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ヤマトや佐川など労働条件の低下招いた、丸運社長

2019年4月1日 (月)

ロジスティクス丸運は1日、2019年度の入社式を開いた。荒木康次社長は、新入社員を前に、2019年はグローバル元年、海外でのビジネス拡大にチャレンジしていく年であり、世界に通用する人材になってほしいと述べた。

また陸送業界の構造的問題として、ヤマトや佐川などの宅配便業者間の販売数量獲得競争が労働条件の低下を招き、人手不足で荷物を運びきれない「負のスパイラル」を招いたとした上で、「何が何でも働き方改革を実現し、正のスパイラルに変えていきたい」と意気込んだ。荒木社長による訓示の要旨は次の通り。

現在は第二次の中期経営計画を実行中であり、今年はその仕上げの年だ。中期経営計画を実践するにあたって「丸運イノベーション」という成長戦略への取り組みを開始して三年目となる今年、その最若手の担い手として、大いに活躍してほしい。怖いものなど何もないから、外連味のないチャレンジ精神を発揮して「ビジネスイノベーション」「マインドイノベーション」「コストイノベーション」「システムイノベーション」の四つからなる丸運イノベーションに真正面から取り組んでほしい。

また、一昨年4月に合併し、誕生した、我々のグループ会社でもあり、最大のお客様でもあるJXTGエネルギーが今年の6月までに、全国のサービスステーションをENEOSブランドに統一することになっている。この結果、全国のサービスステーションの半分以上がENEOSマークになる。丸運はJXTGホールディングスが38%を出資するグループ内の総合物流機能会社として存在し、JXTGエネルギーの石油商品、潤滑油・化学品も運んでいる。街でよく見かけるタンクローリーも、6月までに全てENEOSブランドになるということになり、そのENEOSマークのタンクローリーのうち、なんと約5台に1台は丸運グループのタンクローリーとなる。

丸運の全売り上げに占めるJXTGグループ関係のビジネスは、出資比率と同じく40%程度であり、残り60%は我々の独自の営業活動によって生み出し、成長させていく必要がある。こうした成長分野を中心に、今後10年間で、組織も個人も毎年2%の成長を続け、最終的に20%以上パワーアップしていこうというのが「丸運グループ長期経営ビジョン」であり、これを実行していくのが「丸運イノベーション」の取り組みだ。

新入社員は、成長率の分母となる実績が「まだゼロである」ということなので、成長率は無限大になるともいえるが、当面の目標は一年、二年先輩の実績を分母として、毎年2%以上、10年間で20%以上の成長を実現してほしい。こうした成長には毎日の積み重ねが大切。そのためには将棋や囲碁でいうところの「二手、三手先を読む」という習慣を身に着けてほしい。

また、海外に目を移してみると、米中経済関係、英国の EU離脱、朝鮮半島の動向など、国際情勢は益々混迷を極めつつあり、2019 年という年は、昨年以上に混沌としてきた。こうした中で丸運グループは、現在、中国の上海、天津、常州、ベトナム・ハノイに現地法人を展開し、閔行(ミンハン)、天津、佛山、蘇州、南京、常州、ハイフォンに事務所・倉庫・車庫を保有している。今年はさらに、中国内陸部への展開、ベトナム南部への進出など、益々増強を続けていくことになる。中国拠点は点から線、そして線から面、メコンデルタゾーンは点から線への展開を図り、エリア戦略を確実に実行していく考えだ。2019年は、丸運にとって「混とんとする世界情勢の中で、海外でのビジネス拡大にチャレンジしていく」年になる。海外への進出は、決して楽な仕事ではないが、「丸運イノベーション」の成長戦略には必要不可欠になる重要な意思決定だ。

新入社員は、すぐに海外ビジネスの戦力というわけにはいかないが「数年後の戦力」であることは間違いなく、今から語学力を磨き、グローバルに通用する人材になってほしい。2019年がグローバル元年であると思って、チャレンジしてほしい。

最後に、国内物流業界の動きについて、特に陸運業界では人手不足、とりわけドライバー不足が顕著になっており、ドライバーの有効求人倍率は常時3倍を超える水準にあり、とうとうドライバー不足による「引越し難民」という言葉まで誕生してしまった。この問題には二つの要因があり、一つはeコマースをはじめとする宅配物流を必要とする販売形態が急増し、現有のドライバーでは運びきれないほどの貨物量となっていること。もう一つは、ドライバーの勤務実態が、手待ち時間も含んだ長時間拘束、休日夜間の不規則勤務、疲労度が強い長距離輸送など過酷な状況であることから、若い人たちが敬遠するようになっていることだ。

丸運はBtoBビジネスが主力なので、このうち後者の影響を強く受けており、その対策のためには、増車、増員によって労働密度を下げていく必要がある。これは大幅な経費増を招くため、顧客に実態を理解してもらい、労働条件改善に必要な原資となる運賃改定を昨年から粛々と進めているところだ。2019年はその仕上げの年であり、実現すれば、長く物流業界の歴史に残る年になるだろうと考えている。

新入社員の若い年代では、「ネット販売の送料は無料」というのが常識となっているかもしれないが、「送料、即ち物を運ぶ対価」は、決してコストがかかっていないわけではなく、本来有料であるべき。「送料無料」も正確に表現すれば「送料は販売価格込み(つまり、無店舗販売によるコスト吸収分)」のはずだが、これがヤマトや佐川急便などの宅配業者間の販売数量獲得競争の中で生まれた、コストを割り込むような、非常に安い料金での物流システムによる、ネット通販の送料無料表示となった。ネット販売の数量が少ない時には、その他の貨物で収益を確保することができるが、ネット販売数量が本来の貨物数量に迫るようになると、仕事だけが増えて利益が減っていくという悪循環に陥ってしまう。こうした負のスパイラルが、労働条件の低下を招き、ドライバー希望者を減らし、人手不足で運びきれなくなるという、負のスパイラルの連鎖につながっていた。

今年は、「働き方改革」元年であるが、陸運業界でも構造的な問題の解決として、何が何でも「働き方改革」を実現しなければ、我々の未来はない。そうした強い意志をもって「運賃改定の獲得から労働条件の改善」につながる正のスパイラルに変えていきたいと考えております。そのため、「10to8&8to10」つまり、「10の仕事量を8にし、8の仕事力を10にしよう」という活動に取り組む。

ここまで、2019年が四つの切り口から非常に重要な年であることを述べたが、社会人生活は今までの学生生活よりも遥かに長く、社会への責任や家族を守る義務も大きくなる。当たり前のようだが、企業の中では「健康第一(真似をしなくてもいいのですが、私は小学校 4年生から今まで病欠ゼロ)」で「使い減りしない人材(多少の負荷がかかってもいつも同じ状態でいることができる人材)」が重宝される。皆さんも、新しい人生を切り拓くにあたって、自分自身で長期的な戦略目標を立て、行動計画を立案し、計画に沿って着実に実行していってほしい。時には、その行動計画を見直し、修正することも大切。これが、PDCA(Plan-Do-Check-Action)というマネジメントサイクルです。

先ほど述べた丸運イノベーションへの挑戦、二手三手先を読む力やコミュニケーション力とともに、このマネジメントサイクルが、自然にできるようになればしめたもので、あなたの明るい展望が見えてくる。是非とも、あなた自身の名前を冠した○○イノベーションに明日から、いや今日からでも取り組んでほしい。丸運の荒木康次社長