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物流“暗黒大陸”に光明は、荷主の動向がカギ握る

2023年6月6日 (火)

イベントLOGISTICS TODAYは6日、本誌主催のオンラインセミナー「“物流倒産警報”発令、直ちに検証を」を開催した。「物流の2024年問題」の本質を見極めた上で、荷主企業や物流企業が実施した対策の証言を交え、物流倒産を回避するために必要な考え、取るべき行動を提言した。

▲(左から)LOGISTICS TODAYの鶴岡昇平、赤澤裕介編集長、ライナロジクスの朴成浩社長

1人目の“証言者”はライナロジクスの朴成浩社長。LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長との掛け合いで、2024年問題の本質をあぶり出した。未だに一部メディアから“暗黒大陸”と揶揄される物流業界ではあるが、その言葉の意味合いが時代とともに変化してきたと朴社長。「昔は進歩がない、改善の余地があるという意味での暗黒大陸という表現だったが、今は何をやっているのかわからない、“ブラックボックス”的な意味合いで使われている」とした。

その理由として、3PLが日本で発達した2000年代中盤以降、荷主企業が3PL業者に物流を“丸投げ”する状態になり、荷主が自社の物流を把握していないことがあると指摘。以前は物流企業が荷主を探すのに苦労し、クルマが余る状況だったのが、今やドライバーが不足する状況となった。この経済環境の変化に目を向けなければ、「物流会社が荷主から選ばれなかったように、荷主が物流会社に選ばれないといった時代が来る」とし、荷主も物流現場の状況を把握し、ITシステムなどの活用により見える化するべきだと主張した。

朴氏はそんななかでも、「荷主から物流改善の相談が増えてきた」と変化を感じている。本来はコンサルタントの領域ではあるが、デジタルツールの活用が持続ある物流の構築につながる今、ライナロジクスをはじめとしたITシステムベンダーへの相談も多数あるという。対談の終わりには、「これからは荷主がカギを握る」とし、「荷主にとっては製品だけでなく、物流まで含めてサービスとして考えなければならない。荷主が自らリーダーシップを取って物流課題の解決に動くことが大事」と締めくくった。

次に「“選ばれ続ける”物流会社の思考法」と題し、アパレルなどの商材を中心に倉庫事業を展開する三鷹倉庫(大阪市生野区)から関武士社長が、新型コロナウイルス禍などを経ながらも、右肩上がりの業績を上げた理由を語った。また、三鷹倉庫が新たな拠点として選んだ物流施設のデベロッパーである三菱地所の橋本哲史氏、東京流通センター(TRC、東京都大田区)の植村宗広氏が参加した。LOGISTICS TODAYの鶴岡昇平が進行役を担った。

アパレル物流を担う三鷹倉庫は、アパレルに付随する流通加工業務など専門性のある付加価値を提供してきたが、偏重した業務形態では厳しいと判断し、10年ほど前から事業の多角化を推進。EC(電子商取引)、貿易、倉庫賃貸業の3つを中心に業容を拡大している。そんな三鷹倉庫が拠点を選定する際のポイントとして「他との事業者と違った、何か一つでも利点がある、特徴のある倉庫を選んできた」(関社長)と説明。自身の会社の唯一無二の付加価値を提供していくことが、持続可能な運営につながると強調した。

昨今の荷主の物流コストに対する捉え方について、関社長「二極化している」との見解を示し、「物流コストを削減すること以上に品質を大事にする荷主も増えてきた」と話す。デベロッパーの立場からはどうか。三菱地所の橋本氏は「物流施設も多様性が求められつつある。単純に“ハコ”を貸し借りするというステージではすでにない」、TRCの植村氏は「倉庫内で作業する従業員に、良い環境を整備しようとする事業者も多くなってきている」と、いずれも物流施設に求められる品質が高まっていることを主張した。