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物流スタートアップ・ベンチャー特集/第12回

EVで物流最適化/EVモーターズ・ジャパン佐藤社長

2022年12月13日 (火)

話題LOGISTICS TODAYのスタートアップ・ベンチャー企業を応援する企画「物流スタートアップ・ベンチャー特集」。第12回は、EVモーターズ・ジャパン(北九州市若松区)の佐藤裕之社長です。

商用EV(電気自動車)は、物流業界を大きく変える力を持っている--。物流向けEVの開発を進める意欲を維持できるのは、こうした確信があるからです。とりわけ効果的な分野として注目しているのが、ラストワンマイル輸送です。

新型コロナウイルス感染拡大も契機としたEC(電子商取引)サービスの急速な普及は、ラストワンマイル輸送のさらなる効率化を迫っています。一方で、カーボンニュートラルの実現による持続可能な社会の構築に向けた機運が高まるなかで、輸送における脱炭素化の動きも顕著になっています。とはいえ、実効的な施策はなかなか具体的に進んでいないのが実情ではないでしょうか。

▲三輪車「eトライク」

我々は、こうしたラストワンマイル輸送に適したEVとして、三輪車「eトライク」を市場展開しているほか、1トン積みと2トン積みタイプの「e物流車」もラインアップに加える計画で、どちらも通常コンテナと保冷コンテナをそろえます。eトライクは、ラストワンマイル輸送のなかでも特に小型の車両ニーズに対応しています。いわゆる「5ナンバー車」の最大サイズであるe物流車の1トン積みタイプも、既存の一般的なトラックより小ぶりで、短距離で高頻度の配送業務に適した仕様にこだわりました。

(イメージ)

こうした商用EVビジネスは、1987年に着手したリチウムイオン電池の開発が起点になっています。モビリティ分野における環境対応策の社会的な要請が強まるなかで、リチウムイオン電池を活用することで貢献できるビジネスを模索した結果、商用EVという着想を得ることができました。まずはバスで市場展開を進め、続く参入市場として着目したのが物流でした。

なぜ物流に目を向けたのか。それは、ラストワンマイル輸送に携わる事業者のあるニーズでした。「停止中もコンプレッサーを稼働し続けることのできる保冷車がないか」。保冷車は一般的に、荷物の積み下ろしなどで車両を停止させている間はコンプレッサーの動力源を止める必要があるからです。

定温物流の需要が高まるなかで、輸送過程における適切な温度管理は物流事業者にとって避けて通れない命題になっています。特に荷主からのこうした要請はいっそう強まっています。そこでひらめいたのが、電池での給電です。充電された電池からは、車両の停止中であっても給電し続けることができます。バスと同じパワートレイン(エンジンが生み出した回転エネルギーを駆動輪へ伝達する装置類の総称)で、物流車を開発できると考えたのです。

私は物流業界へのEVの浸透こそが、持続可能な社会を実現する近道になると考えています。あらゆる産業を支える機能を果たしていることに加えて、荷主と物流事業者という両方の立場が存在する領域だからです。

特に荷主企業は、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別した「ESG投資」を意識した事業運営が求められるようになっています。荷主企業がこうした観点で投資家の評価を得る手段のひとつとして、EVの導入は非常に実効性の高い選択肢ではないでしょうか。

さらには、車両だけでなく物流倉庫の屋根や壁面にも設置できるフレキシブルソーラーパネルを活用することで、充電した電力をEV物流車へ供給するだけでなく、蓄電サブスクリプションにかかるビジネスの創出につなげられる可能性もあります。物流におけるEV化は、ビジネスモデルそのものを革新するだけの”パワー”を持っている。そう考えているのです。(編集部・清水直樹)

第2回スマート物流EXPO出展情報
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