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近畿ト協、会員事業者に「標準的な運賃」届出促す

2021年3月16日 (火)

ロジスティクス近畿運輸局などが荷主企業7000社向けに「標準的な運賃」への協力要請文書を送付したのに伴い、近畿2府4県のトラック協会で構成する近畿トラック協会はこのほど、会員のトラック運送事業者に標準的な運賃を届け出るよう呼びかけた。

近畿運輸局、近畿経済産業局、大阪労働局が連名で荷主企業に送付した協力要請文書では、2020年4月24日に告示された標準的な運賃が「2024年度から年間960時間の時間外労働の上限規制が適用される」ことを踏まえて示されたものであることを説明、運賃の趣旨・目的への理解を求めている。

自衛のはずが自滅にならぬように

国土交通省が昨年告示した「標準的な運賃」を荷主企業に周知する近畿運輸局などの動きを受け、近畿トラック協会が会員であるトラック運送事業者に、標準的な運賃の届出を促しているという。行政が「標準的な運賃を守って」と周知している一方で、足元の運送事業者がこれを活用していないとなれば、標準的な運賃が名ばかりのものとなってしまう懸念があるとみられる。

運輸局・経済産業局・労働局そろい踏みの要請支援は好ましく、印象も強まることは間違いないところだ。「標準的な運賃」の荷主への周知と理解の反復に過ぎるということはなく、今後も継続してもらいたい。また全日本トラック協会(全ト協)など業界団体は啓蒙活動に専心するだけでなく、荷主や事業者への直接の聴き取りやこまめなアンケートの実施なども欠かさないでほしい。

ところで、こうしたニュースのたびに毎度懸念するのは、運送事業者の自滅行為だ。

荷量が減って、車と人が遊びだすと、とたんに値下げや値引による過当競争が起こる。荷主側からすれば「御上のお達しにしたがって、呈示タリフに首肯したばかりなのに、もう値引するので仕事が欲しい、とは…」といったことの繰り返しには辟易している。

仕事が減れば、安くしてでも受注しなければならないという業者の現実は、正論や綺麗ごとだけでは解決できない。事業支援とは運賃の標準化と需給バランスの監視の組み合わせを指すのだという実態を市場参加者は直視しなければならない。(企画編集委員:永田利紀)