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ESR川崎浮島DCにみる「こだわり」の中身は

2021年5月27日 (木)

拠点・施設2020年度のGRESB評価において、世界最高クラスのESG(環境、社会、ガバナンス=現代社会へ及ぼす影響)に対する評価を得たESR(東京都港区)。着工ベースで国内28か所目の同社物流施設として開発中の「ESR川崎浮島ディストリビューションセンター(DC)」は、その汎用性の高さと持続可能性が注目ポイントとなる。

物流効率性を重視し幅広いニーズに対応できる設計

まずは建物の基本機能。2022年8月に多摩川河口エリアの川崎市側で完成予定のESR川崎浮島DCは、敷地面積3万2227平方メートル(9749坪)、延床面積6万9533平方メートル(2万1034坪)の4階建てマルチテナント型。多摩川を挟んで羽田空港に近接し、東京・横浜へのアクセスに優れる。

開発事業者のESRは、物流施設開発専業で培ってきたノウハウを生かし、「テナント企業様の物流効率性の向上とビジネス拡大に寄与する」べく、使い勝手が良く、汎用性の高い設計とした。

倉庫は1・2階、3・4階をセットにした2層使いのメゾネットタイプの設計で、最大6社が利用できる。1階と3階に備えたトラックバースは奥行14.5メートルで、45フィートコンテナトレーラーも乗り入れ可能。3階にはスロープでアクセスする。

テナント区画は、それぞれ垂直搬送機1基と荷物用エレベーター2基による高い縦搬送能力を備える。1階部分は床面の耐荷重をほかのフロアより大きい2トン(1平方メートルあたり)に、有効天高を6メートルに設定。4階部分も最高部でほかのフロアより高い6.5メートルを確保するなど、汎用性と「より踏み込んだ利用者ニーズへの対応」という、相反する利点を併せ持つ。

▲1・2階/3・4階のスペック

例えば、「冷凍冷蔵用途で使いたい」「重量物を扱いたい」というニーズに対しては1階を提案し、かさの大きい貨物に対しては、保管効率を考慮し、天井が高く、柱の本数が少ない4階を提案——というように、バラエティに富んだ提案が可能だ。ロボティクスや冷凍冷蔵設備、ハイスペックな物流システムの導入など、幅広いニーズに対応する。

また、「HUMAN CENTRIC DESIGN.」(ヒューマン・セントリック・デザイン=人を中心に考えたデザイン)を基本理念に据える同社が、ESR川崎浮島DCでも力を入れているのが「ワーカー(施設勤務者)にとって安全で快適な施設環境」の提供だ。ワーカーがリラックスできる休憩スペースに加え、エントランスのスロープや、身障者用駐車スペースを確保し、館内にも標準的なバリアフリー設計を採用。あらゆるワーカーにとって利便性・安全性の高い施設を目指す。

■完成イメージ映像

「鉄骨免震構造」など持続可能で環境にもやさしい物流施設

物流施設の免震で多いのは、あらかじめ応力が組み込まれた「PC」(プレストレスト・コンクリート)を用いるケースだが、目的に対してコストがかさみがちなこの手法ではなく、今回のESR川崎浮島DCでは国内の同社開発施設として初めて「鉄骨免震構造」という東急建設独自の技術を投入した。鉄骨の「しなり」を活用したこの技術に加え、杭(くい)は一般的な物流施設が50メートル程度であるのに対し、80メートルの深さまで打ち込んだのだという。

▲2メガワット規模の自家消費型太陽光発電設備を導入予定

同社は持続可能な開発目標(SDGs)やESGを重視し、2025年までに達成すべき目標を明記したロードマップを公表。持続可能な物流施設の開発に積極的に取り組んでいる。ESR川崎浮島DCでは、2メガワット規模の自家消費型太陽光発電設備を導入予定で、再生可能エネルギーを活用しやすい施設を目指す。全館LED照明のほか、トイレ・喫煙室・共用部に人感センサーを設置し、不使用時は消灯するといった環境配慮型照明システムを採用する。

また、有事の事業継続をサポートするBCP対策機能として、非常用自家発電設備を装備し、停電時でも一定時間、防災センター、事務所の照明、コンセント、トイレ、一部荷物用エレベーターなどを使用できるようにする。この非常用発電設備は、同社の全施設で標準装備しているという。

こうしたESGやSDGsに対する同社の方針やパフォーマンスは、さまざまな形で評価され、CASBEE(キャスビー、建築環境総合性能評価システム)ではAランク評価基準を満たす。施設運営・管理のスペシャリストで構成されたプロパティマネジメントチームによる管理体制も社内に整えており、安心・安全な施設環境を提供する。

東京都心30分、横浜中心部25分の早さで到達

最後に、立地についても触れておきたい。

最寄りの高速道路の出入口である首都高速道路神奈川6号川崎線の浮島ICから300メートル、同じく首都高速道路湾岸線川崎浮島JCTからも700メートルと近く、東京都心まで30分、横浜中心部までも25分でアクセスできるのが大きな強みだ。

主要な輸送インフラへの距離も近接する羽田空港は当然のこと、川崎港コンテナターミナルから7.5キロ、横浜港大黒ふ頭や東京港大井コンテナふ頭から15キロと、海上コンテナ輸送の面でも同施設の優位さが際立つ。さらに、2021年度中に予定されている羽田連絡道路の完成後は羽田空港からの所要時間が短縮されることから、医療関係など緊急性の高い配送の厳しいニーズに対応できる。通勤の面では、最寄りの浮島バスターミナルから徒歩2分の近さで、京浜急行大師橋駅、JR川崎駅からの運行ダイヤも豊富で労働力も確保しやすい。


■ESR川崎浮島ディストリビューションセンターの施設概要
所在地:川崎市川崎区浮島町400-36
敷地面積:3万2227平方メートル(9749坪)
着工:2021年3月1日
構造:4階建て/免震鉄骨構造
延床面積:6万9533平方メートル(2万1034坪)
完成:2022年8月31日
用途地域:工業専用地域
基本計画・マスタープラン:ESR(武田諭氏、落合亮太氏)
設計:上野山都市設計
施工:東急建設

■アクセス
車:首都高速神奈川6号川崎線「浮島IC」から300メートル、首都高速湾岸線・東京湾アクアライン「川崎浮島JCT」から700メートル
バス:川崎鶴見臨港バス「浮島バスターミナル」下車徒歩2分 ※当バス停まで京浜急行大師線「大師橋駅」の最寄りバス停「江川一丁目」から15分、「川崎駅前」から35分