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「赤字下で報酬高すぎる」の指摘に会社側「起業家精神必要」

乾汽船の経営体制・役員報酬に筆頭株主が怒り

2019年6月17日 (月)

話題乾汽船と同社の筆頭株主となった資産運用会社、アルファレオホールディングス合同会社(東京都千代田区)の間で、乾汽船の役員報酬や経営体制をめぐる争いがぼっ発した。アルファレオは2月時点で乾汽船の株式22.9%を取得した後、6月11日時点で25.43%となるまで追加取得を続けて筆頭株主となっており、買い増しを続ける最中に両社の争いが表面化した。

6月7日、アルファレオは大量保有報告書の記載内容を変更する「変更報告書」を関東財務局に提出。株式の「保有目的」を説明した文章で、同社は、「乾汽船の取締役は注意義務・忠実義務を尽くしていない」と指摘するとともに、アルファレオをターゲットとした敵対的買収防衛策の発動への反対を表明した。

具体的には、乾汽船の常勤取締役が乾康之氏(社長)、乾隆志氏(取締役)と兄弟2人のみで構成されていることに「ガバナンス上の問題あり」と指摘。これに加え、2018年3月期有価証券報告書で2人の取締役報酬が合わせて8200万円(1人あたり4100万円)に上り、総人件費の17%を占めて同業他社の2倍以上の水準になっているにもかかわらず、報告書の人件費給与手当で単純計算した従業員1人あたりの平均給与がおよそ200万円にとどまっているのは不公平――などと主張した。

これに対し、乾汽船は12日、自社ウェブサイト上で反論を掲載。アルファレオが指摘する従業員の平均給与について、「販売費及び一般管理費の一部として掲載している給与手当」には賞与や手当が含まれておらず、正しくは843万3000円であり、アルファレオの記載は「事実に反している」と応酬。不公平な取締役報酬については「『健全な起業家精神の発揮を促す』ものであるべきであり、株主還元とは異なる目的・性質を有する」とし、不公平とするアルファレオの指摘を一蹴した。

また、乾汽船は11日の開示資料で同社が6月21日に付議する取締役報酬として、18年3月期よりも多い1億1900万円(1人あたり5950万円)への引き上げを予定していることを明らかにしているが、アルファレオ側は「19年3月期決算が3回にわたる下方修正を経て当初の経常黒字の見通しが経常赤字になった」なかで増額するのは「業績に見合わない取締役報酬」だとして、「来年度以降」に報酬総額の引き下げ提案を検討する意向も示している。

乾汽船の定時株主総会は6月21日に開催される。アルファレオは乾康之社長の解職や次年度以降の取締役報酬の見直しなども求める方針だとみられる。