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樹脂製フォークガード材を共同開発、プロロジス

2022年12月12日 (月)

▲樹脂製フォークガード175(出所:フクビ化学工業)

サービス・商品プラスチックメーカーのフクビ化学工業(福井県福井市)は12日、物流施設や倉庫向けにフォークリフトの壁面衝突を防ぐ視認材「樹脂製フォークガード175」を開発した、と発表した。プロロジスとの共同開発で、従来の鋼鉄製に比べて軽量かつ加工・メンテナンス性などにも優れており、リサイクルにも配慮しているのが特徴。

フォークガード材は鋼鉄製が一般的だが、衝突した際に傷部分を塗り直す必要がある上に、フォークリフトも損傷するといった課題がある。物流施設内での壁面破損はメンテナンス工事に大きな費用がかかることから、現場の実情に即したフォークガード材が求められている。

▲樹脂を黄色に着色して視認性を高めた

発表によると、フォークガードは、注意を喚起するために樹脂自体を黄色に着色して成形。庫内での作業時の視認性を高め、壁が近くにあることを認識しやすくした。単品価格は1本1万円(梱包価格は1箱4万円)から。

中空樹脂のため、1本当たりの重さは3.3キロで鋼鉄製の半分以下で、現場の作業負担を軽減する効果も期待できる。また表面の塗膜が剥がれ、錆びが生じるリスクもないため管理がしやすいほか、単一の素材で製造されており使用後の素材回収も可能で、SDGs時代に最適な製品に仕上げた。

物流倉庫における安全策の構築、欠かせないのは従業員の「意識」を醸成する取り組みだ

物流現場における業務の最適化と聞けば、まず浮かぶキーワードが「DX」(デジタルトランスフォーメーション)だろう。デジタルの技術を活用することで、人手の業務を先進機器・システムで置き換えたり、手書きなどアナログの要素が強かった作業の省人化・高速化を図るといった取り組みだ。

新型コロナウイルス感染拡大も契機に、国内でもEC(電子商取引)サービスの普及が進んでいる。店舗から宅配へと購買トレンドのシフトが加速するなかで、物流現場における取扱量は急増。少子高齢化の進行による人手不足が顕在化するとなれば、少ない人数で多くの仕事をこなせるDXが着目されるのも、必然と言えるだろう。

しかし、現場業務の最適化は、こうした作業の効率化だけで実現できるものではない。その代表例が、物流倉庫作業における安全性の確保だ。こうした現場では荷扱いのさまざまな業務に携わる従業員のほかに、フォークリフトや台車といった荷物搬送車両が往来する。さらに、マテリアルハンドリング機器をはじめとする設備も稼働するなど、現場には事故の発生要因があふれているのが実情だ。

こうした問題の解決を図るために欠かせないのは、従業員と車両の接触を防ぐなどのシステムも効果的ではあるだろうが、まずは物理的な回避策が欠かせない。今回フクビ化学工業がプロロジスと共同で開発した物流倉庫⽤の樹脂製フォークガードは、むしろアナログの見地からフォークリフトによる壁面衝突などの事故を避ける取り組みであることろに意義があると言えるだろう。

(イメージ)

フォークリフトの壁面衝突を避ける対策を講じる場合で考えてみよう。DXの観点では、壁面との距離が一定の範囲よりも小さくなったら警報を発する仕組みがありうるだろう。一方で、両社が開発した視認材を設置することにより、フォークリフトの操縦者に注意喚起を求める方法もある。操縦者が警報を頼りに受動的に衝突を回避するか、自ら危険を察知するかの違いだ。

とはいえ、現場における危機管理の観点からすれば、操縦者の積極的な危険回避策を担保する「意識」の醸成をより期待できるのはどちらか、もはや自明であろう。あくまで人間が操作するフォークリフトであるならば、操縦者のこうした危険回避のマインドを維持することが先決ではないだろうか。DXによる危険回避の支援策は、あくまで操縦者のこうした意識があって初めて効果を発揮する。

物流現場における安全性の最適化。そこには、物理的なアナログの要素がまだ欠かせない場面も多く存在するのではないか。フォークリフトの衝突回避策はその好例だろう。さらに言えば、そこに物流施設の開発事業者が関与しているところが、何とも興味深い。(編集部・清水直樹)

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LOGISTICS TODAY編集部
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