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豊田通商、後続車が無人のトラック隊列で高速走行

2021年3月5日 (金)

調査・データ豊田通商は5日、「高速道路におけるトラックの後続車無人隊列走行技術」の実現に成功したと発表した。2016年度以降、国土交通省と経済産業省からの受託事業において研究開発を進めていたもので、2020年度の政府目標の1つを達成したことになる。

(出所:豊田通商)

2月22日に新東名高速道路で実証実験を実施し、遠州森町パーキングエリア-浜松サービスエリア間の15キロメートルを、先頭車のみ人間が運転し、後続の2台は無人のトラック3台の隊列で走行した。先行車追従機能などにより、車間距離9メートルを保ちながら、時速80キロメートルで走行したという。

本線から浜松SAに分流(出所:国土交通省)

政府の成長戦略では、今後の目標として「2025年度以降の高速道路におけるレベル4自動運転トラックの実現」を掲げており、豊田通商などは今後も引き続き、自動運転技術を搭載した高性能トラックの開発と社会実装に向けた研究を進める。今回の実験での走行の様子や、後続車の無人システムの詳細については8日に、経産省がYouTubeの公式チャンネルで公開する。

完全無人ではなく「運行監視者のみ乗員」が主流化

自動運転技術の進展を伝えるニュースが続いている。私見としては「車内に誰もいない」完全無人化(拙案では第一の無人と表現する)は必要なく、「車内に運転者がいないが、運行監視の乗員はいる」(第二の無人)が好ましいのではないかと考えている。

高速道路などの信号機がない自動車専用道路や、特定施設内の専用軌道を走行する場合を除き、隊列走行は需要の一部でしかない。市場で最も求められているのは、一般貨物の市街配達車両の運転者不足を補完する機能だ。

もちろん、本記事の実験の実施場所である主要高速道路や幹線道路経由での拠点間運送についての有効性は認める。しかしながら、猫も杓子も「はやく」を求めなくなりつつある昨今では、鉄道貨物や内航海運へのモーダルシフトの方が、コストや一度に運べる荷量がトラックとは比較にならないことも事実だ。

カーボンニュートラルの観点からも好ましいことは説明不要だろう。つまり所要時間の許容範囲を選別して荷をまとめれば、脱炭素に寄与する低廉コストの輸送が得られるのだから、そちらの実証実験もどんどんやってもらいたい。

せっかくの経費と時間をかけての実験は、実需の優先順位に応じたものにするべき。「言われるまでもなく、着々と進めている」という反論があるなら、自身の不明を詫びて、関係各位には敬意を表する次第だ。(企画編集委員・永田利紀)