
記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「中央回廊カスピ海ルート実証、3社を選定」(7月2日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)
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話題三菱商事ロジスティクス(東京都千代田区)は、有事の事業継続計画(BCP)ルートとして中央回廊の検証を本格化させた。ロシア拠点の閉鎖やスエズ運河の通航困難を受け、シベリア鉄道に代わる第3のルート構築を目指す。いざという時のサプライチェーン断絶リスクを回避するため、同社は先行して実績とノウハウの蓄積を進めている。
同社は自動車関連を主力としつつ、工業財や食品、消費財を幅広く扱い、半導体関連や蓄電池など新分野の開拓も進めている。中国鉄道を利用した輸出入需要が増加しており、西欧へのルート構築を実現した顧客も存在するなど、中央回廊は新たな輸送の選択肢として実績を重ねつつある。

(出所:三菱商事ロジスティクス)
複数国をまたぐ輸送の円滑化には、通関や物流データの統一など各国の協調が欠かせない。同社は国土交通省が主導する官民コンソーシアムの勉強会にも参加し、情報共有を図っている。同省への出向経験がある事業デザイン部新市場チームリーダーの今泉早織氏は、同省による中央回廊に関するビジネスツアーに同行し、「事業者が現地を視察し実態を把握する意義は大きい」と語る。さらに、不確実な鉄道区間の一部をトラック輸送に切り替え、所要時間を安定させる手法も現地パートナー企業と検討を進めている。
一方、欧州向け輸送を安定的に運用するためには、なお解決すべき課題がある。大海正徳 執行役員 次世代事業創造共同カンパニー長は「所要日数が90日から170日と大きく変動する。定常的なサプライチェーンへの組み込みは難易度が高いものの、有事の際にはBCPルートとして中央回廊を利用せざるを得ない」と明かした。
トランジット貨物は中国鉄道におけるプライオリティが低く、日本などから中国を経由する積み替え貨物が天津や青島などの沿岸部で35日間滞留する事態も発生している。さらに、同鉄道はコンテナ内の積載バランス測定やバンニング(荷詰め)時の写真提出を厳格に要求しており、条件を満たさない場合には受け入れを拒否され、さらなる長期滞留につながるリスクがある。
中国とカザフスタンの国境ではレール幅が異なるため、貨物の積み替え作業が生じる。次世代事業創造カンパニー事業デザイン部新市場チームの有馬春花氏は「国境は情報が交錯する。逐一最新の情報を確保しないと顧客に説明できない」と実情を語った。また、ほとんどの船会社が同回廊でのサービスを提供していないため、同社は荷主所有のコンテナ(SOC)や完成車専用の鉄道ワゴンを活用している。
自然環境への対応も必要となる。カザフスタンのアクタウ港では、強風によりクレーンが20日間稼働停止した事例があるほか、カスピ海の水位低下も円滑な輸送を阻む要因となっている。
物流をさらに活性化するには、中央アジアでの経済活性化が鍵を握るが、インフラ投資には時間を要し、国際情勢次第では投資が鈍る可能性もある。今後の展望について、今泉氏が「ベースカーゴの数を増やして利用ルートを築いていくことが必要」と語る一方、大海氏も「中央アジア発の鉱物資源を中国経由や、カスピ海・トルコ経由で運ぶ新経路構築に注力していく」と方針を示した。
有事の際に主要航路が断たれれば、所要日数が変動しても中央回廊を利用せざるを得ない。同社は、輸送の安定化に向けた検証と改善を積み重ねながら、中央回廊を実効性のあるBCP代替ルートへと育てていく考えだ。

▲(左から)三菱商事ロジスティクス次世代事業創造カンパニー事業デザイン部新市場チームの有馬春花氏、同チームリーダーの今泉早織氏、執行役員次世代事業創造共同カンパニー長の大海正徳氏
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