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価格と速さ軸に配送サービス集約、ロジクエスト

2022年11月1日 (火)

サービス・商品物流総合商社のロジクエスト(東京都千代田区)は、首都圏で展開する緊急配送サービスを刷新し多様化する配送ニーズに対応する。従来の7つの配送サービスを集約し、「コスト」か「速さ」の2つに統合。強みとする緊急便を強化する一方で、コストを重視するユーザーには低価格でサービスを提供する。同社によると、業界最安値を実現したという。

▲従来のサービスを「コスト」「速さ」を軸に統合する(出所:ロジクエスト)

発表によると、当日配送サービス「ロジプラ便」について、従来の配送エリアを東京23区から東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県にまで拡大。80サイズまでは、依頼から6時間以内に配送を完了させる。オフィスが集積する都心の千代田、港、中央の3区は3時間以内とさらに短時間化する。料金は集配区間の距離に関わらず一律税込み2200円で、荷物の個数制限もない。

また、即時性を重視した「緊急便」は受け付け後、都内を中心に稼働する配送パートナー500人の中から最速で配送できるキャリアーを選定して集配を行う。これまでバイク、軽四輪、自転車、ハンドキャリーと分けていたサービスを一本化し、あらゆる手段で「一刻も早く」という配送ニーズに応えるサービスを提供する。

柔軟で思い切った発想の転換こそが、サービスを持続的に提供できる事業者の条件に

斬新なモデルで一世を風靡(ふうび)したビジネスも、いずれ後発参入者との市場獲得競争に巻き込まれていく。それは市場原理の常であり、こうした過程を経てさらに効果的なビジネスとして成熟していくのだが、そこで武器となるのが「差別化」だ。

それでは、緊急配送サービスにおける差別化のポイントとは何だろう。まずは速達性だ。「緊急」を旗印にするサービスを展開するからには、スピード性へのこだわりは欠かせない。

しかし、荷物の発送者や届け先が求めるサービスの「品質」は、市場の成熟度合いに比例して高まっていく。輸送サービスをはじめとする物流が社会に不可欠なインフラとして認識されるようになると、こうした輸送品質の要求はさらに高度化。事業者はこうした動きへの対応力で競うようになり、そこでさらに強みを磨くか、戦略を転換して新たな差別化ポイントを模索するかの選択を迫られることになる。

1985年に首都圏で緊急配送サービスを開始したロジクエストが、創業以来のビジネスモデルを大幅に見直した。差別化のポイントを「コスト」と「速さ」の2つに集約。緊急時のスピードを信条とした配送サービスについて、価格を訴求した新たな差別化を掲げることで、新たな顧客層の獲得を図る戦術に打って出た格好だ。

ここにも、輸送品質の高度化への対応に苦心した事業者の思惑が浮かぶ。本来は、スピードと価格は背反する概念であると言える。スピードを高めるには相応の投資が必要であるだけでなく、品質や就労環境などを犠牲にする必要さえ生じるからだ。

こうしたマイナス要素をつぶしながら生き残りをかけた差別化を提示するビジネスは、これからも無限に続いていくのだろう。配送サービスという厳しい市場での競争を勝ち抜けた事業者が新たなスタンダードを築き、さらなるステージで競争を繰り広げる――。そんな輪廻(りんね)が、新たな市場ニーズさえ生み出してしまう。それが成熟した市場というものだ。

EC(電子商取引)の普及や新型コロナウイルス禍を経て、消費スタイルの多様化をはじめとする社会における購買トレンドは急速に変化した。配送サービスに求められる役割がさらに高度化・多様化するのは間違いない。こうしたパラダイムシフトが進むなかで、ロジクエストのような柔軟で思い切った発想の転換こそが、サービスを持続的に提供できる事業者の条件になるだろう。(編集部・清水直樹)

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LOGISTICS TODAY編集部
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