イベント日本自動車工業会(自工会)が主催し、きょうから幕張メッセで開幕した「Japan Mobility Show Bizweek(ジャパンモビリティショービズウィーク)2026」。IT・エレクトロニクスの総合展「CEATEC(シーテック)2026」との併催となる今回は、「動かし続ける、日本。」をコンセプトに、モビリティー産業とデジタル産業が垣根を越えて社会課題の解決を目指す「共創」の姿が色濃く打ち出されている。
特に注目を集めているのが、自工会会員メーカー14社による合同展示エリアだ。自工会が推進する「新7つの課題」を起点に、6つのテーマでエリアが構成されている。中でも、物流業界が直面する人材不足や脱炭素化といった喫緊の課題に対し、「水素普及」と「共同物流」のエリアでは、実用化フェーズに入った技術と、企業間の壁を越えた連携の具体的な道筋が示された。

「脱炭素」と「実用性」を両立する水素トラックの実力
「水素普及」エリアでは、燃料電池(FC)大型トラックや水素エンジン搭載モデルが並び、商用車のゼロエミッション化に向けた多様なアプローチが提示された。
日野自動車は、国内初となる量産FC大型トラック「日野プロフィア Z(ズィー)FCV」の実機を展示した。ヤマト運輸や西濃運輸などとの実証実験を経て、すでに55万キロの走行実績を持つ実用モデルだ。
同社広報の柳澤昌詩氏は、「ドライバーからは、ディーゼル車と使い勝手が変わらない点に加え、振動がなく疲れにくい、無段階変速による荷崩れの心配がないといった評価をいただいている」と、現場での実用性の高さを説明する。1回の水素充填で650キロの航続距離を確保し、長距離輸送の脱炭素化を牽引する期待を背負う。

▲「日野プロフィア Z FCV」の開発者(左・中)と広報の柳澤昌詩氏(右)
一方で、水素タンクや燃料電池を搭載することによる「積載重量・容積の制限」は、メーカーとして改善を続けるべき課題でもある。柳澤氏は「積載量最大化はメーカーの責務。現状は容積勝ち(重量より容積を占める荷物)のお客様などに導入提案しながら普及を目指している」と述べた。
また、水素ステーションなどのインフラ整備状況が普及のボトルネックとなっている現状について聞くと、「我々の使命は水素を使う車を作って届けることだが、インフラがないと広がらない。思いを共にする仲間と手を組み、課題感を共有して広げていくことが必要だ」と語り、メーカー単独ではなく、社会全体でのインフラ構築の重要性を強調した。
同じく大型トラック領域では、三菱ふそうトラック・バスが水素エンジンを搭載したコンセプトモデル「H2IC」を出展。既存の内燃機関技術を活かしながら水素を燃料とするアプローチで、脱炭素化へのもう一つの選択肢を示す。

▲三菱ふそうトラック・バスのコンセプトモデル「H2IC」
デジタルが解き明かす「共同物流」のリアル
「共同物流」のエリアでは、会社の壁を越えて輸送力やデータを共有し、安定的な物流網を構築するためのソリューションが集結した。自動車メーカー各社に加え、物流のデジタル化を推進するスタートアップ企業も参加し、ハードとソフトの両面から効率化の糸口を探る。
主に海運・港湾物流の効率化に取り組むOne Stream(ワンストリーム、名古屋市中区)は、コンテナ物流に特化したシステムを出展した。同社営業部の伊藤雄亮氏は、「これまで配車担当者が経験や勘で行っていた到着予測をシステム化し、動態管理と自動配車を実現する」と、アナログ業務の可視化による省力化の価値を説明する。
自動車部品の調達物流などでも活用されるコンテナ輸送は、帰り便が空になることによる積載率の低さや、空コンテナの回送といった非効率を長年抱えてきた。伊藤氏は、「輸送ルートや貨物の流れが見えるようになれば、複数企業の輸送を組み合わせて非効率を改善するための検討材料になる」と述べ、データ連携が企業間の共同物流を促進する基盤となり得ることを示唆した。

▲ワンストリーム営業部の伊藤雄亮氏
一方、AIによる配車ルート最適化サービス「Loogia」(ルージア)を展開するオプティマインド(同区)は、従来のラストマイル領域から、自動車産業をはじめとするサプライチェーン全体へと最適化の対象領域を広げている。
同社の松下健社長は、「部品調達から完成車輸送、アフターパーツまで、自動車のサプライチェーンに関わる輸送全般の最適化に対応できるようになった」と語る。調達物流は工場ごとの個別最適化の性格が強いものの、アフター領域(販売物流)などでは複数社での共同輸送の余地が大きいという。「単に積み合わせるだけでなく、組み合わせの相性が悪いケースも含めてシミュレーションできる」とし、共同物流を実践する上での可否判定において、AIアルゴリズムが重要な役割を果たすとの見方を示した。
また、松下社長は「物流部門単独の最適化ではなく、生産計画などを含めたサプライチェーン全体の意思決定を定量分析で支援するフェーズに入っている」とも指摘。CLO(物流統括管理者)などの物流統括層からの問い合わせが増加しており、メーカーを含めた業界内でのデータ活用への理解が深まっている現状を明かした。

▲オプティマインドの松下健社長
消耗戦からの脱却、「健全な競争/協調」への転換
これらの展示やセッションに通底するのは、自社のみの利益を追求する競争から、業界全体で社会課題に立ち向かう「協調」へのパラダイムシフトだ。
日野自動車の柳澤氏は、ことし4月に完了した三菱ふそうトラック・バスとの持株会社「ARCHION」(アーチオン)による経営統合に触れつつ、「国内で値引き合戦をして台数を売っても誰も幸せにならない。協調すべき領域ではいすゞさんとも手を組む。例えば、東南アジアなど海外市場で得たものを一緒に国内に還元して健全に成長していくようなサイクルを作りたい」と、対中国メーカーをも見据えたグローバルな視点での持続可能な産業構造への転換を語った。
モビリティショーは、社会課題解決に向けたソリューションの実験場へと進化している。自工会合同展示が示す「共創」の姿は、明日以降も来場者に新たな気づきと連携のヒントを提供するはずだ。物流の未来を形作る具体的な第一歩を、ぜひ会場で体感してほしい。16日まで幕張メッセで開催される。(編集局・鶴岡昇平)
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