拡張」へ
月額5万円。この価格が持つ本当の意味を理解するために、日額に換算してみよう。答えはわずか「1667円」だ。これは、一般的な派遣スタッフに支払う「時給」とほぼ同額である。その金額で、文句も言わず24時間働き続けるパートナーが手に入る。そう考えれば、この提案がいかに破壊的なインパクトを持つか、ご理解いただけるだろう。
しかし、シリウスジャパンはロボットを単に「人の代替」として、コスト削減だけのツールと位置付けているわけではない。むしろ、人の能力を「拡張」させるための存在だと考えている。これは、STOCKCREW(東京都中央区)の中村社長が常々語る思想とも一致する。
AMRが歩行や単純な判断を伴う業務を担うことで、人はデータ分析、業務改善、マネジメントといった、より付加価値の高い業務に集中できる。その結果、人はより高い報酬を得ることが可能になり、企業は他産業と遜色のない高い時給で人材を確保できるようになる。そこで働く労働者のエンゲージメントは高まり、さらなる生産性向上へとつながっていく。今回の提案は、こうした「好循環」を生み出すための起爆剤なのだ。

▲STOCKCREWのEC倉庫を駆け回るシリウスAMR「FlexSwift」
「共創1000台」が実現する革新、ユーザーと共に創るスケールメリット
月額5万円という破格の料金は、いかにして可能になるのか。その鍵を握るのが、今回の特別プロモーションの核となる「共創1000台プロジェクト」だ。「もし、日本市場に1000台のAMR導入ニーズがあると確信できれば、私たちはその規模で生産を発注します。それによって生まれるボリュームディスカウントを、すべてお客様に還元する。それが月額5万円の仕組みです」とグレース社長は説明する。
これは、シリウスジャパン一社で完結する取り組みではない。AMR導入を検討する企業が「うちも使いたい」と声を上げ、その声が1000台という規模に達することで、初めて実現する未来の価格なのだ。グレース社長はこれを「共創」と呼ぶ。「これは一社でできるわけがない。日本のユーザーの皆さんの力で、『これぐらいの市場規模が本当にある』ということを見せてほしい。皆さんと一緒に、ロボットが当たり前になる時代を創っていきたいのです」。
INNOVATION EXPOのブースでは、このプロジェクトに参加する意思を示す「現地調査案件」を広く募集する。 導入のコミットは不要だ。「日本の市場のポテンシャルを見せてほしい」。 その一点に、今回のプロジェクトの成否がかかっている。

▲シリウスジャパンのグレース社長
「ロボットの民主化」時代の到来、現場が主役になる
この壮大なプロジェクトを支えるのは、価格戦略だけではない。ハードウェアのコストダウンと並行して、ソフトウェアが劇的な進化を遂げていることも、この「共創」モデルを加速させる重要な要素だ。
シリウスジャパンは、AMRの作業管理・群知能プラットフォーム「FlexGalaxy.ai」(フレックスギャラクシーエーアイ、通称フレアイ)と、ロボットOS「メガコスモOS」の新バージョンを開発した。これにより、これまで数か月単位を要していた現場ごとのオペレーション開発が、わずか数日から1週間という驚異的なスピードで可能になった。
さらに重要なのは、公開されたAPIを通じて、今後はWMSベンダーやユーザー自身が、自社の業務に合わせてアプリケーションを自由に作れるようになることだ。近い将来、ユーザーは自らの手でロボットの走行速度やピッキングルートといった働き方を細かく調整できるようになる。低価格で手に入れたロボットを、ユーザーが自らカスタマイズできるようになる時、ロボットはもはや特別な存在ではなくなる。これまでのように「ロボットの仕様に現場が合わせる」のではなく、「現場の都合に合わせて、必要な時に必要なだけ、少しの調整を加えるだけでロボットを投下できる」世界がやってくる。これこそが、真の「ロボットの民主化」だ。
時代の転換点へ、未来への招待状をその手に
グレース社長はインタビューの冒頭でこう語った。「私たちのロボットは、もう『準備万端』(Ready)の状態です」。 これは単に製品の完成度を指す言葉ではない。低価格化、人とロボットの新たな関係、そしてユーザー自身が主役となる「ロボットの民主化」。そのすべてが整い、物流業界が新たな時代を迎える準備ができた、という宣言なのだ。
シリウスジャパンは、国際物流総合展2025 INNOVATION EXPOに過去最大規模となる15コマ(135平米)のブース(東5ホール、5-501)を出展する。 そこでは、「共創1000台プロジェクト」の詳細が語られ、グレース社長自らが30分ごとに登壇し、そのビジョンを解説する。
「シリウスは『Ready』です。日本の市場は『Ready』でしょうか?」。 月額5万円という価格は、この問いかけに対するあなたの答えを待つ、未来への「招待状」にほかならない。ぜひ会場に足を運び、時代の転換点をその目で確かめてほしい。
<国際物流総合展 2025 第4回 INNOVATION EXPO>
■シリウスジャパン出展概要
会期: 2025年9月10日(水)~12日(金)
会場: 東京ビッグサイト
ブース: 東5ホール、5-501