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東京労働局、荷主への働きかけも検討

運送業79.8%が法令違反、労働時間関係が過半

2017年3月1日 (水)
運送業79.8%が法令違反、労働時間関係が過半
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話題東京労働局は1日、都内の道路貨物運送業168事業場に対して臨検監督を実施した結果、79.8%にあたる134事業場が法令に違反していたと発表した。違反事業場の半数を超える97事業場(57.7%)が労働時間に関する違反だった。

中には月間120時間を超える過重労働で運転者が脳疾患を発症し死亡、会社と社長を労働基準法違反で書類送検したケースもあった。

監督指導結果の内訳をみていく。

労基法違反があった134事業場のうち、最も多かった違反が労働時間に関係するもので97事業場(57.7%)だが、割増賃金にかかわるものも61事業場(36.6%)と、違反事業場の3分の1を超える。最低賃金や休日にかかわる違反は10%違反だった。

また、道路貨物運送事業者は労基法だけでなく「自動車運転者の労働時間等の改善基準」告示の順守も求められているが、168事業場中90事業場(53.8%)が告示に違反していた。違反事項は多い順に「最大拘束時間」が38.1%、「総拘束時間」36.9%、「休息期間」23.2%、「連続運転」11.9%――など。

運送業79.8%が法令違反、労働時間関係が過半

運送業では特に人手不足の深刻化の影響が大きく、これを反映して著しく高い違反率につながっているとみられる。同労働局は「道路貨物運送業に対しては東京労働局だけでなく、厚生労働省本省を含め、改善に向けてさまざまなアプローチを検討していく余地がある」として、監督官の増員や荷主に対する働きかけの強化などを検討する方針だ。

前年は135事業場を臨検し、116事業場で法令違反を確認、違反率は85.9%だった。79.8%という今回の臨検結果は前年に比べると一見、低下したように見えるが、東京労働局の見方は異なる。

「前年は今回より33事業場少ない。分母が増えれば率は下がる傾向にあり、改善したという認識はない。テレビや新聞でも連日、運送業の人手不足に関する課題が報じられており、監督官の数が十分でないというキャパシティーの問題もあるが、過労死や過労自殺など人の命にかかわることだけに、法令違反には毅然と対処していく」(東京労働局)

監督官側も人手不足の状態にあるなか、「前年より1事業場でも多く」と臨検先を33事業場上積みした結果、8割近い違反率となったわけだが、労働局側の感覚としては「臨検監督をいくら実施してもキリがないほど(違反事業場が)出てくる」というのが実態だろう。来年度以降はこうした「監督官不足」の改善に向け、採用を増やしていく考えだ。