ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

100平方メートルから構築するROMS自動倉庫で、事業規模に応じた物流革新を

業界最高効率の「小さなフルフィルメントセンター」

2024年4月19日 (金)

話題自動倉庫は、これまで汎用性が高く広大な倉庫スペースを効率よく運用する目的から、大規模が当たり前であった。こうした常識に逆行するかのごとく「小は大を兼ねる」と主張して記者を驚かせたROMS(ロムス、東京都品川区)の前野洋介社長を取材した。

▲前野洋介社長

わずか100平方メートルから導入可能な自動倉庫を開発し、物流事業者向けに本格展開を開始してから半年で既に複数件の導入を決めたというのだから、いくら自動倉庫が普及期に入りつつあるといっても、「何が起きているのか」という思いになる。まずは主力製品の「NFC」(Nano-Fulfillment Center、ナノ・フルフィルメント・センター)からみていこう。

NFCは一言でいえば、小さな空間で実現できる自動倉庫だ。標準モデルとなるクレーンモデルタイプは収納コンテナを高密度で保管するラック部分と、そこから必要なコンテナをピックアップするクレーン、搬送コンベヤーと、ピッキングステーション部分、オプションで設置できるロボットアームで構成される。これにより「わずか100平方メートル程度の空間で、時間当たりGTPで400行以上の処理能力と、設置場所の天井高に準じた柔軟な保管能力を両立する自動化ソリューションを導入できる」(前野氏)というのだ。

(クリックで拡大)

空間の有効活用にこだわるROMSの技術力

そもそも、自動倉庫というソリューションを、「小規模から提供できる」ことにこだわる開発者は希少だ。多くの自動倉庫は、200坪(660平方メートル)程度のスペースを最低基準にして、保管能力と処理能力を発揮する。ロムスのようにその6分の1程度のスペースでは、保管を重視して処理能力を後回しにするか、処理能力を上げるためのマテハン部分でスペースを取り、保管スペースをないがしろにするしかなかった。

それゆえに、自動倉庫といえば、資本力のある企業が大規模な処理能力を追求し、巨大な保管空間を基盤にロボティクスでの効率化を活用するものと思い込んでしまう。もちろん、一定以上の保管、処理能力を必要とする企業にとっては理にかなった選択だとしても、成長過程の中小企業や中堅企業が導入するには、あまりに高い障壁があるのは否めない。

ロムスは、その技術力を生かして、省スペースでの新しい利用体験を提供することにこだわってきたことが、NFCのコンセプトに発展した。同社の取締役で経営戦略室長を務める阿部翔太郎氏は、「まず、ロボットピックを用いた30平方メートル規模の超小型無人小売店舗、RCS(Robotics Convenience Store、ロボティクス・コンビニエンス・ストア)が私たちの祖業となっており、そこから物流業界の要請に応える形で進化したのが、NFCだ」と、物流事業の課題に対応する効率化ソリューション開発のきっかけを語る。

浅草に20年に試験的に期間限定で設置したRCSは、ロボットアームによる全自動ピッキングで複数商品、複数温度帯の商品を無人で販売する、小型のロボット無人コンビニ実証店舗だった。非対面で商品購入、アプリでの事前購入と店舗受け取り、デリバリーといった多様な買い方・受け取り方を提供するシステムが、街角の小さな空きスペースに登場したのだから、当然大きな注目を集め、「まさに店舗と小さなフルフィルメントセンター(FC)をコンパクトにまとめたソリューションとして、ネットスーパー事業を模索する企業や物流会社から多くの問い合わせや相談をいただいたことが、NFC開発へとつながった」(阿部氏)という。

▲取締役・経営戦略室長の阿部翔太郎氏

この「小さなフルフィルメントセンター」を構築する技術力こそが、ロムスの事業の核。保管密度を極限まで高めつつハードウエアを小型化する設計技術だけではなく、狭小空間で、入庫から保管、オーダー仕分けと順立て出庫までを高能力で完結するには、広い倉庫空間に各工程のシステムを配置するのとは桁違いの高度な制御技術を要する。この狭小スペースで複数の機器をシームレスに協調させる群制御技術は、機器台数の多いAGV(無人搬送車)やシャトルで構成されるモデルにも搭載され、さらに高い処理能力を実現する。

阿部氏は「本当に自動化・省人化が必要な人たちに、小空間からの自動化ソリューションを提供することにこだわったことが、ほかの自動倉庫と差別化できるシステム開発に結実した」と語る。

▲小スペース用でもニーズに合わせた多様なソリューションを用意(クリックで拡大)

中小・中堅企業こそ検討すべき、自動化・省人化による事業成長

中小・中堅企業にとっては、物流倉庫に自動倉庫を設置するなど、「高嶺の花」だと考えがちだ。しかし、今後ますます人材確保が難しくなり、人件費の高騰が懸念される局面では、ロジスティクスへの投資こそが、サステナブルな事業成長の要となるのは間違いない。NFCの処理能力を、人力だけで賄おうとすればどれだけの人件費がかかるのか、保管空間を土地代に換算すればどれだけの費用となるのか、さらに作業ミスを大幅に削減できることがどれだけ事業に貢献するのかを考えれば、ただ高嶺の花として片付けておくのはもったいない。

ロムスは、事業規模に応じた多様な自動化ソリューションを用意して「スモールスタート」も後押しする。特に中小規模で、商材の取り扱い物量では成長過程の3PF事業者には、前述のNFCではなく、仕分けに特化して5坪(17平方メートル)のスペースで時間当たり800ピースの高速仕分けを実現する「Nano-Sorter」(ナノ・ソーター)も用意する。

▲「Nano-Sorter」(バッファ付きモデル)のイメージ

すでに、非常に小規模な物流事業者が、現状の事業規模ではややオーバースペックとなるナノ・ソーターの導入を決めた事例もあるという。「このシステムによって戦い方を変え、ナノ・ソーターの能力に合った案件を獲得する成長のための投資決断は、まさに、私たちの見据える活用法だと感じました」(前野氏)

作業単価勝負になりがちな他事業者と差別化するため、荷主との交渉力を上げるための先行投資としての自動化ソリューション導入は、むしろ中小規模の物流事業者にこそ、今必要な取り組みとは言えないだろうか。自動化なんて大企業だけのものと決めつけず、「今後間違いなく自動化は誰もが通るべき道。必要な規模でのスモールスタートから、柔軟に簡単に機能拡張できるのも、私たちのソリューションの強み。まずは相談してほしい」(前野氏)

事業規模や物流特性に応じた多様なバリエーションのシステムを提案できるのが同社の強み。中小規模3PF向けのシステムがナノ・ソーターだとすれば、NFCはメーカーの自社物流構築などに最適なシステムに位置付けられ、商材の形態や波動などがある程度一定な事業であれば、保管能力と処理能力を高いレベルの両立で能力を発揮する。

▲中堅・中小企業へも自動化を普及へ(クリックで拡大)

一方、大手3PLや中堅3PFなど、繁閑に大きな差が出たり、荷主事情に合わせたシステム構築が必要となる事業者にはどのようなソリューションを提案するのか。

「波動に合わせたより柔軟なシステムとして、新たに着脱式ラックハンガークレーンと、ケース搬送AGVを組み合わせたモデルも用意しています」(阿部氏)

「Nano-Stream」(ナノ・ストリーム)と名付けられたこの新システムでは、100平方メートルから構築できるという利点はそのままに、物流業界特有の大きな波動に合わせた無駄のない柔軟な拡張が可能。まずは平常時に必要な保管量と処理能力を満たす最小ユニットからスモールスタートし、繁忙期にはAGV台数やクレーン数を追加するだけで処理能力を簡単に向上できる。AGVなどはレンタルでの運用にも対応しており、一時的な能力補完で繁閑差に対応するなど、効率的なシステム運用を実現する。

▲事業規模や物流波動に合わせた保管・処理能力の拡張が可能な「Nano-Stream」(クリックで拡大)

小スペースを生かした現場構築力は、急成長中のEC(電子商取引)事業者による倉庫自動化など、新規物流拠点の立ち上げニーズに応える。その一方で、大手物流事業者が既に導入した大規模マテハンの空きスペースなどで、余剰空間を有効活用して取り扱い物流量の拡大に対応する活用法も増加しているという。「小さなフルフィルメントセンター」を実現したことが、事業規模を問わずに新しいアイデアの創出や事業成長に貢献しているといえるだろう。

また、各ソリューションのピッキング工程を、ロボットアームによるピースピッキングシステムに置き換えて、さらなる省人化を進めることもできる。毎時最大1000ピックの処理能力、独自のAI(人工知能)ビジョンシステムは事前の商品登録不要で、多様な形の初見の商品も整列配置するロボット制御機能は、RCS時代から培った独自技術だ。


▲さらなる省人化を推進するオプションとして用意される、ロボットアームによるピースピッキングシステムやAIビジョンシステム

ただ、ロボットピッキング工程のみを効率化するのではなく、前後の搬送工程など必要とされる機能をワンストップで提供し全体最適化にこだわり、2019年の創業からたちまちここまでの多彩なシステム提案を可能にしたのは、「エンジニア中心の会社」として培われた技術力によるものだ。社内エンジニアと企業の成長の方向性を共有し、日本製・フル内製のシステムの提供にこだわることで、保守、メンテナンスの対応力、信頼性も担保する。倉庫自動化で先行する海外メーカーとは違う、日本ならではの課題への回答を提示できる強みも、それを形にできる技術力が基盤になっているのがわかる。

▲各自動倉庫ソリューションの特徴(クリックで拡大)

避けては通れない自動化、そのきっかけを作ることが未来への物流革新

導入までの早さも同社のソリューションの特長だ。入出庫レコードや在庫データなど倉庫業務の実情に関するデータを用意して、具体的な導入相談ができれば、3日程度で見積もりを用意することもあるといい、通常、見積もりだけでも数か月を要するのとは大きな差がある。大幅なカスタマイズがなければ発注から4か月程度での稼働も実現するなど、スピード感もまた大きな魅力となっている。既存のWMS(倉庫管理システム)などに連携する機能も準備し、機会損失することなくシームレスな事業成長を目指すことができるだろう。

さて、こうした卓越したスピード感を備えた技術力で目指すところはどこなのか。前野氏の目指すゴールは、自動倉庫の完全無人化ではないという。無人化はできないのではなく、「意味がない」が前野氏の回答だ。前野氏は自社ソリューションのライバルは、ほかの自動倉庫ではなく「競合は人。人の生産性、柔軟性の高さをロボットで部分的に乗り越える能力ではなく、人とロボットのハイブリッドで最適化した物流現場を調整する能力が重要」(前野氏)と語る。

人にはできない連続作業や夜間作業、スペースのない場所での作業などはロボットに任せ、人の能力を生かす現場を構築することで、人材不足・高齢化という避け難い日本経済の将来を変えるきっかけとなることこそが、同社の目指すところ。そのためにも、事業規模に関わらず、あらゆる物流関係者が現場自動化、「無人化ではなく省人化」を検討できる選択肢を用意して、業界の変革を促す。

「常にお客様やソリューションのことを考える」と語り、事業の成長に全力で取り組む前野氏と阿部氏。困難な課題こそイノベーションのテーマであるとして、熱意とスピード感を持って会社一丸での取り組みをけん引する2人が、「子どもたちに、どんな日本の未来を見せられるか、どんなよい世界にしてあげられるか、そのために今必要なことを考えている」と語るときには、それぞれ父親としての素顔を見せてくれたことで、あるべき未来像に向けてなぜこれほどまでに力強く突き進めるのか、その理由と原動力を確信できた。

ROMS「EC/物流向け倉庫自動化ソリューション」一覧